急成長する中国の半導体市場と企業の動向
主任研究員 金 堅敏
2003年4月
要旨
高度経済成長を続けている中国で半導体需要が増加している。しかし、自給率は15%前後で、輸入に頼るしかない。供給不足のため半導体の輸入が急増している。中国市場を目指して海外半導体メーカーの対中進出も加速されている。他方、世界的半導体不況等から計画事業からの撤退あるいは事業の延期を余儀なくされている企業も出てきている。また、稼動している半導体メーカーもビジネスモデル等で異なる展開を見せている。
急成長する中国の半導体市場
中国の統計によると、2002年上半期、中国半導体市場の販売量は、数量で137億個(伸び率24.8%)、金額で747億元(同26.4%)となった。その後も安定した成長を見せており、2002年の半導体市場規模は、数量で300億個(前年比成長率22.5%)、金額で1,600億元(約194億ドル、成長率27%)となることが確実視されている。これは、推定される世界市場(約1,407億ドル)の14%、アジア・パシフィック市場の40%を占める。日米欧における半導体市場の不況と中国市場の高成長は対照的である。中国電子情報産業発展研究院(CCID)の試算では、中国の半導体市場はこれからも急成長(年平均伸び率25%)を続け、2005年には数量で500億個、金額で3,000億元(約365億ドル)と見込まれ、2010年には世界第2位の半導体市場になると予測されている。
WTO加盟に伴うゼロ関税の実施や国内半導体需要の拡大により、半導体製品輸入も急増している。2002年上期の輸入量は147億個(伸び率22.1%)、輸入額102億ドル(伸び率29.4%)となり、半導体製品の貿易赤字は82.6億ドル、前年比25%に拡大した。
中国半導体市場の特徴(2001年数量ベース)を産業分野、ユーザー性質からみると、最大の需要は加工貿易分野であり26%を占める。急成長産業である家電情報製品分野では、コンシューマ・エレクトロニクス20%、PC関連17%、通信関連13%といずれも高いシェアを占めている。その他、ICカード1%、専用設備2%、測定機器2%、ほか19%となっている。技術構成から見ると、まだローテクの製品需要が大部分を占めている。その内訳は、0.6μm以上が67%、0.6μ~0.5μmが17%、0.35μm~0.18μmが13%、0.18μmが以下3%となっている。
国内半導体生産状況
2002年1~9月の国内生産は、42億個(伸び率36.4%)、売上高96.4億元(伸び率43.7%)と大幅増加を示している。特に、モトローラ(中国)有限公司、上海華虹NEC電子有限公司、上海先進半導体製造有限公司、江蘇長電科技株式会社(地場企業)、深賽意法微電子有限公司等が高い伸び率をみせている。
図表1が示すように、中国全体として、2002年9月現在、半導体ウエハー生産ラインは、合計30ラインあり、現在建設中あるいは計画中の生産ラインは、合計18ラインある。その生産ライン数は、12″が1ライン、8″が4~5ライン、6″が3~4ラインという政府の『5ヵ年計画(01年~05年)』を大きく超えている。その他に、半導体設計会社も、2001年末の98社(設計人員4,000人)から、02年10月末の389社(同15,000人)にまで急増している。また、パッケージ企業も200社から250社近くにまで拡大している。
現在、中国の半導体生産は、世界生産額の約1.6%を占めるに過ぎなく、自給率も15%前後である。上述の生産ライン等が全部稼動しても、中国の半導体需要の30%しか満たさない計算となる。他のIT分野と同じように、市場として急浮上すると共に、生産拠点としての魅力を増す中国を活用するために、日米欧及び台湾の主要半導体メーカーの大部分が、対中生産シフトを加速している。例えば、AMD、IBM、インテル、東芝、シンガポールのChartered、台湾のTSMC、UMC等のグローバル半導体大手企業が、対中投資を加速している。また、NEC等、現地企業へ追加投資をする企業もある。中国地場企業あるいは海外帰国の留学生も、投資額が少なくて済む設計やパッケージ分野から半導体産業への参入を強めている。例えば、海外帰国留学生が設立した「中芯微系統公司」は、中国企業としてはじめて組込型CPU(0.25μm、32ビット)の開発に成功している。
半導体チップの生産を立ち上げるには、大型投資が必要であるため、日本や台湾の中古設備が中国で活用されている。因みに、日本、台湾、韓国から数多くの技術者が、中国の半導体生産現場で活躍している。
対中半導体ビジネスの収益モデルが必要
他方、世界的な半導体不況が続いている環境の中で、米系Bvideborah社とJoshua社の2社は、計画中の「北京華夏」プロジェクトから撤退することとした。上海宏力も工場建設資金調達が困難なため、建設計画が延期され、天津モトローラは8″生産ラインの生産計画を遅らせた。また、世界的半導体不況や技術の遅れ、規模経済性の問題、利害の相反などで、計画どおりの収益性が実現できない外資系メーカーもある。例えば、上海華虹NECは中国政府からの手厚い優遇を受けながら、2001年に7億元の赤字を出した。生産開始から5年目になる今年に入り、やっと投資を回収して利益が見込めるようになった。
最近、後発の中芯国際(SMIC)が半導体市場で活発な経営活動を展開している。2001年に生産を開始した当社は、政府の政策に頼らず、中国国内の設計会社や世界半導体大手(米TI、独インフォネオン、日本の東芝、シンガポールのChartered等)とのアライアンス関係を強化し、8″のファンドリーとして脚光を浴びている。2003年末には収支バランスが取れるという。
日系企業は、中国市場が自社にとって果敢に挑戦してリスクを取るべき市場となるかどうか、適切な市場判断をもとに、新たな収益モデルを確立することが求められている。
全文はPDFファイルをご参照ください。
PDF 急成長する中国の半導体市場と企業の動向 [279 KB]
