富士通総研

第7回フォーラム 21世紀経済社会への備え : その多角的検証

概要

富士通総研経済研究所では、4月20日(木曜日)経団連会館において第7回フォーラム「21世紀経済社会への備え : その多角的検証」を開催した。300名を超える聴衆が参集し、盛況のうちに幕を閉じた。当日は当社経済研究所の6名の研究者の研究発表とともに、各界の知識人4名によるパネルディスカッションを行ったが、とりわけパネルディスカッションにおける密度の濃い討論は参加者に深い感銘を与えた。

当社研究者の発表において、長島は、社会資本の限界生産性は30年で約半分に低下しており、公共投資の量的削減および質的な再検討が不可欠だ。建設関連への偏重は生産性に対する犠牲が大きく、各自治体の成長・発展を抑制する要因になる。地方への所得再分配、地元雇用対策を主目的とする公共事業は即時に凍結し、ハイテク部門、都市部の社会インフラに重点投資するべきだと主張した。

安部は、国際競争の激化や地球環境問題など社会的課題の増加を背景に、国が行う研究開発の役割が変化しつつ増大しており、その第三者評価が重視され始めた。しかし、現状の評価制度には幾つかの欠点があり、実施された評価でも問題点が指摘されている。そこで国の研究開発を評価する新たな手法を開発し、国全体として効果的・効率的な研究開発を実施すべきとしてそのあり方について提言した。

武石は、電気事業法改正により、2000年3月から大口電力需要家に対する小売り自由化が行われた。電力供給先が確保できれば、業務用の大口需要家において1割程度の価格引き下げを目指すことが可能である。今後一段の電力価格引き下げには、発電燃料の価格引き下げが効果的で、パイプラインによるガス輸入が有力であると主張した。

松山は、医療介護において負担の世代間公平化を図りかつ無駄を排し国民の満足度を高めるために、3つの提言を行った。(1)国民医療介護総費用合計ベースにおいて1人あたり負担増の倍率を高齢者と現役勤労者間で等しくする、(2)高齢者医療保険を創設し基礎給付保険と補完保険の2階建てにする、(3)地域医療介護圏で情報と経営資源を共有する統合ヘルスケア供給ネットワークを構築する。

梶山は、わが国からアジアへの資本投資で規模が一定しているのは、直接投資のみである。証券投資はアジアの証券インフラが未整備なことから、実質的にはゼロに近い。このため、まずわが国の証券インフラを用いることによって、アジアへの資金還流を促進するようなメカニズムを構築すべきだろう。為替リスクなしに大量に資金還流できる円建て外債が最も適した手段であると主張した。

金は、中国のWTO加盟は中国の高い体外経済依存度から見て必然的な成り行きである。しかし、良質廉価な製品輸入増や外資との激しい競争にさらされる中国産業あるいは企業では、大規模な産業調整・雇用調整が予想される。その対策として雇用維持能力・効用吸収能力の向上対策、雇用創出対策及び雇用調整バッファーの提供等が考えられると主張した。

またパネルディスカッションにおいては、グローバリゼーション、情報通信革命の進展に伴い、新しい社会が生まれ政治が変わる中で、日本が世界とどのような関わりを持つこととなるか、またそうした中で新しい日本のリーダーシップの源をどこに求めるかを主たるテーマとして、活発な討論が展開された。

討論の中で寺島氏は、IT革命の進展がアメリカの経済社会に与えた影響の光と陰の部分を指摘し、ITがもたらす社会構造変化に対して、社会工学的アプローチによる対応のあり方を示唆した。田勢氏は日本の政治社会におけるリーダー不在の実態を述べ、政治の正常化にはエリートの養成が急務であると主張した。

寺島氏、田勢氏のスピーチを受け、香西氏は世界一様のグローバリゼーションはなくむしろデ・グローバリゼーションの流れも生じるだろうと示唆すると共に、ITの進展がもたらすビジネス社会の変化について幅広く知見を述べた。また岡崎氏は、アジアの今日はむしろデ・グローバリゼーションの局面にあると指摘、また田勢氏の問題提起に賛同してわが国の教育改革が必要であるとした。

研究発表プログラム

9時 受付開始
9時30分~9時35分 開会挨拶
理事長 福井 俊彦
午前のセッション
9時35分~10時15分 「社会資本の生産性と公共投資の効率」
主任研究員 長島 直樹
10時15分~10時55分 「国の研究開発の重点的・効率的推進に向けて」
主任研究員 安部 忠彦
10時55分~11時10分 休憩
11時10分~11時50分 「電力自由化の動向とその課題」
主任研究員 武石 礼司
11時50分~12時30分 「医療介護分野の効率化と満足度向上」
主席研究員 松山 幸弘
12時30分~13時30分 昼休み
午後のセッション
13時30分~14時10分 「アジアにおける円資金の活用に向けて」
主任研究員 梶山 恵司
14時10分~14時50分 「中国のWTO加盟のインパクト」
研究員 金 堅敏
14時50分~15時5分 休憩
15時5分~16時55分 パネルディスカッション「知識創造時代の経済・社会・政治」
スピーカー
日本経済新聞社 論説副主幹 田勢 康弘
三井物産戦略研究所 所長 寺島 実郎
コメンテーター
外交評論家(富士通総研顧問) 岡崎 久彦
日本経済研究センター 会長(富士通総研顧問) 香西 泰
司会
富士通総研 理事長 福井 俊彦
16時55分~17時 閉会挨拶
会長 村岡 茂生