公共投資と防衛費支出
主任研究員 長島 直樹
2000年4月
目次
I.公共投資「性悪説」と社会インフラ
II.防衛費に消えていたら
III.30年続くとGDPは大差に
IV.シミュレーションの考え方
V.試算結果の詳細について
VI.試算方法の詳細について
要旨
1.従来型の公共投資は近年、非難の的になっている。景気対策の際に話題になる乗数効果も以前よりは縮小している可能性が高い上、硬直的な予算配分など問題は確かに多い。ただ土木中心の従来型公共投資も、長期的にみれば社会資本の形成を通じて民間部門の生産性向上に寄与してきたことは事実である。
2.高度成長期以降、このような公共投資を減額し、その分が例えば防衛費支出に消えていたとすれば社会資本の形成は遅れていた。結果的に生産性上昇率の低下を通じて成長率も伸び悩んでいた可能性がある。この効果は短期間には現れないが、20~30年といった長期間続くと顕著になる。
3.社会資本の生産力効果を推計すると、1970~1997年平均で「社会資本が1%増加すると民間資本の生産性は0.2%上昇する」という結果になる。公共投資の約6割が新たな社会資本形成に寄与する想定のもとで、公共投資の一部が防衛費に消失していたとする想定ケースをGDPベースで試算してみた。
4.1970年以降、日本の防衛費がGDP比約1%ではなく2%で推移したと仮定すると、97年の社会資本は実際よりも58兆円(15%)圧縮され、実質GDPは3.1~5.5%低下していたことになる。「平和の配当」は大きかったと言わざるを得ない。
5.中国は現在GDP比約5%の軍事費を支出していると言われるが、もし1%でも圧縮し、社会インフラの整備に回せば、その中長期的な効果は大きいことが想像される。中国の軍縮は中国自身の経済発展にとっても好ましいことではなかろうか。
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