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米銀のリテールデリバリーチャネル最新動向

主席研究員 田邉 敏憲

2000年1月

要旨

このほど銀行部門資産全米一のBOAをはじめとして、米銀のリテール業務の最新動向を視察した。各銀行とも提供する金融商品での差別化は難しく、その提供、デリバリーの仕方・サービスの差が決め手になるとの認識である。金融商品のデリバリーチャネルも、他の小売・サービス業と同様に、大きく分けて「face to face」・「voice」・「screen」の3方向で大きく展開中である。

「face to face」チャネルとしては、各銀行ともにスーパーマーケットをはじめ、コーヒーショップ、ファーストフードなどのストア内に設置する「インストア・ブランチ」のウエイトを急速に高めている。その数は全米で数千店に達しており、全国で50店程度のわが国の状況とは対照的である。

最大の特徴は、4~5名の少数スタッフで運営されているものの、伝統的店舗(約10名)と全く同レベルのIT関連ハード機器を設置し、情報系インフラを構築しているため、貸金庫サービスを除き提供できる金融商品等は同レベルなことである。建設コストは既存店タイプで平均100万ドルとされるが、「インストア・ブランチ」はその4分の1~半分で済み、運営コストも安い。むしろ伝統的店舗が専ら受け身の運営であるのに対し、「インストア・ブランチ」のスタッフはスーパーマーケットなどの客に対し、積極的に金融商品のセールスを行っている。また平日午後7~8時まで、土日も4~5時まで窓口を開けているところが一般的で、大きな成果となっているようである。次のようなチャネルとの比較での有人店舗の役割は、株式・MMFの販売やsmall business(中小企業)取引などにおけるfinancial advisor機能、あるいは年配者のニーズが高いコミュニケーションの場として残るとの見方が多い。

「voice」チャネルのコールセンター、テレフォン・バンキングも十分に整備されている。抜群に強いテレセールスのノウハウを誇り、1日24時間で平均500万件の処理を行うKey Corp.では、テレセールスからの収入は98年中、960店舗からのリテール収入の約3分の1に相当する約7億ドルに達した。200名のテレセールススタッフが350店舗相当の機能を果たしているとの自己評価である。共働きの若いカップルなど忙しくて店舗に足を運ぶ余裕のない人達にとって、簡単に使えて、便利なチャネルであるゆえにテレセールスが伸びているわけで、生活様式の変化が背景にある。

こうした米国内で急速に進む職業・雇用・勤務形態の変化、あるいはサービス社会化、ハイテク志向の強まり等を映じた、銀行サービスに対する顧客ニーズの大きな変化は、さらに「screen」チャネルとしてのインターネット(オンライン)・バンキングの利用を急増させている。数年間にわたり積極的なキャンペーン等を行ってきたWells Fargoでは、この8月央にインターネット顧客が100万人を突破した。またBOAでも、積極的な広告宣伝は行わなかったが、インターネット・バンキング熱の高まりから、その顧客は増大しており、現在150万人に達している。

米銀では、small business取引についてもリテールデリバリーチャネルの延長線上に位置づけている。small businessとは年商1,000万ドル未満の企業であるが、そのCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)は個人顧客対象の「screen」チャネルをそのまま利用できる。個人向け以上に高度な財務サービスであるsmall business serviceの提供には、むしろこのオンラインバンキングが不可欠なツールとなっているわけである。

このように各銀行ともに3種類のリテールデリバリーチャネルのラインアップを急いでいるが、これは、以上のような流れのなかで、個人顧客が手数料の節約等から1行取引に集約しつつあることへの銀行側の対応という面も大きいようである。

こうしたデリバリーチャネルの構築には膨大なIT投資を要するだけに、投資負担に耐え得るようスケールメリットを狙った合併・買収を促す一因にもなっている。また買収や合併に際しては、システム面での統合の容易さや、双方のシステムの相互補完性も大きな判断基準となっている。例えば、年間20億ドル以上のIT投資を続け、全米一のCMS提供会社となっているBOAでは、旧BOAと旧ネーションズの合併効果として、それぞれのシステムの相互補完によって年間30~35億ドルから20億ドルへとIT投資額を節約できることになった点を強調している。こうした投資によりBOAが既に構築しているリアルタイムでグローバルキャッシュ管理が可能なシステム(Global Banking System)は他行にとって高いハードルとなっており、新規に参入するのは難しいとされる。可能とすればむしろマイクロソフトやATTなど他業種からの参入との見方である。

ところで米国でIT利用によるデリバリーチャネルがうまく機能している背景として、年金受給番号であるSocial Security Numberの定着がある。これに基づくクレジット・ビューローへの個人信用情報蓄積と、その情報を金融サービス業界全体で利用できることが新規の個人ローンでさえvoiceやscreenチャネルで迅速に実行できる仕組みをもたらしている。テレフォン・バンキングによる新規の個人ローン申込み客に対しても、20~30分で可否を判断できるほどである。米国では各種個人ローンが大いに利用されているが、家計部門の貯蓄不足によるだけではないわけである。

翻ってわが国でも、個人ローンを含めて簡便・安価で迅速な金融サービスの提供を可能とし、あるいはベンチャー企業などへの投資資金であるリスクマネーを増強するためにも、年金受給番号の金融取引や税制面での活用が急務のように思われる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 米銀のリテールデリバリーチャネル最新動向 [108 KB]