政策評価法の施行にあたって
主任研究員 小野 達也
2002年7月
要旨
政策評価法4月に施行
昨年6月に成立した「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(「政策評価法」)が4月に施行され、各府省における政策評価がいよいよ本格化することとなった。政策評価法は、国の行政機関が自らの行う政策を評価し、その結果を反映させるとともに公表することを義務付けるものである。その目的は、効果的・効率的な行政の推進、及び国民への説明責任(アカウンタビリティ)遂行の2点に集約される。
ここで「政策」とは、一定の行政目的を実現するための一連の行為を広く含むものであり、通常の用語で言う(狭義)政策、施策、事務事業の体系であるとされる。すなわち国の府省が横断的に取り組む行政評価が「政策評価」と呼ばれる。
国レベルの行政活動の評価は、昨年1月の中央省庁再編に伴って「政策評価」として各府省に義務付けられ、総務省行政評価局がとりまとめた「政策評価に関する標準的ガイドライン」が同月に決定、多くの府省で具体的な取り組みが開始された。そして昨年6月成立の政策評価法に基づいて、昨年末の閣議で「政策評価に関する基本方針」が決定された。これを受けて各府省は法及び基本方針に基づき、基本計画、実施計画を策定して、評価に取り組むこととなった。なお、省庁再編前に既に実績のあった旧建設省など公共事業を所管する省庁における事業の事前評価、再評価制度などは、政策評価という枠組みの中で改めて位置付けられている。
地方自治体では既に、1995年に着手した三重県を始め、年々多くの団体が行政評価に取り組みつつある。また欧米先進諸国では、1980年代以降の様々な国・地方の行政改革において行政評価制度が大きな役割を果たしてきている。
評価の実行に必要な条件
一般に、行政評価を本格的に実行するための条件は、[1]評価ツールの整備、[2]評価を活用する戦略、[3]現場における実践、という3点にわけて考えることができる。
まず、評価ツールとしては、政府の基本方針でも強調されている定量的な評価を行うための指標やモデルを整えるなど、評価の客観性を担保するための仕掛けが重要である。ITの活用も当然要請される。そして行政評価の導入にあたっては、段階的に評価結果を行政運営に活用していく戦略が必要である。戦略の不在は、評価のための評価に陥る危険を意味する。最後に行政機関の現場においては、職員の意識改革という形で行政評価の意義が浸透する必要があり、評価結果の質を向上させるためには評価能力の獲得・向上が求められる。
アカウンタビリティとは
行政のアカウンタビリティの概念は近年拡張され、今日では行政機関が税金の使途に限らず自己の遂行する政策・施策・事業についてその目的、方法とその成果を広く国民・市民に明らかにし、その理解を求める責任と解される。この責任を透明性の高い行政評価によって遂行することが、政府の政策評価導入の目的のひとつである。
したがって、単に評価結果など評価に関する情報を公開・公表するだけでは十分ではない。アカウンタビリティとは、行政活動がいかなる成果を挙げたかを納税者に説明する責任、国民・市民が理解・納得できるように説明する責任を含む。この点で、日本の国・地方の行政機関の姿勢は十分であるとは言い難い。各種の情報・データを単に公表・公開する段階に留まっている場合が多く、アカウンタブルであるとは何か、今一度問い直すことが必要である。
評価に基づくマネジメント・サイクルの実現が行政の根本的改革をもたらす
政策評価が本来の機能を果たすためには、基本方針にも述べているとおり、評価がPlan-Do-Seeの政策マネジメント・サイクルに組み込まれなければならない。ただし、これまでの行政で弱かったSeeのステップに政策評価制度を導入したからといって、マネジメント・サイクルが自動的に完成するわけではない。評価を科学的に行えば必ず、これまでのDo(政策の実施)、そしてPlan(政策の立案)の問題が明らかになるはずであり、それらの改善を実行して初めて本来のサイクルが回るのである。
政策評価の導入が一国の公的部門の改革にまで繋がるか否かは、このマネジメント・サイクルが個々の部局や、ひとつの省庁(傘下の特殊法人等を含む)、国の行政機関全体、国と地方自治体を合わせた行政全体、政治を含めた公的部門全体といった各レベルでどこまで実現するかにかかっている。その過程では、欧米諸国の改革においてもみられるように、省庁間の縦割り是正、国と地方の権限・税財源移譲、政官関係の見直し等が求められるであろう。
近年論議を呼んでいる多くの問題、例えば高速道路を始めとする公共事業の是非や、政府系金融機関など特殊法人の役割、医療保険・年金の改革、外務省の関わる大小の問題などどれをとっても、政策評価が本格的に機能していれば今日の有り様は大きく違っていたはずである。今後、政策評価制度が担うべきものは大きい。
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