東アジアの国際金融センター
主任研究員 村上 美智子
1997年10月
目次
はじめに
I. 東アジアをめぐる国際資本移動の変化
1.資本流入の順調な拡大
2.資本形態の変化
3.域内における資本移動の増加
4.後発アジア諸国への投資拡大
II. 新たな展開を示す伝統的な国際金融センター
1.香港
2.シンガポール
III. 転機を迎えた後発オフショア市場
1.市場創設の背景とオフショア制度の概要
2.市場規模の拡大と短期対外債務の増加
3.タイ通貨危機の発生と周辺諸国への波及
4.今後の展望
IV. 香港、シンガポール両センターのさらなる機能向上にむけて
要旨
1.東アジアにおける国際資本移動は、80年代後半以降、高成長の持続を背景に資本流入が量的拡大を示すとともに質的にも変化し、資本形態について公的資本から民間資本へのシフトが進展したほか、域内資本移動が増加するなど移動経路についても大きく変化した。こうした変化は、主に域内においてNIEsが投資国として台頭する一方、ASEAN、次いで中国が投資受け入れ国として浮上してきたことから生じた。
2.東アジアの伝統的な国際金融センターである香港、シンガポールでは、国際資本移動が変化するなかで、中国、ASEANにおける膨大な資金需要の発生を受けて広がりと深さを増し、地位向上を実現した。近年、香港で自由放任を旨とする伝統的なレッセフェールを修正する動きが顕著となる一方、シンガポールではより広範な地域の資金仲介機能を担いゆく姿勢が強まっている。
3.90年代に入ると新しい国際金融センターをめざす動きが活発化し、マレーシア次いでタイにオフショア市場が創設された。これら後発市場は急成長したものの、同市場を経由した短期資本の流入急増が国内経済を不安定させる結果となったため、金融システムにおける位置づけの検討が望まれる状況にある。
4.香港、シンガポールでは、一連の通貨不安を契機に東アジアの景気動向について不透明感が高まっているほか、国際資本移動についてラテン・アメリカ諸国や東欧諸国が東アジアにとって競合する資本流入先として浮上していることもあり、国際金融センターとしてさらに洗練度を高め域内への金融仲介に一段と大きな役割を果たしていくことが求められている。
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