富士通総研

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第14回 富士通総研経済研究フォーラム『日本とアジア~改革・発展のダイナミズム』

概要

富士通総研経済研究所では、10月23日(木曜日)経団連会館において第14回フォーラム『日本とアジア~改革・発展のダイナミズム』を開催した。今回のフォーラムは、わが国の消費、財政に関する3テーマ、アジア・中国に関する4テーマについての7つの研究報告と、青山学院大学教授 小倉和夫氏による特別講演『「アジア」の過去、現在、未来』を実施した。

午前中のセッションで、長島は、不安と消費の関係について、消費者が抱く不安内容、及び各不安の相互関連を特定した上で、アンケート調査に基づく分析の結果を報告した。主な内容は、[1]家計の将来不安は「健康・年金・増税不安」と「賃金・雇用不安」の2グループに分かれること、[2]消費を抑制する不安は主に若年層の賃金・雇用系不安であり、選択的消費に対する影響が大きい - という分析結果に集約される。

続いて新堂は、所得をどの程度先まで見通しているのかというタイム・スパンが消費等に与える影響を分析し、次のように主張した。[1]タイム・スパンの違いが消費増減や政策評価、経済状況の変化への対応の違いにつながっている。[2]タイム・スパンの短い人が消費を増加させている。[3]タイム・スパンの決定には、年齢などの属性要因、意思決定スタイルなどの心理要因、どの情報に基づいているのかという情報要因が重要である。更にこうしたファクトファインディングをもとに減税政策についての提言を行った。

白川は、地方自治体の財政についての発表を行った。すなわち自治体財政は悪化の一途をたどっており、1992年度以降、基礎的収支も赤字を記録し、自治体財政が借金地獄に陥っているとの分析を示した。これを踏まえ、自治体における財政運営の健全性を取戻すためには、普通会計以外の公営企業会計・第三セクター・土地開発公社も含めた決算情報をまず分かりやすい形で提示していく必要があり、近い将来の問題として、地方債償還問題、団塊世代の退職金支払い問題に備える必要があると提言した。

午後のセッションで柯は、中国の外国為替政策のあり方について次のような発表を行った。現在、中国経済の高成長と対外輸出の拡大を背景に、人民元を中国経済の国際競争力の向上に伴い切り上げるべきという議論が浮上し、白熱化している。現状では人民元は実質的に米ドルに固定されているが、長期的にみれば、ドル・ペッグ制は中国の実体経済に大きな負担をもたらすことになる。したがって固定相場制を解除し、柔軟な為替相場制に移行する必要があるが、その前に金融制度改革などの準備作業が実施されなければならないことを強調した。

武石は、アジアにおける環境産業をテーマに、日本における循環型社会形成のためには、アジア全体としての循環型社会形成・リサイクルの実施が必要であり、そのためには、まず日本の制度・社会を循環型社会形成に適合できるように正す必要があると強調した。また、アジア諸国のうち、所得の多少により、市場を通じた環境産業の発展を目指すべき諸国と、援助を通じた環境産業の育成への取り組みが必要となっている諸国とが存在することを示した。

金は、巨大な潜在市場である中国環境ビジネスの市場性や収益性を分析するとともに、日本の優れた環境技術を中国の環境ビジネス市場で生かす方策について報告した。すなわち中国の環境対策の現状、問題点や政策対応から、顕在化されつつある中国の環境ビジネスの市場性は高いと主張した。また現地調査や企業ヒアリングの結果に基づき、日系企業による対中環境ビジネスの問題点を探り出し、中国市場に合う、かつ日系企業の優位性を発揮できる対中環境ビジネス策を提示した。

濱崎は、アジア、特に世界の工場と呼ばれる中国において、我が国はアジア諸国と共同で温室効果ガス削減プロジェクト(クリーン開発メカニズム : CDM)を実施することを提唱した。この提言の背景として、中国でCDMを実施すれば、世界で最もエネルギー効率の高い我が国にとって、京都議定書に定められた温室効果ガス削減目標達成する際の経済・社会的影響を最小化できるのみならず、今後拡大が期待できるアジアの温暖化関連ビジネスへの先行参入が可能となることを明らかにした。

最後に、特別講演において、青山学院大学教授の小倉和夫氏は、アジアの過去、現在、未来という時間の視点を軸としながら、欧州、米国との関係、またその影響についても視野におさめた講演を行った。そのなかでアジア諸国間の関係の動向と今後の方向性、経済発展のもとでのアジアの責任について指摘した(詳細は後述)。

プログラム

9時 受付開始
9時30分~9時40分 開会挨拶
会長 鳴戸 道郎
 
午前のセッション
 
9時40分~10時20分 「不安心理と消費行動」
主任研究員 長島 直樹
10時20分~11時 「所得見直しのタイムスパンと消費」
上級研究員 新堂 精士
11時~11時40分 「地方自治体の財政状況と改革の鍵」
客員研究員 白川 一郎
11時40分~13時 昼休み
 
午後のセッション
 
13時~13時40分 「中国の外国為替政策のあり方」
主任研究員 柯 隆
13時40分~14時20分 「アジアにおける環境産業発展と制度的課題」
上席主任研究員 武石 礼司
14時20分~14時35分 休 憩
14時35分~15時15分 「中国環境ビジネスの市場性と日系企業の対応」
主任研究員 金 堅敏
15時15分~15時55分 「アジアにおけるクリーン開発メカニズム(CDM)の推進」
上級研究員 濱崎 博
15時55分~16時55分 特別講演「アジアの連帯と責任」
青山学院大学 教授 小倉 和夫
16時55分~17時 閉会挨拶
社長 長谷川 展久

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 第14回 富士通総研経済研究フォーラム [247 KB]