アジアの情報化の現状と展望
- 韓国のインターネット・ビジネス
主任研究員 村上 美智子
2001年1月
要旨
電子商取引市場の現状
韓国電子商取引研究組合によれば、電子商取引市場の市場規模は、1999年に、B to B(business to business)が5,900万ドル、B to C(business to consumer)が1億900万ドルとなった。また、電子商取引のなかでは、オンライン株式取引とインターネット・ショッピングモールの拡大が顕著である。オンライン株式取引は、安価な取引手数料を背景に1999年後半から拡大が顕著となり、2000年4月に株式取引全体に占めるシェアは、取引高で54%、取引勘定数では33.8%に達した。オンライン・ブローカーの新規参入も活発化したが、取引システムや調査レポートへの信頼を背景に既存の証券会社が取引を拡大し、99年通年では、オンライン取引の取引高に占める大手5社のシェアが62%となった。因みに日本では、インターネット取引の個人取引に占めるシェアは、99年10月~2000年3月の期間に6.7%、2000年4月~9月の期間には18.9%(日本証券業協会調査)となっている。
一方、インターネット・ショッピングモールは99年末に1,500に達し、売上高は流通業全体の0.4%を占めた。インターネット・ショッピングモールでは、売上の50%を三星物産のショッピングモールが占めている。同社は、98年7月にインターネット・ショッピングモールに参入し、流通業でのノウハウ及び人材の蓄積、豊富な品揃え、ブランド力を背景に有利に事業を展開している。ただし、業界全体としては、安易な経営戦略やロジスティックスの問題から、顧客の不信感が高まりつつある。今後は、既存の流通業者による対応の強化が予想され、乱立したインターネット・ショッピングモールは整理・淘汰が加速するとみられる。
財閥のインターネット戦略とネット・ベンチャーの動向
韓国の経済発展に中心的な役割を果たしてきた財閥では、インターネットの活用による企業の再生が模索され、(1)B to Cの推進による新規顧客の開拓、(2)オフラインでの取引の実績を背景としたB to Bでの主導権の確立、(3)社内管理のIT化、(4)新ビジネスの創出 - の4つを柱に対応が進められている。とりわけ、三星グループでは、21世紀にむけてミレニアム・ビジョンとして「I Generator」とのスローガンを掲げ、インターネット・ビジネスへの積極的な取組を展開している。
一方、ベンチャー企業は、99年後半から2000年3月にかけて急増し、98年末の2,042社から、2000年5月末には7,110社に拡大した。このようにベンチャー企業の設立が活発化した背景には、金大中大統領が経済構造改革の一環として2万のベンチャー設立の目標を掲げ、税制優遇措置など支援措置を講じたことや、米国に端を発するベンチャー・ブームの波及があった。また、財閥改革の進行に伴い若年労働者の起業への指向が高まったことも挙げられる。二部市場であるKOSDAQの株価の推移をみると、99年半ばから2000年3月にかけてベンチャー指数は総合株価指数を大幅に上回って推移したほか、99年から2000年にかけてベンチャー・キャピタル及びファンドも急増し、ベンチャーへ大量の資金が流入したことがわかる。韓国のベンチャーの業種別内訳をみると、2000年5月現在、製造業が60%以上を占め、ネット・ベンチャーを含むIT/ソフトウェアは28.8%にとどまっている。ただし、99年の増加率はIT/ソフトウェア部門が最大であった。韓国では、ベンチャーへの投資、R&Dのラボの所有、新技術、ビジネス・モデルのいずれかの要件を満たすスタート・アップ企業がベンチャーと認められ、税制上の優遇措置を受けることができる。2000年5月現在のベンチャーの内訳をみると、ビジネス・モデルが40%、新技術が27%、ベンチャーへの投資が17%、R&Dが16%となっている。また、このうち2.4%に相当する173社がKOSDAQへの上場を果たしているが、その内訳をみると、ベンチャーへの投資が57%、R&Dが20%、新技術が17%、ビジネス・モデルが6%となっている。これは、KOSDAQの活況を背景に、キャピタル・ゲインの獲得を目的に、ベンチャーが株式市場から調達した資金を用いて他のベンチャーへの投資活動を活発に行うなど、マネー・ゲームに興じていたことを反映している。2000年4月には、米国のNASDAQの軟化を背景にKOSDAQが下落に転じたことを契機に韓国のベンチャー・ブームは終焉し、現状では、とりわけ2000年以降に設立された企業について、キャッシュ・フローの悪化するところが続出している。
インターネット・ビジネスの拡大に向けて
韓国のインターネット利用人口は、2000年6月に1,575万人、全人口に対する比率は33.3%に達しているほか、携帯電話を用いたインターネット利用人口は、6月現在で488万人となっている。また、99年7月に電子署名法が、次いで2000年1月には電子商取引標準約款が制定されるなど、法整備も進んでいる。今後は、ロジスティックスの問題などインターネットの効果的な利用を可能とするオフラインのベースでの課題を克服するとともに、ベンチャーの健全な成長を促す枠組みを整備することが必要であろう。ベンチャーが発達している米国では、確立されたコア・コンピタンスをベースに企業間のネットワークが形成されている。これに対して、韓国では財閥が経営の多角化を進めてきたことから、日本と同様にアウトソーシングも系列企業にとどまりがちであるなど、米国とは異なる経営構造をもっており、ベンチャーが直面する課題には日本と類似のものも少なくないと考えられ、アジアのなかでも日韓のベンチャーの交流は双方にメリットが大きいとみられる。
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