富士通総研

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. Economic Review >
  4. Vol.7 No.2 2003年4月 >
  5. エネルギー税制度改革の課題

エネルギー税制度改革の課題

主任研究員 武石 礼司

2003年4月

要旨

エネルギー税制度の見直しを目指した議論が行われている。現行の日本のエネルギー税制度は、環境配慮の視点を欠いており、環境配慮の点で先行する欧州諸国の制度と比べると時代遅れとなっている感が強い。欧州の主要国は、全て「税制度のグリーン化」と呼ばれる環境負荷に対応した税制度への移行を終えている。日本でも自動車に対しては、燃費の違いにより自動車税と取得税に差異を設ける制度が、税制度のグリーン化の一環として2000年度から導入されている。

日本のエネルギー税制度において問題なのは、幾度もの改正を経る中で制度自体に歪みが生じており、産業発展を阻害する面が強くなっている点である。できるだけ産業発展を阻害しない制度としての新たなエネルギー税制である用途課税(エネルギーの使途に応じた課税)の徹底が必要となっている。

環境税としてのエネルギー税

日本は国内で消費されるエネルギーの約8割を輸入に依存している。原子力を国産エネルギーとしてカウントした場合に、この8割という数値が算出できるが、仮に、原子力によるエネルギー供給分を国産エネルギーに含めないと、93%ものエネルギー供給を国外に依存していることになる。このように輸入され消費されるエネルギー量は膨大であり、これらのエネルギー輸入量に対して、石油には「石油税」が、また電力には「電源開発促進税」が課税されている。関税率は引下げられてきており、原油関税で進行中であるように、将来的には原則無税とされる方向にある。

エネルギー税導入の方向性

政府は、二酸化炭素(CO2)の排出量を基準として課税する「環境税としてのエネルギー税」の導入を検討している。早ければ平成15年度にも導入が計画されている新たなエネルギー税制度では、現行の石油に課されている「石油税」及び電力に課されている「電源開発促進税」の見直しが予定されている。大きな変更点としては、二酸化炭素排出量が多い石炭に対する新たな課税が計画されている。ただし、石炭に対する課税の動きに対しては、日本経団連をはじめとして、産業界からは、競争力を削ぐことになるとの反発が生じている。また、天然ガスにも課税が行われる予定となっている。二酸化炭素の排出量は、同カロリー当りでみて、石炭を5とすると、石油が4、天然ガスが3の割合となっており、この二酸化炭素の排出量の比率で課税されるのが原則である。

エネルギー税の使途

新たに得られた税収は、地球温暖化対策費用として支出することが計画されている。京都議定書を批准したことで、日本は1990年比で6%のCO2排出量削減が国家目標となった(2008年から2012年平均で)。エネルギー消費量は、この削減目標年である1990年比で、運輸部門と民生・業務部門において、既にどちらも2割前後も増加してしまっている。環境負荷を減らすとの観点から歳出の対象を絞って重点的な資金配分を行っていかないと、こうした運輸部門と民生・業務部門において生じているエネルギー消費の増大を抑制することはできない。

エネルギー税導入にあたっての課題

日本のエネルギー税制度の改正を行う際には、欧州の環境負荷低減を目指す制度との整合性を考えておくべきである。欧州諸国でも、産業競争力の確保には各国とも細心の注意が払われている。例えば石炭に課税するときには、発電用燃料としては課税するが、鉄鋼業等の原料用には課税しないといった産業競争力に十分配慮した制度を採用している。税制度の国際的な不一致が、またたく間に日本の製造業の競争力を削ぐ可能性があり、日本でもエネルギー税制度の改正にあたっては十分な注意が必要である。エネルギーの最適な利用を促進するという意味で注目されるのが、エネルギーの水平的利用技術の拡大である。これは、発電から多様な製造業まで全産業を含んだ形で、最適な燃料の導入から始まって、製造業プロセスの統合化により、最も効率的で、かつ、環境負荷も少ないプラントの配置を考えていこうとの考え方である。事実、こうしたプロセスの統合化が世界中で目指されており、例えば、石油精製プラントと石油化学プラントの融合化が進んでいる。両プラント間で精製した留分のやり取りを行うことで、採算性を大幅に向上できる可能性が存在している。欧米あるいは近年の中国での石化産業の動向を見ても、石油精製と石油化学の基礎素材部門とは融合した形態をとることが普通となってきている。

ところが、現行の日本の税制度には大きな問題が存在している。石油に関しては現在、石油税が輸入する段階でかけられているために、石化産業と石油精製産業における自由な製品のやり取りができなくなっている。このために、石化会社と石油精製会社の融合、合体も難しくなっている。輸入の段階である入り口で税金をかける政策は、産業の自由な発展を根本的に阻害している。税金は出口で課すのが正しく、どのような用途に用いたかに従って課される「用途課税」が正しい。石化原料として利用された石油製品は課税を免除すべきであり、ただし、石化原料として輸入された石油製品であっても自動車用として利用されればその利用という段階に対して税金を課すことが合理的である。免税する場合にも、「用途免税」とすべきである。事実、世界的に見ても、「用途課税」がいずれの国においても原則となっている。エネルギーの効率的利用に結びつき、かつ省エネ活動を活発化させ、しかも日本の石化産業を始めとした素材産業の競争力を維持し、これら企業を国内に存続させることが可能となる税制度を導入すべきである。そのためには、税制度のゆがみをもたらしている「入り口課税」を改め、現行の石油税制度を改めるべきで、新たなエネルギー税制度導入に当っては、「用途課税」の導入に留意する必要がある。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF エネルギー税制度改革の課題 [276 KB]