富士通総研

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. Economic Review >
  4. Vol.6 No.3 2002年7月 >
  5. 対中投資における留意点 - 現地化とガバナンスの徹底による経営の必要性

対中投資における留意点
- 現地化とガバナンスの徹底による経営の必要性

主任研究員 柯 隆

2002年7月

要旨

苦労する外資の対中投資

中国の経済自由化は、マクロ的には内外の企業にとり大きなチャンスとなる一方、ミクロ的には、個別の企業にとり必ずしも経営が好転することを意味しない。現に中国経済の規模拡大とは裏腹に、多くの外資系企業の経営は必ずしも芳しくない。日系企業以外に目を向けても、たとえば、ソウル大学の調査によると韓国企業で成功しているのはわずか2割に止まるといわれる。

対中投資で苦労している外資企業に対しては種々のアドバイスがなされている。たとえば、[1]政府高官との人脈作り、[2]地場の有力企業との連携強化、[3]優秀な中国人を起用する現地化戦略、などが有効な戦略であるといわれている。しかし、政府高官とのパイプだけで、ビジネス契約をバックアップする制度的枠組みがなければ、当人の引退や失脚などによりビジネスパイプは失われる。このように、対中ビジネスの将来を、ある幹部個人に託すことはリスクとして高すぎる。

地場有力企業との連携は、理論的には現地のマーケティング情報の非対称性を穴埋めすることができ、提携相手の販売ネットワークにアクセスすることで、市場参入の機会コストを下げることができると考えられる。しかし、この世の中にfree lunchはない。実際、有力国有企業との提携で、合弁企業が国有企業の「余剰人員収容所」と化す例は少なくない。

最も幻想に過ぎないのは、優秀な中国人を起用するだけで経営がうまく行くと考えるいわゆる「現地化戦略」である。いかなる人間も自らの利益を最大化するように行動するため、インセンティブの付与とともにチェック体制が強化されなければ、経営の好転はありえない。

問われる日本企業の対中投資戦略

これまでの日本企業の対中投資をみれば、経営者の「望郷」投資が少なくない。戦時中に中国と何らかの形で繋がりをもつ経営者達は、中国に恩返しするため投資を行ってきた。この類の投資は投資収益(ROE)の最大化を目指すものというよりも、自己実現的なものが多い。また、政府役人の巧い話に乗せられ投資を決断してしまう例がある。たとえば、食事をした時に「何でも任せてください」といった類の話に乗せられ、工場を建ててしまうといったレベルの投資である。三番目に、日本国内のビジネスを中国に拡張し、将来的に中国市場を狙う先行投資がある。四番目は、日本国内でのビジネスが困難となり生き残りを図るために中国に進出する投資がある。

一番目と二番目の投資は、その目的が収益の最大化ではないため失敗例が多い。三番と四番については、個別企業の経営戦略により明暗が分かれる。しかし、これらの企業の具体的な形態は、更に二つに大別され、中国を輸出の生産拠点として位置付ける企業と内販を狙う企業とに分類される。日本企業に限っていえば、これまでのところ、中国国内市場を狙う企業は少なく、多くの企業は輸出を狙う。

中国投資の「鉄則7箇条」

いずれにせよ、WTO加盟を実現した中国に、これから更に多くの日本企業は投資を行うであろう。その際、中国での経営戦略が問われる。主要都市の外国直接投資の状況を下図に示した。ここでは、韓国ソウル大学鄭永禄教授が提起された、中国投資の「鉄則7箇条」を紹介しておきたい。[1]投資地域ですべてが決まる、[2]合弁の際相手先の規模に騙されるな、[3]人脈やコネを過信するな、[4]重要な書類は必ず政府機関の印を、[5]原材料の供給ルートを確保せよ、[6]労働力が安いと思い込むな、[7]中国役人の接待に騙されるな。

この中国投資「鉄則7箇条」は、日本企業にとっても大いに参考になるはずである。理論的に、投資はリスクとコストの減少関数であるといわれるが、日本企業は極端にリスクを嫌う。忘れてはならないのは、ハイリスク・ハイリターンの投資法則である。むろん、中国に投資する際、経営の現地化を実現することは望ましいが、それだけでは十分ではない。現地の子会社をガバナンスする制度的枠組みを企業内において構築することが極めて大切である。

図 主要都市の外国直接投資(2000年、契約ベース、億ドル)

資料 : 蘇州シンガポール工業園区

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 対中投資における留意点  - 現地化とガバナンスの徹底による経営の必要性 [119 KB]