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早急な事業効率化を迫られる航空運送業界

主任研究員 木村 達也

1999年7月

本文

競争激化から収益に厳しさを増す航空運送業界

わが国の航空運送業界は国内線、国際線ともに競争激化が進んでいる。この状況を運賃動向にみると、わが国主要3社(日本航空 : JAL、全日本空輸 : ANA、日本エアシステム : JAS)計のイールド(有償旅客キロあたり収入。旅客1人の1キロメートルあたりの輸送で得られる収入)は98年度上半期に低下が加速し、国内線は前年度同期比4.6%減、国際線は同7.0%減となった。同様の傾向は下半期も続いているとみられ、国内線の東京国際(羽田) - 新千歳(札幌)線と大阪国際(伊丹) - 福岡線では、搭乗前日まで予約が可能な特定便割引が便数の各約70、55%に設定され、運賃割引率も最高4~5割に達した。また国際線のニューヨーク - 東京線のエコノミークラスでは、12月に新規参入したコンチネンタル航空が、米国発着の往復航空券を就航記念ながら正規料金の1割強で販売し、他の各社も2割程度での販売を行った。

各社の収益は、こうした運賃低下を輸送量の増加で補うことができず98年度も営業利益では減益、赤字など厳しい状況が続いたとみられる。

規制緩和、新会社の参入、日米航空交渉の暫定合意が背景

このような競争激化は、(1)規制緩和、(2)国内線での新航空会社の参入、(3)国際線での日米航空交渉の暫定合意、を背景としている。

わが国航空運送業界は、需給調整条項を伴う路線免許(航空サービスの需給が不均衡にならないと運輸省が判断した場合のみ路線毎に新規免許が与えられる制度)や認可制運賃などの規制のもとにある。また航空憲法(70年閣議了解、72年運輸大臣通達「航空企業の運営体制について」)によりJALは国際線と国内幹線、ANAは国内幹線・ローカル線、JAS(旧東亜国内航空)は国内ローカル線と事業領域が定められていた。しかし日米航空交渉などを経て、85年に航空憲法が廃止されるなど規制緩和が進められ、94年以降は価格面にも規制の緩和、撤廃が拡大し競争が促進された。

国内線での新航空会社は、羽田空港での新滑走路完成による97年7月からの発着枠増加を契機に、低運賃での運航を目指し設立された。このうちスカイマークエアラインズ(スカイマーク)が主要3社系列を除く航空会社としては35年ぶりに事業免許を受け、98年9月から羽田 - 福岡線で運航を開始した。また北海道国際航空(AIR DO)も12月から羽田 - 札幌線に参入した。

日米航空協定は、52年に締結されその後数回の暫定合意により改定されてきた。しかし、参入企業数などでわが国に不利な協定であったことから、95年以降さらなる改定を巡り日米間で交渉が持たれ、98年1月に暫定合意に達した。これにより、形式的には日米間の航空権益格差は是正された。しかし日米双方の企業数増加により均等化が図られた参入企業数では、わが国に新規参入企業が存在しないなど、実質的には米国の優位性が増す結果となった。暫定合意後、日米線で新たな企業の参入、新規路線の設定、増便が行われている。この結果座席供給数は増加し、運賃低下も加速している。

急がれる高コスト構造、サービスの改善

スカイマークは99年4月から伊丹 - 福岡、伊丹 - 札幌線にも就航した。また航空法の改正により規制緩和はさらに進展し、2000年2月には需給調整規制が廃止され運賃も認可制から事前届出制へ移行する見込みである。さらに羽田空港の新B滑走路の完成(2000年予定)、新東京国際(成田)空港の平行滑走路(計画)による輸送能力増加もある。また世界の主要航空会社は、利便性などサービス強化を図るため大規模な提携(メガアライアンス)により、3~4グループにまとまる方向にある。したがって、今後競争はさらに激化するとみられる。

こうした競争に勝ち残るためには、わが国航空会社は高コスト構造を改善し、利便性などサービス面でも国際的競争力を備える必要がある。70年代から進んだ規制緩和による競争激化のなか効率化を進めた米国企業などに比べ、わが国企業は整備費や販売手数料などのコストが高い。各社は98年にリストラ計画を策定、実施したが、JAL、ANAは1年でより踏み込んだ計画への改定を余儀なくされており、収益構造改善の緊急性は高い。またコストの引き下げには諸外国の3倍程度である着陸料、航行援助施設利用料などの公租公課の引き下げも必要である。99年4月から地方空港の着陸料は引き下げられたが、更に主要空港での大幅引き下げや地方空港の追加引き下げが必要である。

またANAが99年10月からメガアライアンスの1つスターアライアンスへ参加するように、ネットワークの増強や、搭乗距離により無料航空券をプレゼントするFFP(フリークエント・フライヤーズ・プログラム)などの利点強化も重要である。

こうした航空運送業での競争力強化には、第1次石油危機以降に競争が激化した外航海運業で採られた対策が参考となる。わが国外航海運企業は、便宜置籍船に外国人船員を配乗することによるコスト削減、コンテナ定期航路での国際的提携(コンソーシアム)でのネットワーク拡大などにより競争力を回復した。航空各社も、同様な徹底的合理化、サービス向上策を早急かつ確実に行う必要性があろう。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 早急な事業効率化を迫られる航空運送業界 [109 KB]