米国におけるSSUTAの制度体系と今後の動き
研究員 吉田 倫子
2003年10月
要旨
議論の背景と制度体系
米国でSSUTA(州売上税簡素化協定 : Streamlined Sales and Use Tax Agreement)が新たな動きをみせている。この背景には、もともと2000年3月に実験的にスタートしたSSTP(Streamlined Sales and Use Tax Project)があり、そこで税制の簡素化の議論が行われてきたことがある。当初は4州のみで徴税テストが行われていたが、徐々に加盟州を増やしてきた。SSUTAは、協定に加盟した州において売上税制を統一化し、協定加盟州間の納税手続きを簡素化するものであり、技術の活用による州政府側・納税者双方の負担軽減、また取引を捕捉することで税収増が見込めると言われている。全ての売り手とあらゆるタイプの商取引(従来の商取引と電子商取引)について、各州税法における定義の統一、電子登録システムの統一等10項目が掲げられており、SSUTAの簡素化システムの下では、事業者は[1]各州が出資しているCAS(Certificated Automated System)、[2]税額計算のみのCSP(Certificated Service Provider)、[3]独自の徴税ソフト(加盟州のうちの5州以上との取引があり、年間の総売上高が5億ドル以上の大企業が対象)の利用という3つの納税方法を選択できる。現在売上税を課している州の協定への加盟により、この制度が全米の人口の20%を獲得するという条件を満たし、2004年から施行されることになった。
米国ではそれぞれ州によって税法が異なり、州と地方政府を合わせて7,500以上の課税管轄が存在しそれぞれ個別に課税している。現在、47州のうち売上税と使用税率が同率である州が12州、使用税が同じで売上税がばらついている州が6州、売上税・使用税ともに幅広い税率をとっている州が29州あり、それらの税率は0.875%から11%へと広がっている(25州では特定の財やサービスについて更に別な税率で課税している)。また、例えば、1つの郵便番号で複数の租税管轄に分かれ、そこでの税率の幅は4.3%から8%にも広がっている地区も存在する。事業者はそれぞれに納税する必要があり、それが事業者の負担にもなると言われている。ただし、課税拠点を持たない電子商取引業者にとっては、課税の義務は無い。電子商取引の拡大とともに売上税損失額は年々大きくなり、税の枯渇が問題視されてきていた。
SSUTAの下では、このような複雑性は簡素化される。各州、地方政府はそれぞれ1つの税率で、特定の物品に対してのみもう1つの税率が認められることになる。
施行における問題点
SSUTAの施行には、4つの課題がある。1つ目は、協定の施行に対して果たして各州からどの程度の合意が得られるかという点である。2つ目は、各州がSSUTAに書かれている項目を受け入れる法を作りそれに従うか、ということである。SSUTAの法律自体は、各州が、全ての売り手と全ての商取引形態についてコンプライアンスの負担を削減するために協定に入ることを念頭においてはいるが、法案自体は各州にいかなる税法の改正をも要求してはいない。3つ目は、各州が売上税・使用税に関する税法を改正し、統一化することである。複雑な税法になっている州では、協定に調和するよう、現行法の大幅な改正が要求されている。また、その中で、各地方政府がどのような段階を経て統一された一律の税率を導入していくかを明確にする必要がある。
今後の方向
SSUTAはまだ拘束力を持つものではないが、将来的には全ての州が登録して、税の簡素化をはかることが目論まれている。ところが、遠隔地事業者やオンライン上の売り手は、任意の参画であるため、協定によってえられるメリットとデメリットを考慮する必要がある。例えば、ネット上で販売を行っている事業者は、登録することによって、営業税や特別事業税が課せられる可能性もある。事業者が登録しなくなってしまうことを避けるため、協定それ自体は、州が売り手の登録を、ネクサス(課税拠点)を持っているかどうかの判断材料として利用することを禁止している。イリノイ州など、納税する代わりに、過去の取引に遡って徴税しないことを州の恩赦とみなしている州もある。しかし、オンライン上の売り手にとっては、徴税することによって、ネット販売の製品価格の割安感が消えるというマーケティング上の問題を抱えており、参画を懸念している。加盟すれば徴税義務が「新たな負担」となるため、従来どおり州単位でネクサスを基準に徴税を行うという現行法を支持する声も高い。一方、州の枯渇する財政下では、やむを得ない措置として、今後徴税し始める企業も多く出てくると言われている。また、ボランタリーなシステム下では、いつまでも登録せずに非課税をとっている事業者に対して批判がおこり「仲間はずれ」扱いも起こりかねないため、登録する企業は徐々に増加してくると考えられる。更に、電子商取引業者のみならず、メールオーダーやカタログ販売企業も消費者から徴税しなければならなくなるといわれている。現在米国では、判例(Quill Corp.v.North Dakota, 504U.S.298(1992))により、メールオーダーやカタログ販売では徴税されないことになっているが、それでも今後は徴税する見通しであると言われている。
米国では、2003年11月に現在のITFA(Internet Tax Freedom Act)のモラトリアム期間が終了する予定になっている。拠点をもたない電子商取引業者が増える一方、州財政の枯渇が叫ばれ、それら企業からいかに徴税するかが問題とされてきた。「サーバをネクサスとみなすかどうか」という議論がなされたが、SSUTAによる課税はこのような議論とは異なるものである。
州政府にとっては、SSUTAにより遠隔地事業者からの納税を制度化しそれがうまく実施されれば、州売上税収は確実に上昇するメリットがある。また、各州は売り手をコンプライアンス遵守させる権利を得ることができる。
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