ハビビ政権の安定性とインドネシア経済の回復
主任研究員 杉浦 恵志
1999年1月
目次
はじめに
I. スハルト退陣劇の真相
1. 国軍主導の通説
2.ハビビ・プラボウォ主導のクーデター
3.権力基盤の不安定要因
II. 経済再建の見通し
1. 財政政策と対外累積債務
2.金融システムの再建と対外累積債務
3.疑わしい債務返済能力
4.徳政令なくして回復なし
III. ハビビ政権の安定性
1. 国軍における権力闘争
2. 財源問題とスハルト資産
3. 総選挙までの政局
要旨
1.本稿は、インドネシア経済の回復見通しを、政治的安定性およびマクロ政策の持続性の観点から評価するものである。
2.ハビビはスハルト退陣によって棚ボタ式に大統領になったのではない。ハビビとスハルトの間には早くから確執が認められ、就任後は冷遇期間に準備した政策構想を矢継ぎ早に実施している。それに対し、国軍主流派がスハルト退陣劇の主導権を握っていたとは考えられず、当面はハビビを追い詰める余裕などない。しかし、ハビビの権力基盤を突き詰めると、国軍主流派以外に最後の拠り所は見当たらず、ウィラントが国軍内部の権力闘争に敗れれば、ハビビは窮地に立たされる。
3.ハビビ政権の緊急経済対策は、為替相場の安定や金融システムの健全化、低所得層の生活保障などやるべきことをやっている。けれども、積極財政のツケは公的対外債務の増加にしわ寄せされている。結局、膨らみ続ける対外債務の返済は財政を圧迫し、いずれ回復過程は失速する。対外累積債務は、たとい誰が大統領になっても避けられない制約条件であり、本気でインドネシア経済の奇跡的復活を期待するのなら、日本政府や邦銀、商社などは徳政令を迫られることになろう。
4.特別国民協議会をめぐり学生運動が活発化しているが、5月同様政治変革の主役にはなりえない。99年6月の総選挙に向けた政界の再編は既に始まっており、スハルトに抑圧されていたゴルカルやPPPが劇的な方向転換を演じて、イスラム穏健派とイスラム急進派を軸にした連合が対峙する図式になるだろう。前者が勝てば経済安定化と民主化が進み、後者が勝てば後退する。しかし、選挙に取り残されたイスラム小党や国軍プラボウォ派が、学生や兵士を挑発して大規模な動乱を惹き起こし、戒厳令を敷く最悪シナリオも否定できない。
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