新エネ導入促進の課題
- RPS制度への対処
上席主任研究員 武石 礼司
2003年10月
要旨
太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマス等の新エネルギー導入量の飛躍的な増大が、目指されている。ただし、市場メカニズムを利用しつつ新エネ導入量を増やす目的で、2003年4月より施行されたRPS制度(「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」)は、この法律の制定時に議論があったとおり、目指す目的を達成するために必要な効果を十分発揮できていない。主たる理由は、RPS法が、2010年までの購入義務量しか掲げていないためである。少なくとも2020年まで、できれば2030年、2050年という長期にわたる国の施策として、長期導入目標を設定して新エネの導入を進める必要がある。
RPS制度のねらい
2003年4月から導入されたRPS(Renewables Portfolio Standard)制度は、新エネにより発電された電気の購入義務を民間発電事業者に課すとともに、政府指定機関がグリーン電力証書を発行して、義務量分の取引を取引市場で行えるようにする制度である。2010年には、総電力供給量の1%にあたる115億kWhを、新エネルギーで賄うことを目標としている。政府が、現在持つ新エネ導入の目標値は、2001年に総合資源エネルギー調査会が作成した長期エネルギー需給見通しである。1999年度に、原油換算700万キロリットルであった新エネルギーを、2010年度に原油換算2,000万キロリットルまで約3倍増大させる目標が出されている。一次エネルギー供給全体に占める新エネ比率は、1999年度の1.1%から2010年度では3%まで増大させる目標である。政府は、RPS制度導入を梃子に、この目標を達成する計画である。
世界の新エネ導入促進策
世界的に見ても、英国、イタリア、オーストラリア、及び米国のテキサス州で、日本のRPS制度と類似の制度が既に導入されている。世界でも同様の制度が存在していることから、日本でも、新エネルギーの導入に市場メカニズムを機能させることを狙って同制度が導入された。ただし、これらの国は、日本とは条件が異なっており、固定価格での新エネの発電の買取りが実施されるというかたちで新エネ導入がある程度進んだ後に、このRPS類似の制度が導入されて効果をあげている。現在でも、ドイツ、スペイン、デンマークは、新エネルギーからの発電に対する固定買取り制度を維持しており、高い価格での買取りが保証されている。この結果、近年欧州における風力発電が急増している。風力発電設備の85%が欧州に設置されており、ドイツ、スペイン、デンマークの風力メーカーが世界市場の8割強を占めており、新規産業の育成にも成功している。
RPS制度の問題点
RPS制度が導入された2003年4月以降、風力発電の一部のように採算性が高い事業に対しては、優遇措置を見直す動きが電力会社で生じている。従来、風力発電を含む新エネ発電からの電力会社の買取り価格は、電力会社各社が設置したグリーン電力基金制度からの補助金が含まれて、1キロワット時あたり9円から11円という価格での買取りが実現していた。ところが、RPS制度が導入されたことで、大規模風力発電事業者からの買電価格が、「電気」の部分と「環境価値としての証書」の部分とに分離されることになった。「電気」の部分に対しては、北海道電力のように、1キロワット時あたり3円の購入価格が電力会社から変更されて提示された。事業性が高いと見なされた風力発電に対しては、RPS制度の下で、「環境価値としての証書」が販売できるはずであり、その価値を考えると、採算性の高い風力発電では利益が出すぎる可能性があると判断されたためである。いまだ実質的な証書取引は実施されていないRPS制度において、利益が出すぎる可能性があるとの判断のみで、買取り価格の変更が実施されてしまっている。
電力会社による買取り価格引き下げの風力発電事業者に対する影響は、極めて大きかった。2003年4月以降、多くの風力発電事業者は、当面RPS制度の動向を見守り、様子見をするしかないと表明した。
今後の課題
新エネを導入するに当っては、日本国内の各地域の特性に合った設置が必要となる。風力発電に関して見れば、一定の強い風が年間を通じて吹く適地は、北海道と東北に偏在しており、その他、九州でも、離島を始めとして適地が存在している。このような分散型で発電することを得意とする新エネ事業を、一律に採算性のみで切るとともに、RPS制度による証書の取引のみに期待することでは、新エネの導入目標の達成に大きなブレーキがかかってしまう。風力事業に参入を希望する企業は多くあり、2002年から2003年にかけて、東北電力が募集した10万kWの風力発電購入に対しては、応募が37万kWあり、北海道電力が募集した15万kWに対しては、80万kWの応募があった。
政府は、2005年頃には、環境税あるいは炭素税を導入することを検討している。その際には、RPS制度の大幅な見直しが行われることが予測される。ただし、2005年までの期間を無駄にすることはできない。風力発電のように、事業の採算性が高い事業がせっかく存在し、その立ち上りさえ助成すれば、15年程度の長期間にわたりプロジェクトとして採算がとれる新エネ事業を開始でき、産業としての風力発電事業の育成を目指すことができるにもかかわらず、長期目標がないために、事業開始が遅れる結果を招いている。新エネ導入の素地は、既に存在しており、これを育てていくためには、少なくとも2020年までの新エネ導入の政策的支援制度を確立し、更に、2030年、あるいは2050年という長期の目標を持ち、将来に向けた新エネの見取り図を描く必要がある。
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