設備年齢の動きと生産性に対する影響
主任研究員 長島 直樹
2000年4月
目次
I.問題の背景
1.短期の問題
2.中長期の問題
II.ヴィンテージの動き
1.計測方法
2.業種別ヴィンテージの動き
3.資産構成による修正
III.生産性に対する影響
1.分析の枠組み
2.実証分析の結果
IV.政策へのインプリケーション
V.今後の課題
要旨
1.1990年以降、TFP(Total Factor Productivity)が急低下し、付加価値成長率の低迷をもたらしている。同時に、ヴィンテージ(設備年齢)の急上昇が観察され、TFPの低下と密接に関連している可能性がある。両者を有機的に結びつける考え方として、「資本体化型技術進歩」の理論がある。これによってTFP成長率を要因分解し、ヴィンテージの影響を抽出することが可能になる。
2.ヴィンテージの上昇は概ねすべての産業で観測されるが、製造業においてTFPへの影響が深刻に現れている。中でも電気機械は鉄鋼、化学といった素材型産業よりもヴィンテージの上昇幅が小さいものの、TFPへのマイナスインパクトが大きい。これは、電気機械産業における技術進歩のピッチが他産業よりも相対的に速いため、投資抑制による設備の陳腐化も急速に進むためと解釈できる。
3.資本設備に関しては量的な過剰を問題視するだけでなく、質的変化と生産性・競争力の関連性にも注目すべきである。すなわち、設備の生産性・競争力を高めるべく、スクラップ・アンド・ビルドを通じて設備の若返りを図る方策が必要だ。参考になるのは1981年、米国で施行された「経済再建税法」である。資産耐用年数の短縮による加速償却は日本でも検討すべきではなかろうか。レーガン税制の「減税」ではなく「制度改革」の面を投資促進に生かす視点が重要だ。
4.「法人税そのものの減税を」という議論もあるが、それでは新規投資を行わない企業にも恩典が及ぶことになり、政策的な焦点がぼける。真に必要なのは、マクロベースの生産性向上に資するのは「利益を生み、且つ新規投資に前向きな企業」であることを再認識し、こうした「前進する企業」を生かし、増やす政策フレームワークを模索することである。産業再生や産業競争力を真剣に考えるなら、公共投資や中小企業向け政府信用保証枠の拡大など財政頼みの議論からは早急に脱却すべきである。
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