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中東産油国経済の現状と展望

主任研究員 武石 礼司

2002年10月

要旨

産油国の財政上の余裕度が次第に少なくなっている点に注目する必要がある。原油価格はOPECを需給の調整役として、急騰と暴落を回避してきた。最近、ロシアの石油生産量が急回復してきている。英国と類似の傾向を持ち、国が生産枠を設定して守らせることが不可能な企業群から構成されるロシアが、今後数年以内に世界最大の石油輸出国となると予測される。OPEC諸国は、またしても価格安定化を目指すうえでの難題を抱えることになる。

原油価格の動向と中東産油国

2001年9月11日に生じた米国での同時多発テロのため、航空機の運航休止が相次ぎ、石油製品需要が急減した。原油価格もこの需要の落ち込みを反映して下落し、2001年10月以降、ドバイ原油はOPEC諸国の財政の危機ラインとされる1バレル当たり18ドルを下回って、2001年12月半ばには16ドル台まで下落した。ただし、その後は、アフガンでの戦争が早期に終了するとの目処が立ったことと米国の景気が底堅いことが判明、イスラエル紛争の緊迫、イラクの石油輸出停止の動き等もあって、原油価格は上昇基調に入った。石油の不需要期である2002年の春先以降は、価格は小幅な上下動を繰り返している状態にある。

1999年の後半から2000年にかけての時期に、原油スポット価格は湾岸戦争時以来という高値が続いた。米国の指標原油であるWTI(ウェストテキサス・インターミディエート)で1バレル当たり35ドル台、ドバイ原油で32ドル台をつけた。ただし、この時期に生じた高価格は長く維持できるレベルではなく、その後価格下落が生じた。

2000年における原油価格の高値維持により、OPEC各国は輸出収入を急拡大させることができ、財政赤字も大幅縮小ないしは黒字転換を遂げることができた。ところが2001年後半からの価格下落のために、再び財政赤字に転落し、サウジアラビアも、2000年に達成した財政黒字から一転して2001年には財政赤字に転落した。このように石油価格の動向次第で変動する産油国の財政は、赤字基調が一般的で、油価高騰時のみ黒字化している。

需給調整役としての中東産油国

石油価格は、乱高下を繰り返すものだと理解した方が良いような状態が続いてきた。主要な石油産出国で構成するOPECは、石油生産枠を設定し、石油需要期(北半球の冬季及び6月以降の米国のドライブシーズン入り)と不需要期(3月から5月と9月以降の秋口)に対応し、世界景気の動向にも配慮して石油需給の調整役を果たしてきた。

したがって、世界の石油需給のファンダメンタルズは、OPECの生産枠の設定により形成されていると言える。

例えば2001年におけるOPECの減産幅は大きかった。まず、2001年1月の総会で150万バレル/日の減産を決定し、続いて3月の総会で100万バレル/日の減産を決定した。それでも、石油価格は下落を続けた。需給の変動の状況を的確に見通して市場にサインを送ることができる場合には、OPECの減産は価格動向に影響を与えることができるが、一度弾みがついた価格下落の動向を変えることは困難であった。石油輸出収入に依存しているOPEC諸国は足元を見られて、徹底した減産枠の設定が難しい。

その後、2001年の夏において、石油需要が逆転して増大するのではとの見方が出された。ただし、7月のOPEC総会での増産決定は見送られた。そうしている間に、7月末に原油価格は一転して急落した。OPECは9月1日からの100万バレル/日の減産を決定した。

ところが9月11日に米国で同時多発テロが発生し、この事件を契機として世界の石油需要はいっそう落ち込んだ。OPECは、2001年11月に開催した総会で、2002年1月からの150万バレル/日の減産を決議した。ただし、非OPECの有力産油国であるロシア、ノルウェー等から協調減産へ向けた賛同を得ることができず、非OPECの有力産油国が合計で50万バレル/日の減産を実施するときにはOPECも減産する、との条件付きの減産表明となった。需要減退が大幅であるときには、供給量の決定において大きな役割を果たしているロシア、ノルウェー、オマーン、メキシコといった諸国の協力と了解なしには、OPECのみの減産宣言が行われても、市場は反応しない場合があることがわかる。

産油国の資金需要

OPEC以外の石油生産者(国及び民間企業)は、国営石油企業であっても、また民間石油企業であっても、できる限り早く投資資金を回収することを目指している。運転資金も回収できないといった石油価格の大暴落が生じない限り、油田の生産能力の限界まで、生産・出荷等の設備が許す限りの量をフル生産し続ける。OPECの生産制限が存在せず、しかもOPECがシェア競争を開始した場合には、生産コストが圧倒的に小さく、潜在的な生産能力が大きい中東OPECの石油生産コストである2~4ドル/バレル程度を目指して、おそらく5ドル程度まで急落すると考えられている。ただし、そうした事態が出現すると、OPEC各国の経済は明らかに破綻せざるを得ない。

産油国の歳入は、7割から9割が石油と石油関連製品の輸出外貨によって得られており、一方歳出は、どの産油国においても公務員給与と国防費で過半を占めている。

しかも、現在産油国は、第1次及び第2次オイルショックが生じた70年代に急増した資金で建設を行った発電・造水等のインフラ施設が更新期に入っており、インフラの建て直しのために多額の資金が必要となっている。更に追い討ちをかけるように、若年層の急増による人口増大に対処するために、新規のインフラ建設も早急に進める必要がある。インフラ施設の新設に対処するためには、国外で運用されている資金を呼び戻す必要が生じている。ただし、欧米で運用するよりも確実にリターンが大きいことが明らかでないと、産油国においても資金を還流させて、国内開発に使うことは困難となっているのが現状である。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 中東産油国経済の現状と展望 [134 KB]