アジアにおける資金仲介機能の整備
- 円資金の有効利用に向けて
主任研究員 梶山 恵司
2000年10月
目次
はじめに
I.国際収支からみた資本還流の問題点
1.日本の対外資本還流の特徴と問題点
2.日独対外資本投資の比較
3.対内資本投資に関するアジアとラ米との比較
II.アジアの証券市場の特徴と問題点
1.アジアの株式市場
2.アジアの債券市場
3.スイス外債市場との比較
4.「アジアの債券市場」としての円建て外債
5.到来する円建て外債市場拡大のチャンス
おわりに
~資金仲介機能の整備に果たす日本の役割は大きい
1.香港、シンガポールはアジアの株式投資の拠点
2.日本がアジアで強みを発揮できるのは債券
3.今後の課題
要旨
1.資金仲介機能が未整備なこともあって、わが国からアジアへの資本還流は規模が不充分であるのみならず、融資偏重であるなど、質の点でも問題が多い。他方で、わが国は欧米へ巨額の資本投資を行っており、それを原資に今度は、欧米が自らの市場インフラを用いてアジアの証券に投資するというパターンとなっている。アジア諸国の融資依存度が高く、かつ対外赤字・成長資金のファイナンスを域外資金に頼らざるをえないのは、日本の対外資本投資が欧米偏重なことの裏返しでもある。
2.株式投資に関しては、市場インフラが整い、アジアの資産運用の機能を担っている香港、シンガポールが、アジア投資の拠点となっている。今後、アジア諸国が国外からの株式投資資金をいかに拡大させることができるかは、資金仲介機能の問題というよりは、構造調整や市場インフラの整備など、アジア各国の努力次第といえる。
3.他方、債券投資に関しては、市場インフラに加え、通貨信認の問題もあり、アジア諸国の多くは、通貨・市場とも外部に頼らざるをえない。香港、シンガポールは、株式のみならず、債券においてもアジアの金融市場となるべく相応の努力をしているが、両市場が債券においてアジアの資金仲介機能を果たすことはきわめて困難である。
4.アジアの債券市場となりうるのは円建て外債のみで、わが国がアジアの資金仲介機能の整備に果たす役割はきわめて大きい。円建て外債市場が拡大すれば、わが国からアジアへの証券投資は相当の規模に拡大するだろう。おりしも、証券決済制度の抜本的改革が行われる見通しが立ったことから、日本の債券市場発展の可能性が高まっている。また、ITによる取引システムの効率化は、市場発展の起爆剤ともなりうる。
5.円借款を円建て外債に切り替える、政府保証をつけるなど、円建て外債を政策的にサポートする余地も大きい。
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