地域雇用活性化のカギはコミュニティービジネス
上級研究員 楜沢 徹郎
2004年4月
要旨
関西圏で顕著な雇用力の減退
地域がヒトを雇う力が、いよいよ深刻なレベルにまで低下してきた。総務省の事業所・企業統計調査(2001年実施)によると、前回調査(1996年)と比較した事業所数が、全都道府県で減少している。京都府(8.7%減)、石川・岡山両県(7.1%減)、秋田県(6.7%減)などが、その減少幅において顕著である。従業者数をみても兵庫県(6.4%減)、広島・山口両県(6.2%減)など関西諸県を中心に大幅に減っている。
この結果、1999年~2001年における廃業率は年平均で4.5%に達し、同期間における開業率(3.1%)との落差は1.4ポイントに開いた。80年初頭に、開業率(5.9%)が廃業率(3.8%)を上回っていた構図が、この20年で逆転した格好だ。全国で雇用の受け皿が年々、縮小している。
失業率が高止まった状況がこれ以上続けば、地域の雇用不安はエスカレートし、社会にさまざまなマイナスをもたらすだろう。従来の公共事業中心の対策から一歩進んで、地域の雇用構造をどのように改善させていくか。自治体はその早急な対策に迫られている。
福祉、観光関連に中高年層の知恵と経験
開廃業率を業種別にみていくと、雇用対策の重要なヒントが隠されている。1999年~2001年を平均して開業率の高かった業種をみると、ソフトウエア産業(パッケージソフトウエアの開発)・移動無線センター(携帯電話の販売ショップ)などと並んで、高齢者福祉事業(デイサービス、老人ホームの運営)や生活関連雑サービス(運転代行、地域の観光案内、リサイクル事業)などが上位にきた。
福祉事業や観光関連事業は、中高年層の知恵と経験が生かせる分野であり、また地域社会に対する密着度、貢献度も高い。こうした背景を裏付けるように、創業実現率(創業を希望した者のうち実際に起業できた者の割合)は、60歳以上の男性で47.4%、50代男性で21.8%と、若年層の創業実現率を大きく上回っている。
定年退職した中高年層の再雇用事情をみると、これまでは、以前勤務していた企業の実務経験を生かしたい求職側と、彼らに紹介される仕事とのミスマッチが大きかった。ビル清掃や警備、宅配便のこん包・配達、車の運転などが、その主な紹介事案だった。こうした仕事の重要性を否定するものではないが、やりがいや創意工夫が生かせるという点でみると、地域づくりやまちづくりに貢献する福祉、観光事業はより魅力的である。
継続的な融資制度、若年層への目配りも将来課題
こうした動きに着目し、公的に支援する制度づくりに乗り出した自治体もある。創業にあたっての資金を助成するほか、事業者相互の情報提供を仲立ちし、また人材を紹介する。
現在、こうした動きが目立っているのは関西圏である。福祉、観光、リサイクル(環境関連)を、地域おこしに必須なサービス(コミュニティービジネス)と位置づけ、これを事業として軌道に乗せたうえで、継続的な雇用確保につなげる。必要に応じて、経理や財務の専門家を派遣し、財務諸表の作成などをアドバイスする。将来的に行政サービスを補完させる存在に育てようというねらいもある。
既に実施に移された例をみると、コミュニティービジネスの公募と、事業化奨励金の交付(大阪府、滋賀県)、商工会議所を通じた経営ノウハウの指南(兵庫県)などがある。事業化奨励金は100万円を上限に、福祉事業のほか地元商店街の再活性化事業、地域特産物の販売ネットワーク強化事業などに交付された。
現段階で事業化には至っていないものの、自治体には非常に広いジャンルにわたって、アイデアが寄せられている。例えば高齢者の福祉関連では、施設介護と在宅介護の中間形態として注目されている「高齢者共同生活住宅」の開設及び運営、独居高齢者向けに住宅や庭の清掃、お弁当の宅配、介護移動のための福祉タクシーなどがある。
観光関連では地域特産物の調理・実演販売が目立つが、伝統行事・祭事のサポート事業も増えている。環境関連では不用品リサイクルのほか、家庭廃油のリサイクル事業、更にはペット仲介事業を通じた野犬化の防止などもある。いずれも活動分野としては、ボランティアやNPO法人による手弁当的な活動と企業体との中間に位置し、地域の雇用形態に厚みをもたらすと期待されている。
こうした助成事業モデルには、多くの自治体関係者から問い合わせが増えている。こうしたコミュニティービジネスは関西だけでなく、全国的な動きにする必要がある。そのためのポイントは以下のように整理できるだろう。
1.資金面での助成を一時的なものとせず、継続的に融資する仕組みを整えること。これは現在議論が進んでいる公益法人制度の改革(公益性の判断、優遇税制のあり方)と一緒に議論することが必要である。
2.雇用不安は中高年層だけではなく、若年層においても深刻である。彼らは創業希望率が高い反面、主に経験不足により実現率が極端に低い。コミュニティービジネスはまず中高年層に恩恵をもたらすものだが、将来的には若年層もにらんだ2正面作戦を展開し、世代間の対立を緩和しなければならない。
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