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特殊法人改革にはゼロベースの政策評価を

主任研究員 小野 達也

2003年4月

要旨

整理合理化計画にそって進む特殊法人の「改革」

特殊法人等の改革が、2001年に成立した「特殊法人等改革基本法」を受けて閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」に沿って進められている。05年度末までの5年間が集中改革期間とされ、先行7法人を始め、すべての特殊法人等(77の特殊法人と86の認可法人)が何らかの形で俎上に載せられる。改革の基本原則は小泉首相の持論に従い廃止、民営化及び独立行政法人化であり、特殊法人改革は小泉内閣による「聖域なき構造改革」の象徴となった観がある。

現行の改革の功罪

1960年代まで政府主導型の発展戦略の手足としてインフラ整備や技術開発に成果を挙げた特殊法人も、今日の経済においては非効率かつ不透明な事業運営、組織の自己増殖と露骨な天下りなど深刻な問題が浮き彫りになるにいたった。しかし、第二次臨調に始まり橋本内閣までの数次の内閣が取り組んだ改革では、統合などによって法人数こそ減少したものの、個別事業の見直しにより要らない事業は廃止ないしは民間に移行するという行政機構内部での自己点検では不十分な成果しか得られなかった。

それに対し、小泉内閣が政治のリーダーシップを発揮した現在の改革では、一般会計・特別会計から毎年5兆円にも及ぶ繰入額の削減による否応のない効率化を迫っていること、財政投融資機関である特殊法人では財投機関債の発行により財務内容に関する市場のチェックが可能となったこと、独立行政法人・特殊法人等の情報公開法が施行されたこと、国民・マスコミの関心を喚起して特殊法人の無責任・非効率な経営実態が白日の下に晒されたことなど成果は多い。

しかし、それらの功績を認めた上でなお現行の改革には限界があり、場合によっては本質的な改革を更に遠ざけてしまう危険を孕んでいることを認識せねばならない。

そもそも特殊法人とは、公共の利益・国家政策遂行を目的に特別な設置法によって設立されるもので、箸の上げ下ろしまで所管の官庁に縛られており、経営責任は限定的である。国民への行政サービスという観点からは、省庁の政策に触れずに根本的解決はありえない。そして特殊法人を中心に、行政委託型の社団法人・財団法人等の公益法人、更にその子会社の株式会社まで既得権益が組織化されたファミリー企業群の問題は、特殊法人だけの改革では解決できない。

特殊法人の業務や組織体は多種多様である。民業の補完として政策的コストが掛かったり、独立採算を求めることができない、財政資金の繰り入れに依存しないなど様々な組織があり、繰入金の削減や廃止・民営化など特殊法人を一括して議論することには無理がある。また、特殊法人等は163もあり、道路関係4法人のように徹底的に議論できない場合、「廃止」「独法化」という名のもとで別の受け皿法人に受け継がれるといった看板の架け替えが繰り返される危険もある。実際、2003年度予算案の特殊法人向け補助金は、独法の運営交付金を加えると今年度当初比1.3%増である。また、整理合理化計画では多くの法人について外部評価、第三者評価を実施するという文言が並んでいるが、既存の審議会等がこの役割を果たせるかは疑問である。

本当の改革のためにゼロベースの政策評価を

特殊法人をめぐる状況を抜本的に改革するためには、組織の見直しや財政赤字の問題だけでなく、行政が特殊法人等を通じて提供してきた機能自体を論じなければならない。これはまさに政策評価制度の役割であり、政策を様々な角度から掘り下げて評価し、改革後も政策のパフォーマンスをチェックする必要がある。

これまで何を目的にいくらの費用を投じて、どのような成果が得られたか、これからはどうなのか、国民への行政サービスという観点から傘下の特殊法人等まで含めて評価する。現状の追認がないよう、既存の組織や事業の効率を問うのでなく、ゼロベースで法人の社会的必要性を証明できなければ廃止する。民間で担うのに適さないという公共性は組織の必然性を意味しない。民間でできない業務を現在の社会経済状況において行政が担う必要性があるか、ゼロベースの吟味が必要である。

例えば、国土交通省の長期計画と施行命令に従って採算が見込めない高速道路の建設を続けてきた道路関係4公団の場合、民営化推進委の最終報告が棚上げされることなく「基本的に尊重」(昨年末閣議)されたとしても、高速を含む無駄な道路整備が別の枠組みで行われる可能性が残る。税金で建設する直轄高速道路など他の道路と切り離した改革は部分的解決にすぎない。そもそも始めに予算の総額ありき、国会の議決を経ずに長期計画が決定される公共事業の進め方自体を議論しなければならない。

これらはすべて国土交通省など所管府省の政策評価が取り扱うべきことである。現状では第三者評価の体制は十分でないが、評価に関する情報を当初より徹底的に公開して誰でも検証できるようにすれば、役所のお手盛り評価を避けることができる。このような評価は大作業になるが、集中改革期間はまだ3年残っている。特殊法人等の改革は大きな一歩を踏み出したが、まだ始まりに過ぎない。小泉政権が義務付けることができれば、政策評価の遂行により特殊法人等の改革をやり遂げることができる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 特殊法人改革にはゼロベースの政策評価を [294 KB]