政府債務累増の帰結
- 歴史的考察
主任研究員 米山 秀隆
2003年7月
目次
はじめに
I.政府債務の累増はいかにして解消されたか
1.ナポレオン戦争後のイギリス
2.第一次大戦後のアメリカ
3.第一次大戦後のドイツ
4.第二次大戦後のアメリカ
5.第二次大戦後の日本
6.80年代後半のアメリカ
7.90年代初めのイタリア
8.90年代初めのスウェーデン
II.8つのケースの比較検討
1.政府債務累増に何が歯止めをかけたか
2.政府債務の累増要因 : 戦費か大きな政府か
3.政府債務比率の低下要因 : 国債償還か成長か物価上昇か
4.まとめ
III.政府の予算制約式に最終的な責任を持つのは誰か
1.政府の予算制約式
2.政府債務はどのように解消されるか
3.経済政策の信認問題 : 通貨制度と財政規律
IV.日本への示唆
1.現在の日本の歴史的位置づけ
2.政府債務のソフトランディングに向けて
要旨
1.政府債務比率(長期債務残高 / GDP)が140%に達するなど、財政赤字の累増に歯止めがかからない。この先どのような形で政府債務が解消されるのかについては、明確な展望を描けない状況にある。本稿においては、過去の先進諸国の歴史において政府債務が累増したケースで、それが最終的にどのような形で解消されたかを検証した。
2.過去のケースでは、政府債務の累増に歯止めがかかるきっかけとしては、通貨暴落など通貨の信認低下が起こった場合が多い。こうしたケースでは市場の圧力を契機に危機感が高まり、改革が一気に進められた場合が多い。これに対し、例外的ではあるが、外圧ではなく、内圧によって改革を漸進的に進めたケースもある。他方、財政当局の力だけで財政再建が困難と思われるケースでは、中央銀行と協調し、国債市場を買い支えることによって、ソフトランディングさせた場合がある。ただし、それがうまくいったケースでも通貨の信認は維持された。通貨の信認が完全に失われたケースでは、ハイパーインフレが起こった。
3.政府債務の解消問題は、理論的には、政府の予算制約式を誰が満たすように行動するのかという問題に帰着する。すなわち財政当局が責任を持つのか、中央銀行が責任を持つのかという問題である。この点は過去のケースにおいても、そのいずれかあるいは両者の協調によって、政府債務が解消されたことが確認された。
4.現在の日本については、当面は、通貨暴落や国債市場暴落など、市場の圧力が働く可能性は低く、また政治状況をみても、内圧が高まって財政改革が進む可能性も乏しい。この先、市場の暴力的な反応を避け、通貨の信認を損なうことなく、政府債務をソフトランディングさせるためには、第一義的には、国民に危機感を共有させることと、政府が確実に実行可能な財政再建と成長の道筋を示すことが必要である。その過程では、中央銀行のサポートも必要になる。
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