日本経済の高コスト構造
日本経済研究センター理事長 香西 泰
1997年7月
目次
I. 第1次大戦後の高コスト問題
1.第1次大戦後の経済動向?物価割高の継続
2.コスト問題の所在と対応?輸入代替定着への努力
3.高コスト是正とマクロ政策?揺れ動く政策の軌跡
II. 朝鮮戦争後の高コスト問題
1.朝鮮戦争前後の経済情勢
2.高コスト問題の所在と対応
3.高コスト是正とマクロ政策
III. 歴史的先例との比較で見た最近の高コスト問題
要旨
日本経済が高コスト問題に直面した歴史的先例として、(1)第1次大戦後、(2)朝鮮戦争後の2時期を取り上げ、当時の経済情勢を省みる。
第1次大戦後においては、国際的に比較して日本の戦時中の物価騰貴は大きく、戦後の物価低落は小さかったので、物価割高=実質円高が現出した。そうした状況が長続きしたのは戦時中の対外黒字=在外正貨の蓄積の支えがあったためである。朝鮮戦争後においても物価上昇が国際的に見て特に大幅であり、実質円高の状態が特需に支えられて持続した。こうした状況の下で、いずれの場合も輸出財の競争力喪失、輸出構造の転換の遅れが懸念され、高コスト問題が重要政策課題となった。
これに対しては先ず産業合理化による対処が図られた。朝鮮戦争後においては高炭価・高鉄価問題に対して石炭、鉄鋼の合理化が進められた。後者は成功したが前者は失敗し、石炭から石油への転換によってエネルギー・コストが削減された。
またマクロ面では在外正貨や特需が底をついた段階では、金解禁や1兆円予算など緊縮政策が発動された。金解禁の失敗は高橋財政による円安をもたらし、これによって高コストの解消が図られたが、朝鮮戦争後は円レートを維持する中で高コストが解消された。
これに対比すると、今回の高コスト問題は、輸出財と言うよりは国内財や生産要素の価格の割高を中心としており、輸出の不振よりは国内投資収益の低下、資本の海外流出が懸念されている点に特徴がある。
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