CPI下落に影響の大きい中国現法・生産委託先からの電機製品の輸入
要旨
CPI下落への寄与が大きい電機5品目
わが国では近年デフレーション(デフレ)が続き、1990年代以降続いている経済の低迷からの脱出が困難な状況にあると広く認識されている。デフレとは、政府見解では「一般価格が持続的に下落する状態」である。これは言い換えれば、市場で取引されるすべての財・サービスを1つのバスケットに入れ取引したときに、その価格の下落が継続するということである。
デフレの指標である一般価格の実際の観測値としては、GDPデフレーターもしくは消費者物価指数(CPI)が用いられる場合が多い。このうちCPIは、全国の消費者が購入する財・サービスの価格の平均的な時系列の変動を表すために、596品目の価格をウエイト付けし集計したものである。したがってCPIは、一般価格が本来表すすべての財・サービスの価格を集約したものではなく、これに近似するように消費者の購入を代表する財・サービスの価格にウエイトを付け算出したものである。
CPIの変動が、それを構成する596品目のうちどの価格変動に大きく影響されているのかをみるには、寄与率を算出する必要がある。CPIの暦年ベースでのピークは98年であり、その後下落が続き2001年は98年比1.7%低下している。ただし98年には生鮮野菜の価格が不作から高騰しており、生鮮野菜を除いた569品目では同1.3%の低下である。生鮮野菜を除いたCPI下落への品目別の寄与率をみると、パソコン(ノート型)、パソコン(デスクトップ型)、電機冷蔵庫、テレビ、ルームエアコンの電気機械5品目の価格下落で28.4%と、全体の下落の約3割が説明される。
中国からの大量輸入の影響の大きい電機5品目の価格下落
これらの電機5品目における価格下落は、中国から低価格の輸入品が大量流入している影響が大きいとみられる。中国からの輸入は2001年において、98年比の台数ベースで電機冷蔵庫は7.0倍、テレビは2.1倍、ルームエアコンも6.7倍増加している。パソコンは通関統計ではデータが利用できず、電子計算機に相当する統計しか利用できない。しかし98~2001年において電子計算機の国内出荷台数のうちパソコンは96.7~98.0%を占めるため、電子計算機の輸入台数で代替すると88.2倍にも達している。
しかし中国からの輸入だけではなく、他の外国からの輸入も増大した可能性がある。これを検証するため、これらの品目の国内販売台数に対する中国からの輸入台数の比率について98年と2001年を比較してみると、各々電機冷蔵庫は0.8%から6.0%に、テレビは20.8%から46.1%に、ルームエアコンは2.1%から11.8%に増加し、電子計算機(データ制約から国内販売台数を国内生産台数+輸入台数 - 輸出台数で代用)は0.1%から3.8%といずれも顕著に増加している。
またこれらの品目の中国からの輸入単価(CIF建て)は、98年から2001年の国内生産者販売単価比で、6.5~68.8%の水準にあり、国内での消費者の購入価格を引き下げるのに十分な価格差がある。たしかにCPI計算に採用されている品目は、対象となる銘柄や仕様が指定されたものが多く、電機5品目でもパソコン(ノート型)、パソコン(デスクトップ型)を除き仕様が指定されているため、中国からの低価格の輸入品の流入が直接的にCPIを引き下げる可能性は低い。しかし仕様が異なっていても、同じ目的に使用される代替財であるため、低価格の中国からの輸入品の大量流入は、CPIの調査対象となっている仕様の製品価格も引き下げる可能性が高い。
これを統計的に確認するため、98~2001年の電機5品目のCPIにおける価格指数を被説明変数とし、通関統計の電機5品目に相当する品目の中国からの輸入価額の指数を説明変数とし回帰分析を行った。分析結果は、5品目の価格指数の全変動の76.1%が中国からの輸入価額指数の動きにより説明され、中国からの輸入品の大量流入がこれら品目におけるCPIの価格指数の主な低下要因となっている可能性が大きいことが示された(回帰における自由度から推計の係数の安定性が低いとみられるため、CPIに採用されている電機5品目を含む教養娯楽用耐久財、家事用耐久財、冷暖房用器具27品目のうち、通関統計で対応するデータが利用できる16品目に対象を広げ同様な回帰を行っても、価格指数の全変動の47.9%が輸入価額指数の動きにより説明される)。
電機5品目の輸入増加の主因は日本企業の逆輸入、生産委託
しかし日本生命が2002年2月に行ったアンケート調査(回答企業数3,361社)によると、これら5品目の生産などを行う電気機械産業(同183社)では、自社の製品・サービスの販売単価が下落傾向にある主な原因として、国内他社との競合という回答が最も多く49.1%である。また2番目に多い回答は需要の落ち込みの30.2%であり、安価な外国製品の流入との回答は16.0%に過ぎない。
中国からの電機5品目の輸入品の大量流入がCPIの下落に大きな影響を与えていると考えられることと、このようなアンケート結果との相違の理由の1つとして、国内生産品と中国などからの輸入品との仕様が異なることが指摘できる。すなわち国内生産品は高級品が中心で海外生産品は低・中級品中心であるため、代替財として価格が下落することはあっても、直接的に競合する製品との認識が低いものと考えられる。また他の理由として、中国などからの安価な輸入品の大量流入が、日本企業の現地法人からの逆輸入もしくは生産委託によるOEM供給によるところが大きいことがある。現地法人からの電気機械の輸入額は、99年度(統計上の最新年度)の98年度対比でみて中国、アセアン4(マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン)、NEIS計で12.4%、中国だけでみると45.2%増加している。
中国などへの生産移転は、生産コスト格差が短期間には縮小困難であることから今後も継続するとみられる。これは中国沿海部でのコストが上昇しても内陸部への移転が進展し、更に中国のコストアップや為替調整があっても、ベトナム、インドなど他のアジア諸国への移転が考えられるからである。更に中国の技術水準の向上、裾野産業の発達、経済成長に伴う中国国内需要の高度化を考えると、今後移転は拡大、高度化しよう。したがって電機5品目にみられるCPIへの下落圧力も短期には解消しないとみられ、CPI下落を論じる際にはこうした状況の認識が不可欠である。
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