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民営化による活性化が求められる郵便事業

主任研究員 木村 達也

2001年10月

要旨

民営化への検討が進められる郵政三事業

小泉政権が発足し、構造改革への取り組みが進められるなか、2003年に国営の公社への移行が予定されている郵政三事業についても、首相の私的懇談会「郵政三事業の在り方について考える懇談会」が設けられ、かねてより首相の持論であった民営化を含めてその在り方が検討されている。また経済財政諮問会議が6月に決定した経済・財政運営の基本方針にも、民営化の検討が盛り込まれた。

民営化検討の理由は、(1)税負担がない郵政三事業のすべてが民間と競合すること(郵便法により国が独占的に取り扱うものと定められている信書も、2003年の郵政公社への移行とともに民間企業が参入予定)、(2)資金運用部への預託及び財投機関等への融資の廃止、自主運用への転換により、郵便貯金資金、簡易保険資金は、政策的資源配分である財政投融資の原資としての位置付けを失い、国営の公社による資金調達の必要はなくなったこと、などである。また(3)郵便事業、郵便貯金事業は1998年度以降赤字が続き、簡易保険事業も2000年度の最終利益は94年度の4分の1程度であるなど、郵政三事業の収益低迷の大きな要因とみられる国営事業の非効率は、国営の公社への移行では解消され難いこともある。

民営化反対の最大の理由に、ユニバーサルサービス(地域、所得に関係なく公平に提供される生活基礎サービス)が維持できなくなるとの主張がある。すなわち民間の自由な経済活動のもとでは、収益性の高い地域・業務へのみ新規参入が進み、収益の見こめない地域・業務が切り捨てられるクリームスキミングが生じるとの主張である。

郵便事業における民間との競合

郵便事業のなかで民間との競合が最も激しい分野は、小量物品(小包と宅配便)である。小量物品の取扱い個数は、1981年度以降前年度比で増加が続き、増加率は91~99年度平均で7.0%増、99年度には24.6%増と、国内貨物取扱量(トン数ベース)が91~99年度平均で前年度比1.9%増、99年度は同4.6%増にとどまるなかで極めて高い伸びを示している。

このような小量物品市場の成長を支えているのは宅配便である。宅配便の統計が取られる以前の小量物品増加率は、71~80年度平均で2.1%減である。宅配便の高い成長は、全国への翌日お届けや日曜祝日営業(現在は年365日営業)など、郵便小包にはない高度なサービスを提供したことに大きな要因がある。更に宅配便は特定の需要に対する新たなサービスを展開し、これらの需要を取り込んできていることも高成長の持続を可能にしている。特定の需要に対する新たなサービスとは、ゴルフ宅配便、スキー宅配便、産地直送便、通販の配達・決済代行、生鮮品等の低温輸送などの保冷便、時間指定便などである。また近年は、インターネットオークションの商品配送・決済を行うエクスクローサービスも手がけている。郵便局もこうした宅配便事業者のサービス強化に対し、保冷サービス(チルドゆうパック)、配達時間帯指定サービスなど小包のサービス強化を行っている。しかしこれらは宅配便の後追いで独自性に乏しく、小包の取扱い個数は91~99年度平均で1.1%減である。

郵便事業は、小量物品以外でもカタログ、パンフレット、雑誌などの配送で、民間と競合している。ヤマト運輸がこれらの配送へ本格参入した97年度以降、主に競合する第三種郵便物の取扱い数減少率は拡大し、97~2000年度平均で3.4%減となった。

ユニバーサルサービス維持に問題はない

このような宅配便事業者との競合は、郵政事業が国営の公社へ移行する2003年に民間企業が参入する信書の分野へも拡がる。競合のもと引受郵便物数が減少する状況を脱し、事業に活力を取戻すには民営化が必要と考えられる。

民営化によりユニバーサルサービスが損なわれるとの主張は、ヤマト運輸が97年に小笠原諸島でも宅急便(同社の宅配便の商品名)の取扱いを始め、住民登録者がいる行政区域をくまなくカバーする宅急便の全国集配ネットワークを完成していることから説得力を持たない。ヤマト運輸が全国ネットワークを構築したのは、顧客が地域を気にせず配送を依頼できることが、他の事業者とのサービス差別化の大きな要因となるためである。ヤマト運輸は小量物品市場で他の事業者を圧倒するトップ企業であるが、ネットワークの差別化のため、日本全国の地図にコンパスで円を描き全ての配送地域を30分でカバーするよう事業所の配置を行った。小量物品市場シェア3位の日本通運は宅配便の取扱い拡大を狙い2000年度に採算割れも辞さない拡販を行ったが、12月に貨物を処理し切れず方針を転換した。この転換の大きな要因は、ネットワークが不十分であったことにある。

郵便局のうち集配を行う局数は2001年3月末で5千弱、車輌数は9万2千台前後(自動二輪車を含む)である。このネットワークはヤマト運輸の事業所数3千強、車輌数3万5千台弱に匹敵し、民営化後の郵便事業が不採算を理由にこのネットワークの一部を廃止することは、競合する事業者への優位性を放棄することであり考えにくい。

郵便事業は、2003年に移行予定である国営の公社のもとでは、事業を柔軟に多角化することは難しい。また職員は公務員となるため人員削減も十分に行えず、更に国家公務員(特定郵便局長)を長とする特定郵便局の整理統合など思い切ったリストラも進めにくい。したがって郵便事業は民営化し、宅配便会社など民間の会社との競争のもと、そのネットワークを十分に生かし、経済合理性のある経営戦略のもと、効率性の高い事業を運営することが必要であり、これが真の活力回復につながる道である。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 民営化による活性化が求められる郵便事業 [110 KB]