新たな販売手段として注目されるネット・オークション
研究員 田中 秀樹
2000年4月
要旨
「恐竜の化石580万ドルで売ります」。これはアメリカでインターネットを利用したオークション(競売)に実際に登場したものである。ネット・オークションでは、数ドルから数百万ドルまで様々な品物が売買され、誰でも参加できる気軽さとゲーム性で多くの人を集め活況を呈している。アメリカではこのネット・オークションが企業の新たな販売方法としても注目されている。
盛り上がるネット・オークション
ネット・オークションの最大手はアメリカのイーベイ(eBay)だ。1995年にサービスを始め、現在では登録ユーザー数770万人、1ヵ月に250万件以上もの競りが開催されるまでの規模になっている。同社の収入源はオークションの手数料であり、1998年の売上高は4,735万ドルで239万ドルの利益を計上した。調査会社Forrester Researchによると、ネット・オークションのマーケットは、1998年の14億ドルから2003年には190億ドルと5年で13倍以上に成長すると予測している。
この急成長のマーケットを他の企業も見逃すはずはなく、1999年には書籍販売で有名なアマゾン・コムやヤフーがサービスを開始し、イーベイのシェアを崩そうとしている。
日本でも、1999年9月にショッピングモールで有名な楽天市場が「楽天フリーマーケット」を、10月にはヤフージャパンが「Yahoo! オークション」、そして、11月にネット・ベンチャーのDeNAが「BIDDERS」を開始するなどネット・オークションが登場しはじめた。1999年のマーケットサイズは20 - 30億円程度といわれ、「Yahoo! オークション」は開始2ヵ月で、1日の出品数約1万点、落札額は4,000万円という規模になっている。
ネットならではのビジネスモデル
アマゾン・コムに代表されるECサイトの大半が、カタログ・ショッピングなど、今まであったビジネスをインターネットで置き換えたのに対し、ネット・オークションは、時間と距離の克服、情報の双方向性、といったネットの特徴を活かした新たなビジネスモデルを生み出した。
ネット・オークションの仕組みは次のようになっている。売り手はネット上のオークション・サイトで会員登録をすませた上で、売りたい品物の説明、品物の写真、品物の受け渡し方法などを登録する。その後は、同じく会員登録した複数の買い手が値を付け、競り上げていき、締め切り時点で一番高い金額を入札している買い手が落札する。品物の受け渡しや代金の支払いはオークション・サイトを離れ、売り手と買い手のあいだで行われる。利用者の大半は個人であり、オークション・サイトは一般に、出品手数料と成約時のコミッションを取る消費者 - 消費者(CtoC)の仲介型ビジネスモデルである。
扱われる品物はバラエティに富んでいる。イーベイでは約1,600種類のカテゴリーがあり、絵画やアンティークなど伝統的なオークション・アイテムや、映画のキャラクターグッズや切手などのコレクターズ・アイテムのほか、ベビーベッド、ビデオ、中古自動車など家庭で不要になった日常品も出品されている。
ネット・オークションが出現するまでは、個人がコレクションや不要になった中古品を売るには、ガレージセールや新聞の個人売買広告で売買するしかなかった。この方法の問題点は、自分の家の周囲でしか販売できないことだ。このためマーケットが限られ、売り手にとって不利な価格になりがちである。ネット・オークションでは、多くの人と膨大な品物をインターネット上で一堂に会することでこの問題が解決される。扱われる品物や参加者の数は、現実のオークションやガレージ・セールでは考えられないほど大きなものであり、純粋な市場原理に基づく価格形成が行われる世界が実現していると言えよう。
オークションはBtoCの新たな販売手法
このネット・オークションを企業も利用し始めた。
ニッチ商品を扱う小さな企業にとって、これまではセールスチャネルなりプロモーションが課題になっていた。これが、個人と同じように、ネット・オークションの人の集積を利用することで解決できよう。小額の手数料を払うだけでイーベイなどの仲介型オークション・サイトに出品することができ、趣味性の高い商品を扱っている中小企業にはオークション・サイトをメイン販売チャネルとしているところも多い。
また、余剰在庫の販売にもネット・オークションは効果的だ。シーズン末に残った商品やモデルチェンジが近い商品など、今までは固定的なプライスダウンで販売していた。これをオークション形式で販売することで、無駄な値引きをしなくても在庫を処分できる可能性が高い。パソコン販売のデル・コンピュータなど大手EC企業の中には、自社サイトにオークション機能を追加し、在庫を販売するところも出てきている
企業と消費者の双方にメリットをもたらすオークションが日本にも根づくかどうか、まずは仲介型オークション・サイトの動向に注目したい。
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