日本経済 : 危機からの脱却
経済産業チーム*
1998年10月
目次
I. 危機に直面する日本経済
1. 高まるデフレスパイラルのリスク
2. 政策の選択肢
II. 金融仲介機能の再生に向けて
1. 貸し渋りは生じているのか
2. 貸し渋りが設備投資に与えた影響
3. 貸し渋りの原因
4. 貸し渋りへの処方
III. 金融政策に出番はあるか
1. 消費はインフレ期待で増加するか
2. マネーサプライが物価に影響するか
3. 中央銀行はマネーサプライをコントロールできるのか
4. 金融政策は何をすべきか
IV. 税制改革のあり方
1. 7兆円減税の骨格と政策効果
2. より大胆な直接税減税と税制改革案
付録.
潜在GDPの推計方法
要旨
1.日本経済は、物価下落と需要減少が連鎖的に起こるというデフレスパイラルに陥るリスクが高まっている。需給ギャップは、現時点でおよそ40兆円に達し、大きなデフレ圧力となっている。最近の物価上昇率と失業率のトレードオフ関係(フィリップスカーブ)を前提とすると、消費者物価は今後さらに下落する可能性が高い。
2.危機の本質的な要因は、不良債権の拡大により銀行の金融仲介機能が不全をきたしているという点にある。銀行の整理再編を行い、金融不安を解消することが最も重要である。また、デフレスパイラルを回避するという観点から、金融・財政面から新たな政策を発動する必要性が高まっている。
3.いわゆる調整インフレ政策については、それ自体が需要刺激効果を持つかどうかは明らかではない。しかし、財政政策の効果を確実なものとし、同時に金融機関の不良債権処理が少しでもスムーズに行える環境を整える意味でも、日本銀行は量的緩和姿勢を継続、強化することが求められている。
4.財政面で現在最も必要とされる政策は、短期の需要を刺激し、かつ中長期的にみて勤労意欲を高めイノベーターを刺激するという意味から、所得税・住民税の抜本的な改革を進めることである。具体的には、最高税率を40%に引き下げ、税率も4段階に簡素化すべきである。同時に将来の望ましい税体系(直間比率)と財源確保の方策を示し、段階的に移行していくためのビジョンを示すことで、将来に対する不安感を除去する必要がある。
* 本研究は以下のメンバーで行った。主任研究員 米山秀隆(総括)、同 長島直樹、研究員 大石邦弘、同 絹川真哉、研究員補 長滝谷瑞穂、客員研究員(明治大学助教授)勝悦子。
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