公的セクターの役割とその再検討
- 公的セクターの役割についての理論的整理 -
立命館大学助教授 小塩 隆士
1997年10月
目次
はじめに
I. 公的介入に根拠はあるか 「市場の失敗」の再検討
1.公的介入の根拠としての 「市場の失敗」
2.費用逓減と技術革新
3.公共財の範囲の見直し
4.外部性、コースの定理、取引費用
5.市場の不完備性と市場の創出
6.情報の非対称性と市場による解決策
7.所得再配分はどこまで必要か
8.濫用すべきでない「市場の失敗」という根拠
II. マクロ経済政策の有効性 財政政策を中心に
1.マクロ政策論争
2.例外的だった日本の財政拡張策
3.公共投資拡大の問題点 需要サイドから見た場合
4.公共投資拡大の問題点 供給サイドから見た場合
5.「世代会計」の視点
III. 市場の失敗」の原因と解決策
1.「市場の失敗」と「政府の失敗」
2.公共選択の理論
3.エージェンシー理論
4.ニュー・パブリック・マネジメント(NPM)理論
5.「一般理論」が存在しない行政改革
IV. 行政改革の主要概念 その理論的側面
1.行政改革の理論的基礎づけ
2.エージェンシー化
3.アカウンタビリティ
4.疑似市場原理の導入
5.地方分権
おわりに
要旨
本稿の目的は、公的セクターの機能に関するこれまでの理論的な論議を整理し、公的セクターの役割を再検討することである。本稿の論点は次の3つに要約される。
第1に、「市場の失敗」を論拠とした公的セクターの存在理由の説明は、絶えず見直していく必要がある。「市場の失敗」の内容は経済的な与件の変化によって変質するからである。公的介入の根拠を「市場の失敗」に求めようとする場合には、(1)本当に「市場の失敗」が存在するのか、そして、(2)仮にその存在が認められたとしても、その弊害を公的介入によってどの程度軽減でき、また、そのためにどの程度のコストが必要になるのか、という点をつねに認識しなければならない。
第2に、マクロ経済政策の有効性についても再検討が必要である。特に、公共投資政策については、経済全体の生産性の向上につながっていない可能性もあり、供給サイドから見た見直しが必要となっている。また、高齢化・少子化の進展は、財政政策の効果を世代ごとに評価する重要性を高めている。
第3に、公的セクターの役割の再検討に際しては、公共選択の理論、エ - ジェンシー理論やニュー・パブリック・マネジメント(NPM)理論からのアプローチが有用である。ただし、実際の行政改革を進めるに当たっては、これらの理論の一つだけに依存することはできず、複眼的なアプローチが必要となる。
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