日系企業の望ましい対中投資政策
上級研究員 金 堅敏
2001年10月
目次
I.WTO加盟と対中投資
1.WTO加盟と外資企業へのインパクト
2.WTO加盟を控える制度変更の動き
II.日系企業が対中投資を躊躇した背景
1.対中投資における日系企業の収縮と欧米企業の拡大
2.日系企業が提起する対中投資の問題点と課題
3.米系企業の問題提起
III.激変する中国の市場競争
1.拡大する国内産業の「外資企業化」
2.台頭するローカル企業
3.市場競争を加熱させるWTO加盟
IV.競争力強化への提言
1.投資戦略の再考
2.マネジメントの再考
終わりに
要旨
1.中国のWTO加盟に伴う新規投資分野の開放あるいは拡大、既存投資分野の更なる開放、経営環境の改善は外資企業に大きなインパクトを与える。WTO加盟交渉の終息を待たず、既に中国政府は外資導入や構造改革を図るために、WTOルールと整合するよう外資三法や国内法規の改廃を始めている。こうした中で日系企業は、1990年代における中国事業の収益性を低く評価し過ぎており、欧米企業と比べ中国WTO加盟に対する期待もあまり高くない。
2.1990年代を通じて安定的な拡大を続けている欧米企業の対中投資とは対照的に、日系企業は1990年前半に投資ブームを引き起こしたものの、後半は停滞した。対中投資の潜在力を評価しているにもかかわらず停滞した理由として、法律の急変・不透明な運用、インフラの未整備、代金回収困難等、政策的・物理的な経営環境が悪く期待どおりの実績が得られなかったことが上げられる。しかも、近年の調査では、競争が熾烈になり、販売単価の下落が日系企業の経営を苦しめる重要な要素となっている。
3.拡大する国内産業の「外資企業化」や民営企業の台頭により、中国市場はますます国際化され、国内競争はグローバルな国際競争に変身しつつある。にもかかわらず、日系企業の多くがイメージしている中国市場における競争相手は、非効率的な国有企業である。WTO加盟により、中国市場参入を目指す日系企業は更なる競争圧力を受けるであろう。欧米企業との厳しい競争を立ち向かざるを得なくなる。
4.中国市場で欧米企業との競争やローカル企業からのキャッチアップに勝ち抜くためには、日系企業は「閉鎖され、国有企業が主体である中国市場」という先入観を捨て、競争力強化のための対中投資戦略・マネジメントの再検討を行う必要がある。具体的には、1.最新技術の投入や投入技術の循環的再導入、現地R&D資源の活用やIT投資の強化、2.産業集積地、消費地へのアクセス、情報収集の難易を立地選択の条件にすること、3.現地化による企業ガバナンスに対するITの活用、4.M&Aで既存販売資源の活用及び顧客信用システムの構築や販売にインセンティブ・メカニズムの確立などの競争力強化策を早急に採択するよう提言する。
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