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世界の地域熱利用システムの現状と日本の課題

主任研究員 武石 礼司

1999年10月

本文

地域熱利用システム普及と高度化の必要性

地球温暖化防止のためにCO2排出量の抑制が求められているが、民生用のエネルギー消費(業務用と家庭用を含む)から生じるCO2排出量の削減手段として、地域熱利用システムの普及促進とその高度化が効果的である。日本では、現在、一次エネルギーの3分の2が有効利用されないまま熱として捨てられているが、地域熱利用システムの導入は、特に民生用部門においてエネルギーの利用効率を大幅に高め、省エネをもたらす。ヒートアイランド現象と言われるように、熱消費の密度が高い都市部において個別の冷暖房システムを利用していたのでは局所的に排熱が集中し、しかも、エネルギーロスが大きくなるばかりであり、都会に人が住み続けることが困難となる状況すら予測されるようになってきている。こうした問題を解決するためには、熱需要が大きい都市部において、温熱と冷熱の両方を効率的に利用できる地域熱利用システムを普及させることがたいへん有効である。

熱利用を高度化するシステムとしては、熱と電気を併給するコージェネレーション・システムがあるが、このコージェネの導入に加えて、地域熱供給システムを導入すれば、エネルギーの利用効率を更に高められる。地域熱供給は、1ヵ所あるいは複数ヵ所のプラントから、複数の建物に向けて配管を敷設し、冷水・温水あるいは蒸気を送付して冷房・暖房を行うシステムである。近年は、熱供給に加えて、地域冷房に対する需要が各国において増大してきており、年間を通じた冷暖房需要に対応していくこと(=空気調和)が求められるようになってきている。

日本での導入状況

日本の地域熱供給の導入件数は134件(1999年7月稼動済み)であり、普及の面で欧米諸国に比べて遅れていると言わざるを得ない。日本の地域熱供給事業者は、従来から、国等の補助制度を受けるとともに、熱・蒸気・冷水の供給コストを押さえることで、何とか導入件数を確保してきた。今後は、米国企業で見られるように、都市形成の中核となるインフラ作りを目指して、技術革新力とマネージメント力を備えた産業となっていくことが期待される。

欧米での導入状況

米国では、地域熱供給が100年以上前から導入開始されており、電力、ガス等の異なるエネルギー分野との厳しい競争の中で、地域熱供給事業においても、買収・合併・異業種の参入等を繰り返しながら産業として発展してきた歴史がある。米国では、採算性の向上のために、燃料選択と機器選択の工夫が行われるとともに、顧客のエネルギー使用を合理化するための多彩なメニューの提供が行われている。

一方、欧州では、特に、デンマーク、フィンランド、ドイツ(特に北部)、フランス(パリ地区)、スウェーデンにおいて地域熱供給の導入が進んでいる。英国でも現在急速に導入が進みつつある。

地域熱供給システムの導入に向けて

日本での地域熱供給システムの普及促進と高度化の進捗のためには、電力部門における自由化が進む中で競争原理が働いて、売電および電力託送の採算性が向上し、その結果、地域熱供給事業の余剰電力販売量も増大して採算性と競争力が高まることが望まれる。

今後は、地域熱供給事業は、システム産業として、個別の発電・給熱プラントをネットワーク化し、更に、複数の地域熱供給システム間の運転最適化を試みることが必要であり、事実、この方向に向って徐々に動き出している。以上の動きに加えて、防災面から見ても、特に阪神大震災後の教訓として、自立型の防災拠点を多数確保しておく重要性が認識されており、地域熱供給は、エネルギーの地域自立性を高め、エネルギー安全保障の向上にも貢献できるシステムとして導入が進みつつある。

都市は、人々が住みながら歴史的に育んでいくものであり、都市自身が成長し、発展していくと見ることができる。多くの人を引き付け、魅力ある都市としてあり続けるためには、エネルギー利用の高度化を図り、住み心地を良くしていく努力が欠かせない。昨今は、産業面では、世界を単一市場とするような企業間の競争が生じているが、その一方で、どの都市に住みたいか、魅力があり、しかも、居住コストも安い都市はどこかという競争が世界中の各都市間で開始されていると見ることができる。北米と欧州に先んじられているが、日本でも地域熱利用システムの導入促進と高度化による都市機能の充実とアメニティーの向上は緊急の課題と考えられる。


注)本研究の詳細に関しては、当経済研究所の研究レポートNo.57「世界の地域熱供給システムの現状と日本の課題」(1999年7月)を参照願いたい。また、コージェネ導入の可能性については、研究レポートNo.30「注目を集める日本のコージェネ事業の経済性と将来展望」(1998年4月)を参照されたい。(資料請求先 : E-mail: takeishi@fri.fujitsu.com)

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 世界の地域熱利用システムの現状と日本の課題 [124 KB]