富士通総研

電力産業の将来像

主任研究員 武石 礼司

2001年7月

目次


I.電力自由化後1年の検証
1.1年経過後の状況
2.昨年度発表した研究内容      
3.分析内容
II.規模の経済性
1.既存研究
2.規模の経済性の推計
3.要因分析
III.電力会社の地域差
1.電力融通
2.地域差に着目した競争
3.カリフォルニアの電力危機
4.託送価格の算出
IV.既存電力会社の戦略
1.現在の戦略
2.電力取引市場の出現のインパクト
3.発電部門の変化
4.送配電・小売部門の変化
5.電力会社のソリューション営業
V.電力産業の将来像
1.産業構造
2.電力産業の市場環境
VI.2003年に向けた自由化方針
1.欧米諸国の動向
2.日本の電力政策

要旨

1.電力自由化後1年の検証

電力大口需要家を対象とした電力自由化が2000年3月より開始され、新規参入者が既存の電力会社から顧客を奪う事例が生じ始めている。落札価格は最大では2割も安くなる例も生じているが、供給量としては未だ全体の1%にも満たない。

2.電力会社間の格差

電力会社が自然独占性を持った存在であるかを検討するために、電力会社10社の規模の経済性を推計すると、規模の経済性がある会社と無い会社とがあり、電力会社間で差異が生じている。この差異は、電力需要の伸びに比べて、支出の伸びの抑制がどの程度行われたかによりもたらされた。格差を縮小させるためには、電力各社間を結ぶ電力融通量が増大することが効果的である。現在、新規事業者向けの託送可能量は少ないが、その増量も期待される。  カリフォルニアで発生した電力危機は、ネットワークとしての電力系統の容量不足が一因であった。託送価格が適正に算出できる理論を用いると、ネットワーク産業である電力産業における価格算出が容易となる。

3.電力会社の将来像

既存電力会社は、現状では競争へ移行する体制が形成できていないが、卸電力市場、及び、小売電力市場が出現することで、発電部門、送電部門、配電・小売り部門の3機能に分離せざるを得ない。

4.2003年に向けた自由化方針

将来的には、電力部門の完全自由化は、欧米等の状況を見ると避けて通れない。日本は、1. 電力自由化に対して技術面でのイニシアティブを取るべく、分散型電源の導入を容易にする「需要地ネットワーク」の実現に向けて技術開発を進めるべきである。また、2. 複数の電力取引所と相対契約が並存するハイブリッド型と呼ばれる形をとることを明確にスケジューリングすべきで、2007年頃までには家庭用も含めた完全自由化を実施すると明確に決定すべきである。3. 2003年の見直し時には、少なくとも高圧部分6,000ボルトまでの自由化範囲の拡大を行うべきである。