失業率5%台の読み方
主任研究員 小野 達也
2002年1月
要旨
完全失業率が5%台に突入、過去最高の更新続く
2001年7月に5%台に突入した完全失業率(季節調整値)が、9月(10月末発表)には5.3%に達し、過去最高を更新し続けている。完全失業率のベースとなる労働力統計調査は、全国の約4万世帯・10万人が対象であり、毎月の完全失業者数には2%程度の標準誤差がある(真の完全失業率は、5.3±0.1%の範囲に67%の確率で入る)が、ここへきて失業率の急上昇は動かしがたい事実となってきた。
完全失業率とは、完全失業者(仕事をもたず、探している人)の数を労働力人口(就業者と完全失業者をあわせたもの)で割って算出されるもので、「仕事をしたくて探しているのに見つかっていない人の割合」である。かつて低い水準で安定していた完全失業率は、有効求人倍率などと比べ、景気に連動する性格が弱く注目度も低かったが、経済の成熟度が欧米諸国と肩を並べる時代となって(日本などが準拠しているILOの国際基準による標準化失業率をみると、最近では米国などOECD諸国の数か国と同程度か上回る)、景気を反映する指標として注目を集めるようになった。
失業率の上昇をもたらしたもの
ところで完全失業者(2001年10月末発表の9月末時点の推計<以下同様> : 357万人)は、仕事を探すにいたった理由によって、勤め先や事業の都合(人員整理、定年退職、事業不振など)で職を離れた「非自発的」離職者(109万人)、自分や家族の都合で職を離れた「自発的」離職者(127万人)、学卒未就職者(16万人)、その他の者(94万人)の4種類からなる。
失業率の対前年同月比0.3ポイント以上の急上昇が始まったのは昨年の5月であるが、それから7月までの失業率の上昇をもたらしたのは、専ら自発的離職者の増加であった。ところが8月になって、昨年1月以降対前年比で減少または微増に止まっていた非自発的離職者が増加に転じ、全体の失業率上昇が加速した観がある。なお、失業率が3%台前半であった1997年以前から99年の4%台後半への急上昇は、非自発的離職者の増加が最大の要因であった。
自発的離職者と非自発的離職者では、年齢構成が大きく異なる。9月末時点で34歳以下の年代では、自発的離職者が非自発的離職者の2.3倍であるのに対し、45歳以上の年代では逆に非自発的離職者が自発的離職者の1.8倍である。
就業者数の減少をもたらしたもの
完全失業者は、就業者が職を離れる他、仕事を持たず仕事を探していなかった人(非労働力人口)が仕事を探し始めたが未だ見つかっていない場合にも新たに発生する。毎月の調査結果をもとに過去1年間の変化をみると、新たに失業者になった延べ792万人のうち、前月は就業者だった人は62%、非労動力であった人は38%であった。一方失業者でなくなった864万人の移動先は就業者と非労働力が50%ずつであった。
この結果、この1年間で就業者は84万人減り、失業者は37万人増加、非労働力人口は102万人増加した。背景には(1)若い層を中心とした自発的失業の増加及び(2)ここへ来て30・40代を中心に非自発的失業が増加に転じたことに加え、(3)農林業・非農林業とも高齢層を中心にあわせて47万人減少した自営業主・家族従業者は、その減少分がほとんど非労働力になったこと、(4)生産年齢人口(15~64歳)が高齢化によりこの1年間で30万人以上減少(65歳以上人口は80万人以上増加)したことなどがある。
なお、会社などに勤める雇用者数は、パート労働者の多い商業・サービス業が製造業・建設業の雇用減の受け皿となったこともあって8月まで増加を続けてきたが、9月には17か月ぶりに対前年で減少に転じた。非農林業の臨時雇も61か月ぶりに減少に転じ、製造業の就業者は5か月連続で減少、9月には対前年で65万人減に達した。
最近の動向が示唆するもの
今年度補正予算には、総事業規模で1兆円規模の雇用対策が盛り込まれた。労働需給のミスマッチの改善に向けた労働市場の規制緩和による流動化促進、特に自発的な離職が増えている若い世代や非自発的な離職による失業が多い中高年世代を対象とした対策も盛り込まれている。
ミスマッチ要因に製造業などの雇用収縮が重なった完全失業率5.3%を厚生労働相は「緊急事態」と表現したが、米国テロの影響の本格化、手を抜くわけにいかない公共事業費や不良債権処理などの構造改革、IT不況による景気回復の遅れといった要因から、失業率は更に上昇することも予想される。
政府には即効性のある対策が求められる一方で、一時しのぎの対策ではいずれ一層深刻な雇用縮小を招きかねない。今何よりも求められるのは、全体の失業率や失業者数の動向よりも、様々な対策が、年齢などの属性や地域などセグメント別にどれだけの効果を挙げたか、その検証・評価である。
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