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M&Aで存在感増す企業再生ファンド

主任研究員 米山 秀隆

2004年4月

要旨

M&Aで存在感増す企業再生ファンド
投資会社によるM&Aシェアが上昇

国内のM&A市場において、企業再生ファンドなど投資会社の存在感が増している。03年に行われたM&A(1,728件)のうち、投資会社によるM&Aは147件(前年比3.8倍、全体に占めるシェア8.5%)に達した(レコフ調べ)。最近になって、企業再生ファンドが経営不振企業に出資し、経営にも深く関与するなどして、経営再建を図る動きを活発化させているためである。これは、従来、メインバンクが果たしてきた経営不振企業の経営を立て直す機能を、企業再生ファンドが積極的に果たすようになったということを意味する。

ファンドによる経営立て直しの効果は、出資する企業の収益好転という形で明確に現われている。上場企業での例をあげると、フェニックス・キャピタル(国内独立系)が出資した3社(東急建設、市田、滝沢鉄工所)は、財務リストラなどが奏効し、経常損益が黒字に転換する見込みである(04年3月期)。またリップルウッド・ホールディングス(米系)が出資したコロムビアミュージックエンターテインメントは、経常利益が大幅に増加する見込みである(04年3月期)。むろん現時点では、成果がはっきりと現われていない例もあるが、成功事例が増えている点は注目に値する。

誰がラストリゾート機能を担うのか

バブル以前であれば、融資先企業が経営不振に陥った場合、メインバンクを努める銀行が金融支援、経営者の派遣を行うなどして、最終的に経営再建の責任を担った。つまり銀行は、メインバンクの責任として、経営再建を進めるためのマネーとマネジメントを提供した。しかし、バブル崩壊後の不良債権の増加で、銀行がそうした責任を担う体力を失い、また経営不振企業の急激な増加でそのすべてをカバーしきれなくなったことで、銀行のラストリゾート(救済)機能は大きく損なわれた。

銀行がラストリゾート機能を低下させる中で、誰がその役割をカバーするのかが、バブル崩壊後の企業の整理・再生に関わる重要な問題の一つであった。銀行が企業の経営再建を行うことができないのならば、銀行に代わって企業の経営再建を行うためのマネーとマネジメントを提供する主体が必要になるからである。しかし、最初に述べたように、最近では企業再生ファンドがその役割の一端を担うということがかなり明確になってきた。

企業再生ファンドが取る経営再建手法は、投資家から必要な資金を集めて経営不振企業に投資し、経営陣の刷新を行って経営再建を図るという、外科手術的な手法である。この分野は、当初は外資系ファンドの独壇場であったが、最近では日本資本のプレーヤーも急速に増えており、企業再生請負人と呼ばれる人材も国内で育ってきた。ようやく日本においても、この分野の層の厚みが増してきたといえる状況になっている。

銀行自身もこうした外部の企業再生プレーヤーの力を積極的に活用しつつある。メガバンクの多くは、企業再生会社を作って不良債権を移管し、そこに外部の企業再生プレーヤーの出資を仰ぐなどして連携を図ることで、企業の再生を行う体制を整備しつつある。地方銀行においても、少しずつではあるが、そうした体制を作る例も現われ始めている。

このように現在では、銀行が失った企業再生機能を補完する新たなプレーヤーが登場し、また銀行自身もそうしたプレーヤーと連携する動きをみせている。今後、不良債権処理が加速していけば、企業再生ファンドの存在感はますます増していくと考えられる。

官製ファンドの役割

一方、昨年は、民間のファンドのほか、産業再生機構による官製ファンドも始動した。しかし、産業再生機構が支援を決定した案件は三井鉱山など10数件に留まっており、今のところその活動は低調である。企業再生の機能については、本来民間が担うべき役割であり、官が関与するにしても、経営不振企業の一時的な受け皿機関としての機能に徹することで足りるという意見もある。この考え方では、産業再生機構は不要で整理回収機構による債権購入だけで十分ということになる。企業再生ファンドを初め、民間で企業再生を担う主体が多数現われるようになっている現在では、こうした意見には説得力がある。

しかし、再生機構になお存在意義があるとすれば、債権者が多い、あるいは政府系機関が絡むなど、メインバンクによる調整が難しい案件についてその調整役を担うことであろう。そうした役割を果たすためには、再生機構が損失負担について、現在よりリスクを取るなどして、銀行に再生機構の利用を促すことも必要になる。実際、そうした方向で、再生機構の機能が高められつつある。

民間のファンドが十分カバーできない案件を官製ファンドが扱い、両者の連携、棲み分けがうまく行われるようになれば、企業の再生がよりスムーズに行われるようになると考えられる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF M&Aで存在感増す企業再生ファンド [277 KB]