電力自由化の動向とその課題
主任研究員 武石 礼司
2000年10月
目次
はじめに
I.今回の自由化の動機と内容
1.電力自由化の動機付け
2.新しい電力供給システム
3.電力需要構成と自由化範囲
II.供給安定性の確保
1.電力9社の設備投資額の推移
2.電力の質の確保メカニズム
III.料金予測
1.電気料金の国際比較
2.電力融通
3.託送料金比較
4.電気料金の節減可能性
5.電力価格の予測
IV.燃料選択とエネルギーグリッド
1.発電コストの比較
2.日本向けガスパイプライン計画
3.日本向けガスパイプライン・プロジェクトの採算
4.日本向け化石燃料輸入の炭素排出量
V.電力市場自由化への対応
1.電力価格引き下げとガス利用拡大
2.電力市場自由化への対応
要旨
1.電気事業法の改正が行われ2000年3月21日より大口需要家(総電力需要の27%を占める)に対する小売り自由化が導入された。この法律改正は、1995年に実施された31年ぶりの電気事業法の改正に続いて実施されたもので、国際的に割高であると見なされる日本の電気料金を、電力産業内での競争を促すことで引下げることを目的としているが、この自由化の効果は限定的である。
2.2000年3月21日から導入された大口需要家向けの託送制度は、託送料金が高いとの批判が出されている。大手電力会社(一般電力会社)の送電コストの計算に基づいて託送料金が設定されたものの、新規参入を目指す企業にとっては、一般電力会社が負担している送電コストがそもそも大きな参入障壁となってしまっている。
3.それでも、今後、卸発電(IPP)入札に参加し、落札できなかった余剰電力を保有する素材系を中心とした企業が、特定規模電気事業に徐々に参入してくると考えられる。参入を促進するためには、託送価格の面での見直しを行うとともに、自由化範囲をいっそう拡大する見直しを、3年後に予定している自由化範囲の見直しを先取りして、できるだけ早い時期に実施する必要が生じている。
4.現在の託送価格でも、電力の供給者が登場すれば、例えば、東京電力管内で特定規模電気事業者により、あるいは、東北電力管内から東京電力管内へ、託送を行うことにより、自由化された大口需要家にとって1割前後の電力コスト節減が可能となる。産業用に比べると割高な電力価格が設定されている業務用の大口需要家は、一般電力会社から次第に離脱すると予測できる。
5.将来的には、ガスをパイプラインにより輸入するプロジェクトの実施を図るべきで、実施に向けて交渉を行うことで、割高に設定されているLNGの輸入価格の引下げを図ることが、合わせて可能となると考えられる。このインフラ整備も進めることで、現行の価格よりも2割程度の電力価格の引下げを目指すことが可能となると考えられる。
