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活発化する中国のM&A

上級研究員 金 堅敏

2001年7月

要旨

活発化する企業買収活動

近年、中国企業間の吸収合併活動が注目され始めた。特に、電気通信・石油・航空輸送のような基幹産業、不動産業、商業、医薬品製造業等の企業再編が活発になってきている。また、これまでの行政指令・指導による企業吸収・合併が、市場を通じたM&Aに転じてきている。しかも、これまでの協議買収(友好的な買収)や全国に設立されている200余りの「財産権交易センター」(財産売買仲介機関)を通じてだけでなく、証券市場を通じた買収(公開買収制度TOBを通じた敵対買収を含む)も現われてきている。中国の証券監督当局は、行政機関の介入を排除したM&A市場を育成するため証券市場を介したM&Aを奨励している。買い手企業は優良国有企業、私営企業、外資企業と多様であるが、売り手企業は国有企業がほとんどである。買い手企業が国有企業の場合は「救済型」の側面もあるが、それ以外については市場シェアの拡大や経営コストの削減による競争力強化が、M&Aの目的である。

国有基幹産業や優良国有企業によるM&Aが注目

中国では、国有企業改革の一環として中小国有企業の売却や一般競争分野からの国有事業の撤退といった動きが加速している一方、基幹産業の分野では国有企業の事業再編が活発になっている。国有中小企業の売却や事業撤退とは対照的に、WTO加盟を控えてM&Aによる競争力強化策が図られている。中国移動による4省3市移動電話網の買収(総額328.4億ドル)、中国石油天然ガス株式有限公司と中国石油化学工業株式有限公司による全国的なガソリンスタンドの買収(総額約40億ドル)、南方航空による中原航空の買収(総額約2億ドル)等が、2000年の国有基幹産業の買収例である。
一般競争分野の優良国有企業によるM&A活動も広く見られる。例えば、青島ビール集団による全国30数社(外資系を含む)のビール・メーカーの買収(買収総額約1.5億ドル)、三九集団による長征製薬の買収(買収金額0.6億ドル)等がその事例である。先般、深せんでヒアリングをした上場企業「深せん市農産品株式会社」も、既存農産物卸売りあるいは小売会社への買収による拡張事例である。中国政府も、被買収企業の借金の金利支払い停止等の優遇政策を出して優良企業によるM&Aを奨励している。

上場企業間の買収は「救済型」がほとんどである。しかし、資本市場を通じたTOBも現われ、敵対買収とそれに伴う小株主保護の問題が最近注目され、証券市場を通じたM&Aのルール整備が急がれている。

飛躍するチャンスを狙う私営企業による買収

中国には約200万社の私営企業(約20社の上場企業を含む)が活動しているが、近年、中小規模の私営企業が事業規模の拡大を急いでいるのが目に付く。既存企業に対するM&Aは、コスト低下の近道であり、中小国有企業の売却や一般競争分野からの国有事業の撤退は、私営企業にとって買収を通じて飛躍するチャンスとなっている。

私営企業の場合「救済的」買収は少なく、「コア・ビジネス」の強化のために競争相手を買収する事例が多い。最近では、ポケベルサービス業やドットコム関係のM&Aが非常に活発になっている。また、生産企業に対する買収だけでなく、研究開発力の弱い私営企業が国有研究機関を買収する事例も見られる。深せんでヒアリングした「深せん万基薬業有限公司」は、国有製薬会社と国有薬品研究所を買収して拡張途中の私営企業である。
国有企業に対する買収における税制優遇、私営企業に対する差別的な融資政策の撤廃、今年中にも深せん市に創設される第二部市場への上場(現在の株式市場は国有企業の上場がメインである)等、買収に必要な資金手当てが容易になることは、私営企業による買収を加速させるだろう。

市場参入を狙った外資企業による買収

外資企業による国有企業に対する買収において、小型買収のケースは香港・台湾及び東南アジアの華人系に多いが、1990年代に入り、米系企業によって大型買収のケースが現われてきている。買収方法は1.B株購入による買収、2.協議買収、3.「財産系取引センター」の仲介による買収、4.合弁企業における出資比率の引上げによる買収が上げられる。

米コダック社による国有フィルム企業3社の買収(買収総額約10億ドル)、米製罐会社ポール社による13製罐工場の買収、米フォード社の株式出資による国有企業江鈴自動車への出資等が代表的事例である。最近、フランス系企業によるM&Aが目立っている。例えば、深せんでヒアリングしたカルフール社が、1996年北京で1号店を開店してから4年間で、既存小売店を買収し急速に拡大、2000年末には28店舗を立ち上げた。また、フランス系の食品製造企業タノン社は1994年以降、10数社への買収や資本参加を行った。特に2000年に上海梅林(中国最大の飲料水企業)等への買収が、業界関係者に大きなインパクトを与えたという。WTO加盟による市場開放を見込んで、外資企業による買収の機運が更に高まると言えよう。

中国政府の対応

国内的には、全国統一市場の形成、赤字国有企業への財政負担の解消、国有資産売却による社会保障基金拡充等を狙った中国当局も、当分の間こうしたM&Aの動きを奨励しているようである。また、世界のFDI投資のうち9割以上がM&Aによるものという現実に注目すると、世界的な外資導入競争を勝ち抜くためには、中国政府にとっても、今後ともM&Aによる対中投資を奨励せざるを得ないものと思われる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 活発化する中国のM&A [80.5 KB]