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国際経済社会の新展開

富士通総研顧問(米日財団理事長)ジョージ・R・パッカード

2002年1月

要旨

2001年9月11日の悲劇は世界のすべての国に甚大な影響を及ぼすであろう。9月11日という日は、ある意味では第一次大戦の勃発、真珠湾攻撃、ベルリンの壁の崩壊と世界の共産主義社会の瓦解にも匹敵する国際政治史上の一大転換点であるといえよう。

まず合衆国を見れば、テロリストの攻撃は発足から間もないブッシュ政権の意識に既に著しい変化をもたらしている。ジョージ・W・ブッシュとその側近たちがホワイトハウスに乗り込んだときには、合衆国は対外政策の執行においては随時に一国ベースで行動するという決意を固めていた。京都議定書をはじめとする主要な国際条約への参加を拒んだのはこのためであり、30年に及ぶ対ソ条約の破棄につながる全米ミサイル防衛推進の決断も、またこのような態度の反映であった。

しかし9月11日以降、ブッシュ政権の態度は一大転換を遂げた。政権担当者たちに明らかになったのは、「非対称的戦争」の世界においては超大国といえども独立独歩たりえない、そこでは大量破壊兵器を保有する、ならず者国家や、国家を超えたテロリストたちが前代未聞の恐怖で本土を脅かすことができるからだ - ということであった。対テロリスト戦争という文脈において、同盟国の存在が急激に重みを増したのである。合衆国が近い将来においてイランとの関係修復を図る可能性は高く、またパキスタン、ロシア、中国との間では既に二国間関係の安定化という方向が取られている。

第2に、国際政治の場においてテロリズムと戦い平和維持活動を行うために、主権国家がその権能の一部を国際機関に委譲せざるを得ないということが挙げられる。アフガニスタンの今後の統治形態の決定において、国連の果たす役割がより大きくなることは既に明らかである。先進国間あるいはその内部を自由に移動するテロリストを追い詰めるには、前例のない国際協力が必要となるだろう。また、致死性細菌と核物質の拡散防止も第一世界と第三世界の並々ならぬ協調を要する。

この「新たな世界秩序」(1991年に現大統領ブッシュ氏の父親が用いた言葉である)においては、このほかにも国際協力の進展が予想される。たとえば、最近カタールのドーハで開催されたWTO加盟国会議において貿易自由化の新ラウンドのための交渉が開始されたが、仮に9月11日のテロがなかったとすればこれはおそらく失敗に終わっていたであろう。

テロリズムに対する国際十字軍への参加については、合衆国と日本はそれぞれ特異な位置を占めている。日本は2度にわたる原爆の投下を被ったばかりか、1995年3月にはオウム真理教による地下鉄サリン事件を経験している。アメリカ人もいまやこのような攻撃の恐怖を身にしみて感じている。文明に対するこのような脅威を拭い去るために、アメリカ国民はいかなる対価をも厭わずいかなる費用と歳月をも惜しまぬ決意であり、これに対しては何人たりとも疑いを差し挟むことはできない。

いま歴史の決定的瞬間に立って、我々は多くの新たな展開を予想することができる。新しいエネルギー源の探求が進み、イスラム世界への接近と理解が試みられるであろう。中東の腐敗した非民主的体制はそれぞれ自国民の手によって覆される可能性がある。イスラエルとパレスチナ間の紛争解決に向けて更なる努力が行われ、トルコとイランは地域においてより大きな役割を果たすことになるだろう。また中国を国際社会の完全なるメンバーとして振る舞わせるためにいっそうの努力が必要とされる。

このカオスから生成する新たな世界秩序は、我々にとって全く未知のものとなるであろう。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 国際経済社会の新展開 [77.4 KB]