富士通総研

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. Economic Review >
  4. Vol.6 No.2 2002年4月 >
  5. 中国ソフト産業の現状と産業政策

中国ソフト産業の現状と産業政策

ソフトウエア産業の現状

企業が情報システムを導入する場合、その情報システムに合わせて業務の流れ(ビジネス・プロセス)を変えるだけでなく、意思決定構造や従業員の業績評価基準なども変えなければ、大きな効果を期待することはできない。たとえば、マサチューセッツ工科大学のブリンジョルフソン教授らが行った分析によれば、米国企業においてIT投資は生産性向上に貢献しているが、その貢献の46%は「企業固有の要因」に起因するものであった1)。「企業固有の要因」とは、各企業における経営の巧拙やITを使うための従業員の能力など、情報システムそのものとは直接的に関係ないものである。情報システムは企業におけるコミュニケーションや協働のあり方に大きな影響を与えるために、その効果を高めるためには、他の資本以上に、投資に合わせて業務プロセスの見直しや新しい人事制度などの導入を行うことが必要になる。

2001年末の中国当局の調査によると、中国のソフト開発企業は合計2,265社、ソフト技術者は19.1万人(その内、博士2,703人、修士14,798人、学士9.16万人)である。しかし、ISO9001やCMMのような世界的な基準等の認証を受けた企業は少なく、例えば、CMM3の認証を受けた企業は2社しかない(CMM5、CMM4の認証を受けた企業はまだない)。また、全国398校の大学にコンピューター及びソフト関連の専門科が設置されており、学生数は38.7万人(大学生14.3万人、短大生24.4万人)にも上る。

産業分布の地域的特長として、中国最大のサイエンスパーク「中関村」を有する北京市は、ソフト協会に認証されたソフト企業600社(研究・開発・販売人員6万人)、登録した製品1,700を有し、中国の半分を占めている。そのほかは上海、深 、審陽、成都等に集中している。

産業発展の課題

ソフト産業発展の課題に、(1)上級ソフト開発人材とプログラマーの不足、(2)ソフト開発・産業発展に必要な資本市場・洗練されたベンチャーキャピタル(VC)の不足、(3)コピー品が氾濫する劣悪な市場環境等が挙げられる。

中国では研究開発を中心とするソフト人材は、42万人不足していると言われている。こうした中で、ソフト人材不足をビジネスチャンスに生かす企業も出てきている。有名な通信機器メーカー「華為」は、米国Prometric社の教育認証制度を取り入れ全国的にIT教育ビジネスを展開し始めた。また、ソフト会社「北大青鳥」は、世界最大のソフト教育会社であるインドのAptech社と協力して、Aptech社のソフト教育認証制度を導入したビジネスを全国的に展開し始めている。

また、研究開発人員が1,000人を超えるソフト企業は18社しかなく、50人以下の小企業は1,493社と全体の66%を占めている。こうした中でM&Aによる規模拡大の試みも見られており、例えば、大手「用友」は、株式上場で得た資金で中国のソフト会社を買収したり、台湾ソフト会社に対する買収も進めている。但し、中国資本市場の未発達、成熟したVCがいないため大規模なM&Aが行えない状況にあり、ソフト産業育成上の障害になっている。現在中国のソフト産業は毎年120億元(約15億ドル)の投資資金を必要としているが、資金の供給側と需要側のミスマッチが生じている。ネット関連投資の失敗からVCの投資が慎重になりすぎる面がある一方、ソフト会社は短期的な収益を急ぐVCに対して、長期的な戦略投資を望んでいる。

更に、ソフトの違法コピーが氾濫している。違法コピー取締りのもっとも厳しい北京市でさえ、ゲームソフトの違法コピー商品率は50%にも昇っている(『人民日報』2001年11月28日)。ソフトの違法コピーはソフト会社の収益を圧迫するだけでなく、商品開発のインセンティブをも阻害している。

中国政府の産業政策

インド、アイルランドと並ぶ第3のソフト受託・輸出大国を目指して、中国政府は投融資、税収、輸出、収入配分、人材育成と導入、知的財産権保護、国際的な基準認証の奨励等を内容とした新たな産業政策をスタートさせた。

2000年6月、中国政府は「ソフト産業と集積回路産業発展を促進する諸政策」という産業政策を公布し、ソフト産業育成に本腰を入れ始めた。政策の内容は、投融資、税収、輸出、収入配分、人材育成と導入、知的財産権保護等に関するものである。産業育成の具体策の1つとして、インドのソフト産業パーク制度と同様、中国は全土に11ヵ所の「ソフト産業パーク」を設置し、ソフト産業の集積・発展を図っている。

また、ソフト人材の需要を満たすために、大学での教育を充実するとともに、全国に35ヵ所のソフト教育学院(大学、企業、外資等による設置)を新設し、実務重視でプログラマー、SE、マネジャーの教育を開始する。この他、海外ソフト人材の導入にも力を入れ始めており、ISO9001やCMMの品質認証制度の利用も奨励する方針を打出している。

更に、知的財産権保護を強化し、市場環境を整備することも大切である。政府機関、団体等から、コピーソフトを追放する政令(正規ソフト購入予算の計上、違法ソフト使用について行政処罰の徹底等)が2001年8月29日に公布された。企業による違法コピーソフト使用の罰則を強化し、違法コピー追放キャンペーンも実施している。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 中国ソフト産業の現状と産業政策 [91.1 KB]