長期エネルギー需給見通しの内容と産業界の課題
主任研究員 武石 礼司
2001年10月
要旨
政府が発表した長期エネルギー需給見通しによれば、エネルギー需要の抑制に努めたとしても、今後のエネルギー需要の増大は不可避であると予測される。
石油需要量の抑制が目指されているが、今後2010年に向けてエネルギー需要量に占める構成比率は下がっても、量的には増大せざるを得ない。エネルギー需要量の増大は、特に石炭需要量の増加として現れる可能性が高く、CO2排出量は、2010年に1990年比6.9%増となることが予測される(基準ケース)。
報告書の目標ケースでは、一次エネルギー供給の増加量を抑制し微増に止めることで、1990年と同量のCO2排出量としている。この目標ケース達成のためには、多くの政府施策の実施が必要とされており、産業、民生、運輸の各分野における多面的な取組みが必要となる。
政府としては、炭素税を始めとした税制度の活用により、エネルギー需要の抑制とCO2排出量の削減を目指す政策の導入を検討している。産業界においては、新たな税金の賦課を避けるためにも、省エネルギー及び新エネルギーの導入に対する自主的取組みの内容につき、マスコミ等を通じて広く宣伝するとともに、環境に配慮した経営を先取りして実践する必要性が今まで以上に増大している。
長期エネルギー需給見通し取りまとめの経緯
政府の総合資源エネルギー調査会は、本年7月12日に「今後のエネルギー政策について」と題する報告書を経済産業大臣に答申した。この報告書では、2010年度のエネルギー需給の基準ケースと目標ケースの2つのケースを設定して、今後の導入されるべき政府のエネルギー政策のあり方について検討を加えている。この報告書の取りまとめに至るまでには、昨年4月から総合部会、需給部会、省エネルギー部会、新エネルギー部会、原子力部会、石油分科会(天然ガス小委員会)で合わせて延べ74回に及ぶ審議が行われるとともに、更に全国5ヵ所での地方会議、パブリックコメントを経ており、多大の時間を費やした作業を下敷きにしている。この報告書の内容は、今後の日本のエネルギー及び環境政策のたたき台となる重要な意味を持っている。
長期エネルギー需給見通しの内容と課題
1.一次エネルギー供給の内訳
報告書によれば、一次エネルギー供給は、基準ケースでは石油換算で1999年度の5.93億キロリットルから2010年に6.22億キロリットルに増大し、CO2排出量も1990年比で6.9%増となる。
一次エネルギー供給の内訳を見ると、基準ケースにおいては石油への依存度を減らし(1999年度構成比52%→2010年度45%)、石炭(17.4%→21.9%)、天然ガス(12.7%→13.2%)、原子力(13%→15%)、新エネルギー(1.1%→1.6%)がいずれも増え、特に石炭の増加が目立っている。
次に、目標ケースでは、2010年度の一次エネルギー供給は基準ケースと比べ低い伸びの6.02億キロリットルにとどまり、CO2排出量は1990年度と同量となると予測している。
目標ケースの一次エネルギー供給の内訳を見ると、石油への依存度は基準ケースと同様、構成比を45%まで減らす見込みとなっている。全体の一次エネルギー供給量が減少しているために実際に供給される石油量はより大きく減少する。石炭の構成比は基準ケースほどではないものの増加する(17.4%→19%)。天然ガス(12.7%→14%)も若干増え、原子力(13%→15%)も基準ケースと同じく増え、新エネルギー(1.1%→3%)は現状と比べると構成比が大きく増える内容になっている。現状と比べると、エネルギーの需要抑制・省エネルギーに一段と努めるとともに、新エネルギーの導入に多大の努力が必要となる内容となっている。
2.電力設備及び発電電力量とその課題
原子力発電所の増設については、1998年作成の長期エネルギー見通しにおいては20基建設とされていたものが、6基から13基と幅を持たせた予想となっている。
発電設備容量及び発電電力量においては、石炭の構成比が増えると予測されている。天然ガス(LNG)は構成比で見ると横ばいであり、石油の比率減少分を、石炭と原子力が担うとの予測が成り立つ。
発電設備の増設には時間がかかることを考えると、目標年次の2010年はすぐに到来し、決して将来の遠い話ではない。地球環境問題が長期の取組みを要する点からみて、2020年、更に2030年を考えた将来像を描いた上で、2010年にどのような施策が導入されているべきか、早急に検討しておくことが必要である。
3.地球温暖化対策とその課題
CO2排出量は、1999年度において既に1990年度比8.9%増大している。日本が京都議定書に従いCO2排出量を1990年比6%削減することは不可能との予測が成り立つ。達成できないことを前提とした交渉のあり方を、再度検討する必要がある。
産業界にとっては、CO2削減のための環境自主行動計画に積極的に取組むとともに、国民の理解と協力を得るために、自主的取組みの効果と具体的なCO2削減量に関する広報活動を強めていく必要がある。小さな政府を実現し、市場メカニズムに依拠した経済体制を維持し、新たな課税制度の設定をできるだけ回避するためにも、産業界における地球温暖化対策への積極的な取組みが是非とも必要である。
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