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京都議定書における吸収源と我が国の課題

研究員補 安高 啓朗/上級研究員 濱崎 博

2002年4月

要旨

気候変動枠組条約第7回締約国会議(COP7)において我が国の森林管理による温室効果ガスの吸収活動(いわゆる吸収源)の上限値が、1,300万炭素トン(1990年排出量比3.9%)に決定した。森林管理の定義は2003年開催予定の京都議定書発効後の議定書締約国会議(COP / moP)で決定すると見られるが、森林管理の認定基準によっては、この吸収源による1,300万炭素トンの削減は困難なものとなる。また、現在の我が国における温室効果ガスの削減策は、吸収源による3.9%削減を織り込み済みであるため、今後の森林管理の基準によっては、我が国削減目標(1990年排出量比6%)の達成も不可能となる。更に、我が国企業による植林活動が集中している豪州は京都議定書への批准に難色を示しているため、国外での植林活動によるクレジットも期待できず、ロシアなど他国での森林プロジェクトの拡大が必要である。

地球温暖化問題と吸収源

COP3からCOP7に至る国際交渉のプロセスの中で、大きな論点の1つとして継続的に議論されたのが森林・農業部門における温室効果ガス吸収活動(いわゆる吸収源)の取り扱いである。科学的に不確実性が高いとされてきた「植林」や「森林管理」等の人為的に吸収源を拡大する活動が、京都議定書において、数値目標達成のために利用できることが認められた背景には、政治的な意味合いが強い。吸収源により“削減”される炭素量が大きく、慎重な取り扱いが求められることから、この吸収源をめぐる議論は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などによる科学アセスメントと政治交渉とのキャッチボールによって進められてきた。

京都議定書における吸収源は3条3項及び4項に規定されている。3条3項は、1990年以降の土地利用変化及び林業活動(新規植林、再植林、森林減少)による温室効果ガスの吸収・排出量について定めており、その吸収量は第1約束期間中の炭素蓄積変化量で算出される。一方、3条4項においては、1990年以降の追加的人為的活動(森林管理、農地管理、放牧地管理、植生回復の中から締約国が選択)による吸収・排出量の計上方法が定められており、吸収量は、森林管理については第1約束期間中、それ以外の活動に関しては1990年と約束期間中のネット - ネット方式で算出される。議定書締約国は、以上の吸収源による二酸化炭素の吸収量を国の削減目標の達成に用いることができる。

COP7後の吸収源問題と我が国の温室効果ガス削減策

COP7における運用ルールの合意(マラケシュ合意)によって、日本は削減目標6%分にカウントできる吸収源として上限値1,300万炭素トン(基準年1990年の排出量の3.9%)を確保した。こうした国際交渉の進展を踏まえ、中央環境審議会の地球環境部会国内制度小委員会でも吸収源分の3.9%削減を前提とした国内対策が検討されている。

表  3条3項・4項吸収源の定義一覧
活動名 定義
3条3項
植林(新規) 少なくとも50年間は森林状態になかった土地を、直接人為的に森林に転換する活動。
例 :  農地等→植林活動等→森林
再植林 一旦は森林地帯であった土地を再度直接人為的に森林に転換する活動。第1約束期間(2008~2012年)に関しては、1989 年12月31日の時点で森林状態でなかったことが条件となる。(IPCC方式)
例 :  森林→他の土地利用→植林活動等
森林減少 森林を非森林に転換する直接人為的活動。
例 :  森林→伐採、開発等→森林でない状態
3条4項
森林管理 環境( 生物多様性を含む)、経済、社会的機能を発揮させることができるように森林を持続的に管理する取り組み。
農地管理 農作物耕地や農作物の休耕地を管理する取り組み。
牧草地管理 植物や家畜生産の量と種類を管理する取り組み。
植生回復 0.05ヘクタール以上の植生回復を行うことによって炭素蓄積量を増加させる人為的な活動。
ただし、上記の植林、再植林の定義に当てはまらないもののみに限定される。

我が国においては国土に森林の占める土地面積が大きいことから、3条4項に規定されている森林管理が吸収活動の中心となる。この吸収源による温室効果ガスの削減をどれだけ上限値に近づけられるかは、今後の森林整備・保全策とその推進軸である国内林業をいかに活性化させるか、更には荒廃が進んだといわれる「山の手入れ」をいかに進めるかにかかっていると言える。このような状況を受け、対策を検討してきた環境省・林野庁の吸収源合同対策検討委員会の検討結果が、先般国内制度小委員会に報告された。同報告書によれば2001年7月に改正された森林・林業基本法(旧林業基本法)に基づく新たな森林整備計画を中心に、上限値3.9%を確保できるとしている。

しかしながら、実態は必ずしも楽観視できない。我が国の地球温暖化対策の吸収源に対する依存度の高さ、政治的なリスクの存在は大きな問題である。例えば、ボン合意において、3条4項活動(森林管理)によって相殺してもよいことになっている3条3項活動は、日本では排出になることが確実であり(吸収源対策合同検討委員会報告書参照)、同活動の排出分をも含めた吸収が必要とされることから、今後ますます3条4項活動への依存度が高くなることが予想される。現状では、1人で山1つを“管理”していると主張しているなど、必ずしも管理体制が整っているとは言えない。今後出てくる森林管理に関する具体的なガイドライン次第では上記の計画が破綻する恐れがあり、潜在的なリスクは非常に大きいと言えよう。上記ガイドラインが2003年にも予定されているCOP / moPにおいて打ち出されることを考えると、早急に問題点を洗い出す必要がある。また、温室効果ガス削減を補完する国外植林活動(JI / CDM)の多くは豪州に集中しているが、豪州は議定書の批准に関して難色を示しており、クレジット取得が期待できない。したがって、ロシア等他国での植林活動の拡大が必要である。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 京都議定書における吸収源と我が国の課題 [68.5 KB]