第11回フォーラム「ビジネスを創生する」
概要
富士通総研経済研究所では、4月23日(火曜日)経団連会館において第11回フォーラム「ビジネスを創生する」を開催した。今回のフォーラムは、第1部「地域産業を立ち上げる」、第2部「環境産業へ取り組む」、そして第3部「中国市場を把握する」の3部構成による研究報告と、国際日本文化研究センター教授・猪木武徳氏による「これからの人材育成と日本経済」と題する特別講演を実施した。聴衆は359名で、今回のテーマに対する関心の高さを窺わせるものであった。
第1部において、松山は、「医療・教育」というテーマのもと、地方自立を達成するためには、地方自治体が担ってきた各事業についてより効率的な経営体制を探求することが求められるとし、地方自治体の予算に占める割合がもっとも大きい医療介護と教育が、その有望分野であると主張した。更に医療介護と教育の地域産業モデルの基本的枠組みとして、非営利ホールディングカンパニーの創設、民間資本活用を用いた地域社会のガバナンス、非課税事業債の創設の3つを提言した。
武石は、「エネルギー」分野に関し、日本の各地方におけるエネルギー供給の自立性が高まることは、財政基盤強化の効果があり、環境負荷の低減にも役立つことを示した。今後飛躍的に価格競争力を持つと考えられる分散型電源の導入を積極的に進めるとともに、資源リサイクルをも取り込み、各地域に存在する自然資源の活用を目指すエネルギー環境システムの導入促進が必要であると提言し、具体的にはバイオマストイレが有望であると主張した。
田邉は、「バイオマス・ミニミル」について、[1]日本は豊かな降水量を背景に草木(バイオマス)資源が育ち、そこからエネルギーが採れること、[2]豊かなスクラップ鉄資源があり、価格1 / 2化の高級鋼板にリサイクル可能な次世代ミニミル事業も有望となることを強調した。こうした国内資源を活用する技術は、CO2排出量を大幅に削減し、かつ収集コストを抑える意味で、地域分散型の産業立地が有利であり、これらが、地域産業の立ち上げ、京都議定書合意の達成、産業競争力強化、エネルギー自給率引上げという日本の課題を克服する一石四鳥の政策になると主張した。
第2部において、梶山は、「林業」は、投資の段階である造林・育林と、資金回収の段階である素材生産に数十年の隔たりがあるため、零細林家が、資金負担ばかり嵩む造林・育林を行うことはもともと不可能であり、これがわが国森林崩壊の最大の理由であると指摘した。新たに「地域森林管理協議会」を設立し、所有者の意思に関係なく施業を行う体制を構築すべきであると提言、これは地域森林管理の担い手となるもので、中央集権による林業政策からの抜本的な転換をも意味するものであると主張した。
京都議定書への対応が、議論から実行の段階に移行したことをふまえ、生田・濱は、CO2削減に関する「イノベーション」に着目した。わが国が、欧米と比べて新規産業の創出や市場整備の対応が遅れており、イノベーション促進による国際競争力の強化という観点から、効果的な地球温暖化対策が行われてきたとは言い難い。温暖化対策をビジネスチャンスとして認識し、民間主導での早期取組みが行われるべきであり、政府は早急に民間活力を支援するためのインセンティブ供与とインフラ整備に取り組むべきであると提言した。
第3部において、朱は、「中台経済一体化」というテーマのもと、中国と台湾は、政治関係が依然として緊張しているが、経済面では貿易と投資の発展で相互依存関係と分業関係が確立したとし、中国経済の持続的な成長や、中台双方のWTO加盟により、経済関係は新たな局面を迎えるとともに、政治関係にも緩和の動きが見られつつあるとしている。今後、中台経済関係は更に緊密化し、将来は一体化の方向に発展していくと想定され、こうした中台経済一体化の動きはアジア経済にも大きな影響を及ぼすと強調した。
「中国地場企業」の台頭がクローズ・アップされている中で、金は、現地ヒアリング調査や統計データ・関連資料の分析を通じて、中国市場で地場企業が相対的に優位を持っているのは、[1]強い販売力、[2]人的資源管理、[3]収益性・キャッシュー・フロー重視の経営姿勢であることを明らかにした。また、中国地場企業の弱みとして、[1]技術蓄積の浅さ、[2]生産現場の技術・品質管理に弱い体質、[3]ブランド力の未確立を指摘し、日系企業は地場企業の活力を取り入れ、技術力の優位性を存分発揮できる対中ビジネスモデルを構築すべきであると主張した。
また、特別講演において猪木武徳教授は、「これからの人材育成と日本経済」と題し、歴史や民主制・市場経済の課題にも言及しつつ、なぜ人材育成に着目しなければならないのかにつき自説を展開した。また、日・独・米の制度比較を通じて、現在の日本の人材育成は、外国と競争する際に、圧倒的な脆弱性を抱えていると指摘し、中長期的な視点から、教育制度作りとその中身である人材育成の両方が大切であることを説いた。さらに、公共の利益を考えるグループや専門的職業人の育成、説得力や論争力などを養うことが、これからの国際競争の場では極めて重要であると提言した。
プログラム
| 9時 |
受付開始 |
| 9時30分~9時40分 |
開会挨拶 |
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理事長 福井 俊彦 |
| 午前のセッション |
第一部「地域産業を立上げる |
| 9時40分~10時20分 |
「医療・教育」 |
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主席研究員 松山 幸弘 |
| 10時20分~11時 |
「エネルギー」 |
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主席研究員 武石 礼司 |
| 11時~11時40分 |
「バイオマス・ミニミル」 |
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主席研究員 田邉 敏憲 |
| 11時40分~13時 |
昼休み |
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| 午後のセッション |
第二部「環境産業へ取組む」 |
| 13時~13時40分 |
「林業」 |
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主任研究員 梶山 恵司 |
| 13時40分~14時20分 |
「イノベーション」 |
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上級研究員 生田 孝史 / 上級研究員 濱﨑 博 |
| 14時20分~14時35分 |
休憩 |
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第三部「中国市場を把握する」 |
| 14時35分~15時15分 |
「中台経済一体化」 |
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主任研究員 朱 炎 |
| 15時15分~15時55分 |
「中国地場企業」 |
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主任研究員 金 堅敏 |
| 15時55分~16時55分 |
特別講演 「これからの人材育成と日本経済」 |
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国際日本文化研究センター教授 猪木 武徳 |
| 16時55分~17時 |
閉会挨拶 |
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社長 佐藤 至弘 |