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生命保険会社におけるDWHビジネス・モデル

金融コンサルティング事業部 上席研究員 大本 秀樹 / シニアコンサルタント 西村 尚純

1999年7月

本文

生保DWHビジネス・モデルの概略

近年、データウェアハウジング(以下DWH、本稿で言うDWHはエンドユーザの意思決定のために基幹システムからのデータを情報に変換し、知識へ発展させる仕組みと定義する)関連の技術やツールが急速に進歩している。DWHは、幅広い業界で導入検討が進んでいるが、金融業界も例外ではない。なかでも生命保険業界においてはDWHの適用領域が拡大傾向にあり、DWHに対するニーズが急速に高まっている。

この背景として金融ビッグバンが進展する中、ほとんどの生保会社において既存契約の解約増加や新規契約の低迷、あるいは含み益の減少などに悩まされていることが挙げられる。生保各社では今後の生き残りに向け、既存顧客の囲い込みや新規顧客の獲得が急務となっているが、もはやこれまでのような営業職員のみに頼るやり方には限界があることを認識し始めている。このため、生保各社においてはマーケティングの必要性が高まりを見せ、その一環としてデータベース(DB)による顧客情報管理をもとにしたDBマーケティングを可能にするDWHに注目が集まってきたのである。

しかし、現状を鑑みればDWHツールの機能やハードウェアの性能のみが注目され、具体的にどの生保業務に適用可能で、いかに利用するのかを明確に示したロードマップ的なものは、ほとんど存在していない。本稿ではDWHビジネス・モデルと呼ぶ新たな概念を作成、それをもとに現行生保業務へのDWH適用可能性を探って見る。

ここで言うDWHビジネス・モデルは、生保業務を『PLAN』 - 『DO』 - 『SEE』(以下『企画』 - 『実施』 - 『評価』と表現)のビジネスサイクルに分解し、さらにバランスシートから見た切り口でコアプロセス(販売と運用)と、マネジメントプロセスに分けてモデル化したものである。DWHは、上記2プロセスにおける意思決定をサポートする。本稿では販売業務のDWHビジネス・モデルを取り上げ、ビジネスサイクルから販売プロセス機能を考察する。同プロセスは新規顧客の契約締結プロセスと契約締結後のプロセスの2つに分けられる。

まず契約締結までのDWHビジネス・モデルを『企画』 - 『開発』 - 『評価』のビジネスサイクルで捉えて見る。『企画』ではプロモーションが、『開発』では新規チャネル開発や新商品開発、『評価』では顧客やチャネル、商品の分析と施策結果の評価などの機能が中心となる。次に契約締結後のDWHビジネス・モデルを考えると、『企画』および『開発』では、顧客ニーズを掴むことによる新チャネルの開発や、新商品開発などの機能が該当する。新規チャネルや商品・サービスを提供した後、顧客の行動や反応を『評価』した結果は『企画』へフィードバックされる。顧客ニーズの変化に迅速な対応をしなければ、競合他社に顧客を奪われる可能性が大きいからである。

生保業務におけるDWH適用

次に販売プロセスにおける意思決定サポート業務とその機能を見出すことにする。同業務は、企画サポート・評価サポート・販売サポートに分けられる。

企画意思決定サポート業務は、他社の商品販売動向・人口動態などの外部環境と自社商品の売れ筋・支社別の業績などの内部環境を把握し、新商品開発や顧客ターゲットの選定といったマーケティング戦略の検討を支援する。DWHツールによる意思決定サポート機能として、内外環境にかかる実績データを時系列で分析する機能(保険契約推移や保険解約推移など)、および複数軸から分析する機能(主契約別、特約別など)などが挙げられる。

評価の意思決定サポート業務は、企画・販売業務を円滑に遂行させるため顧客・チャネル・商品の分析を行い、その評価を企画業務・販売業務に反映させる。DWHツールによる意思決定サポート機能として、商品のコスト分析や顧客のロイヤリティ分析などにおける実績データを時系列で分析する機能などがある。

販売の意思決定サポート業務は、顧客との会話において顧客取引の照会や商品情報の照会などを行い、営業現場における事務処理をすみやかに遂行させる。DWHツールから見た意思決定サポート機能として、実績データを時系列で表示する機能(ライフサイクルとイベントに対する保険リスク額推移など)や複数の切り口から表示する機能(個人別や世帯別、商品別など)などが挙げられる。このように、販売プロセスにおける意思決定サポート業務でDWHツールが効果的な役割を果たす可能性が高いが、実際には販売プロセスに止まらず運用プロセスや経営プロセス、あるいはコールセンタなど新規業務に対してもDWHの適用が可能と判断される。

FRIでは、それぞれの生保業務ビジネス・モデルで検討したDWHの適用領域を実証するために、OLAP(オンライン分析処理)やデータマイニング技術(蓄積した大量のデータの中から隠れた規則性や法則性を見出すプロセスであり、主な手法としてアソシエーションやクラスタリングがある)を用い新規業務でのDWH適用実証として生命保険会社コールセンタの実データ分析試行を実施した。

分析試行におけるテーマは、(1)解約防止顧客、(2)契約者貸付問い合わせ顧客、(3)苦情申し出顧客、そして(4)同一顧客からの複数回電話、の4つであるが、これらは生保業界の現状問題点やヒアリング結果などを総合的に加味して決定した。いずれの分析結果からも興味深い事実が判明したが、とりわけ解約防止顧客の分析では、解約防止には特定のオペレータが持つスキルが重要な役割を果たしていることが明らかになった。FRIでは、意思決定サポート業務における同ツールの有効性が確認できたものと判断している。なお、同分析試行の詳細は『FRI研究レポート』No.53を参照されたい。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 生命保険会社におけるDWHビジネス・モデル [68.3 KB]