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バブル崩壊後のネット企業に関する誤解を解く

上級研究員 湯川 抗

2004年4月

要旨

1990年代後半に、今後のIT産業の担い手として様々なメディアで華々しく取り上げられた我が国のインターネット関連企業(以下ネット企業)は、2000年の日米ネットバブルの崩壊後、実態が理解されないまま悪いイメージだけが先行している。こうしたイメージは事実なのかを独自データを用いて検証した。

具体的には、ネット企業に関する一般的概念を整理し、再定義した上で、東京都区部に限定して企業を抽出した結果、2003年7月末現在で1,442社のネット企業が生存していることがわかった。以下では、この独自データベースに含まれる企業のうち、2000年~2002年の売上高と当期利益が判明した262社に関して行った分析に関して述べる。

高い成長性と向上する収益性

分析結果は、バブル崩壊後のネット企業に対する一般的な見方とは異なる。ネットバブルを経て生き残ってきたネット企業には依然高い成長性があり、収益性も改善しつつある。

分析対象とした全てのネット企業の売上高増減率を平均すると、2000年~2001年では267%、2001年~2002年では64%となり、増加率は減少しているものの、急速に売上高を伸ばしている。つまり、売上高の増加という観点からみた場合、ネット企業は非常に成長性の高い産業セクターである可能性を秘めている。

新興産業が生まれる時、その産業セクターに属する企業が速いスピードで成長するのは、当然であるが、2000年以降のネット企業の成長は極めて異例と考えられるほどの成長を遂げている。例えば、上場以降マイクロソフト社の売上高増加率が最高を記録したのは1986年~1987年の間で、当時の売上高増加率は75%である。この年はPCが本格的に普及し始めた年でもある。もちろん、このデータと単純に比較することはできないが、売上高増加率からみた2000年~2001年時点のネット企業の成長性はPC普及時のマイクロソフトをはるかにしのいでいたことになる。

また、収益性も改善しつつある。分析対象とした企業全体の赤字額は年々増加しているが、一方で収益性を改善する企業も増加している。2000年から2002年にかけて262社の年毎の当期利益を合算すると、2000年には388億円であった赤字が、2001年には617億円、2002年には996億円と、毎年赤字額が増大している。しかし、一方で、赤字企業数は2000年には101社、2001年には97社、2002年には79社と減少し続けている。つまり、全体の赤字額を増加させているのは一部の企業である。実際に、2000年には - 173%であった売上高当期利益率の平均は、2001年には - 49%、2002年には - 14%へと劇的に改善している。

「勝ち組」企業は鮮明に、多くは試行錯誤

2000年~2002年の売上高と当期利益が判明した262社に関して、2000年~2001年、及び2001年~2002年の売上高と当期利益の増減から、企業を「増収増益」、「増収減益」、「減収増益」、及び「減収減益」の4つのセクターに分類し、その変化を分析してみた。

この2時点をみると、ここでも、バブル崩壊後のネット企業への一般的な見方とは大きく異なり、実際には増収増益を達成した企業の割合は毎年4割程度で、全体のうち最大の割合を保っている。また、これらいわゆる「勝ち組」の企業は鮮明になりつつあるが、その他の企業は成長性と収益性の向上に向けて試行錯誤を繰り返していることが推測できる

2年連続で増収増益を達成している企業は55社であり、2001年に増収増益を達成した企業の約半数程度が次の年にも再び増収増益を遂げている。特にネット広告やコンテンツプロバイダー等、ネット上での情報仲介のみを行う、インターネットのピュアプレイヤーが年々収益を上げ始めている。

一方、2年連続で減収減益の企業は13社、2001年に減収減益であった企業の3割程度だが、同じく3割程度の14社が2002年には増収増益に転じている。また、2年間で4つのセクター間を移動する企業の割合は、移動しない企業の割合を大きく上回る。2年連続で同じセクターに留まった企業は100社、全体の38%で、このうち55社が先に述べた2年連続して増収増益の企業である。つまり、残りの62%の企業はこの2年間に他のセクターへ移動していることになる。

ネットバブル崩壊とネット企業

確かに、本稿で述べてきたのは現在生存している企業に関する分析であり、既に倒産や吸収合併された企業に関してのものではない。しかし、インターネットバブルを経て生き残ってきた企業には依然高い成長性があり、収益性も改善しつつあると考えられる。

この背景には、我が国においてはインターネットバブル崩壊後の2000年ですら、実際にはインターネットを有効活用したビジネスの基盤がやっと整い始めた時期であったことがある。総務省によれば、ほとんどの世帯にインターネットが普及したのは2002年以降である。また、ブロードバンドの普及により、個人が時間を気にせずインターネットブラウザを閲覧できるようになった、つまり、インターネットがオフラインを含めた様々な情報流通チャネルの選択肢の一つとなったのは2000年以降だったのである。

ネットバブル崩壊後のネット企業の悪いイメージは、売上の増加のないまま赤字額を毎年増大させている一部の企業、あるいは華々しく市場に登場した後、すぐに消滅してしまった企業等に対する反動が作り出したものである可能性が高い。こうしたイメージに臆することなく、ネット企業の一層の振興を図ることは、我が国IT産業だけでなく、IT活用による消費者や企業にとっての利便性向上といった面からも重要な課題である。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF バブル崩壊後のネット企業に関する誤解を解く [204 KB]