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期待高まる不動産投信市場の役割

主任研究員 米山 秀隆

2001年7月

要旨

不動産投信市場が開設

昨年11月に、不動産を対象とした投資信託が解禁されたことを受け、不動産会社などが投資ファンドを設立する動きを活発化させている。また、東京証券取引所が、今年3月に不動産投信のための専用市場を開設するなど、市場整備も進められつつある。

不動産投信は、投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設を購入し、賃貸料収入などで得た収益を投資家に配分する金融商品である。不動産の証券化商品は従来からあったが、不動産投信が登場すれば個人が小口の不動産投資を行いやすくなる。

三菱地所は、約1,000億円のファンドを設立し、近く東証に上場させる予定である。三菱地所のファンドは、同社が所有する20棟以上のオフィスビルで構成されている。また、三井不動産も約2,000億円のファンドを設立し、早期の上場を目指しているという。このほか、東京建物などもファンド設立を予定している。上場した不動産投信は、株式と同じように自由に売買できる。

不動産投信の運用利回りは、3~7%程度が予想されている。テナントが撤退した場合などには、元本割れや利回り低下のリスクはあるものの、投資家にとっては、超低金利のなかで、利回りが比較的高いミドルリスクミドルリターンの商品となる。

不動産業界では、不動産投信が広く個人投資家の資金を集めることができれば、不動産市場に資金が円滑に流入し、地価下落にも歯止めがかかるのではないかと期待している。東証が開設した市場では、個人が投資しやすいよう、1口当たり純資産を5万円以上と小口化し、年1回は運用状況や資産情報を開示させるなどの投資家保護策が講じられた。

アメリカでは、不動産投信(REIT=リート)は、1990年代半ばに急成長し、現在の上場REITの時価総額は14兆円にものぼる。日本でもうまく行けば10兆円程度の資金が不動産投信に向かうとの見方もある。

当面の市場拡大は困難

このように不動産投信への期待は高まっているが、現状では、直ちにそれが不動産市場を活性化させるというシナリオは描きにくい。

第1の要因としては、日本では、不動産投信の投資対象となる優良物件が慢性的に不足しているという点があげられる。ファンドに組み入れる不動産の購入競争は一部地域で激しくなっているが、これにより価格が高騰すれば、利回りは低下することになる。

第2の要因としては、不動産の情報開示がどこまで行われるか不透明という点があげられる。日本の不動産業界の慣習では、通常、テナントとの賃貸契約の内容はブラックボック化されている上、現金で預かっている敷金や保証金などの扱いも不透明なままとなっている。情報開示は東証の上場基準で義務づけられているため必要なことではあるが、不動産業界では、詳細な情報まで開示することには消極的である。これに対し、アメリカのREITでは、投資対象物件について、テナント名、賃貸料、契約内容、将来のキャッシュフロー予測まで、実に細かな情報まで開示されている。

このような点を勘案すると、今後日本ですぐに不動産投信市場が急拡大することは考えにくく、また投資家の信頼を得るにも時間がかかることが予想される。アメリカで、1990年代半ばにREITが急成長した要因の1つには、1992年の制度改正によって、透明性が高められたことがあげられる。

不動産市場の正常化を促進

しかし、長期的な視点からみれば、不動産投信の導入は、日本の不動産市場をより良い方向に導く働きを持つことが期待できる。

不動産投信は、当面は全体からみればごく一部で、それが不動産市場全体を動かすわけではない。しかし、このことが契機となり、不動産業界で、収益を生む物件に変えなければ淘汰されるという機運が高まれば、古いビルのリニューアルや建て替え、都市再開発などの動きが少しずつ広がっていくことになる。

また、不動産はキャッシュフローを生む形で利用されていなければ価値がないことが明確になるため、新たに開発する場合でも、将来的にも陳腐化せず収益を生む開発を行おうとする意識が高まり、不動産の有効利用を進展させる効果が期待できる。

更に、情報開示が徹底されれば、日本の不動産業界の不透明な体質を変える契機にもなる。不動産業界の一部では、テナント情報の開示はテナントのプライバシーの侵害につながるから困難とする意見もあるが、本当の理由は別なところにある。情報開示を阻んでいるのはむしろ、不平等な賃貸料の体系が露呈したり、値下げ競争が激しくなることを恐れる不動産業界自身である。

このように、不動産投信の導入は、利用価値を重視した不動産開発や賃貸料の透明化をもたらすことで、将来的に、日本の不動産市場を正常化させる大きな力になっていくことが予想される。

全文はPDFファイルをご参照ください。

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