ネットマーケティング実践講座
第1回:新規顧客開拓のためにインターネットマーケティングを活用せよ!
富士通総研 田中秀樹
Webページで自社が開発した技術を紹介したら、海外から注文が来た。まるでテレビCMのようだが、これは実際の話だ。マーケティングツールとしてインターネットを活用する「インターネットマーケティング」は、今まで話題先行の側面も大きかったが、最近では成功事例も増えている。企業を取り巻く環境が厳しくなる中、インターネットマーケティングが重要な生き残り策の一つとなり、注目されている。今回は、インターネットマーケティングの活用対象と、それに伴う重要なポイントを紹介していく。
Webサイト経由で6000万円の新規受注
最初に日本国内のインターネットの利用状況を確認しておこう。インターネットの視聴動向を調査するネットレイティングスによると、パソコンを使ってインターネットにアクセスしている人は2月時点で3,828万人にのぼる。さらに、パソコンを使わずにiモードなど携帯電話のインターネットサービスでアクセスしている人を加えると4,994万人となり、人口の約4割に達する。
一方、大企業から始まった企業のインターネットの活用は、中小企業でも当たり前のものとなった。商工中金が昨年8月に実施したアンケート調査結果によると、中小企業のインターネット導入率は8割を超えており、自社のWebページを持っている企業も全体の半数になっている。


単にインターネットを活用する企業が増えただけでなく、成功事例も出始めた。企業向けマーケティングの事例だが、制御装置などを製造している山城精機製作所は、Webサイトに英語の技術情報を掲載したところ、海外から6000万円の受注に成功した。同社の独自技術を生かして、特殊な装置製作を設計から行う仕事を請け負ったものだ。現在のネット経由の受注は年商25億円の5%に過ぎないが、新規商談の3分の2を占めており、同社にとっては欠かせない顧客開拓の手段となっている。
インターネットマーケティングの4つの活用範囲
インターネットマーケティングは、商品を開発し、商品の認知を広め、販売、そして販売後の顧客をフォローする、というマーケティング・プロセスのすべてが対象となる。
- 「商品開発」では、多様化した消費者ニーズをスピーディに把握することが求められており、短期間に実施できるインターネット調査が有効なツールとなっている。
- 「広告・販売促進」。効率的なプロモーションを行うためには、効果測定が欠かせない。マス広告と異なり、インターネット広告は速く低コストで効果測定が可能だ。
- 「販売」では、ネット上で販売を行うECの市場が拡大しているし、ネットと実店舗を連携させたクリック&モルタルも効果を上げている。
- 「顧客サポート」。商品を販売したら終わりでなく、商品を販売した後の、顧客との関係を維持・強化することが重要であり、その手段としてインターネット上のコミュニティサイトや電子メールが注目されている。
マーケティングでは「顧客中心」の考え方が重要
消費者の行動や、企業の取引関係は大きく変化しており、今までのような作れば売れるという受け身の市場は望めない。系列会社から仕事を受注してきた下請けの企業でも、今後は系列会社からの安定した受注が望めず、新規の顧客開拓を迫られているところが多い。
そのため、マーケティングの重要性が増しているのだ。マーケティングを行うにあたって大切なことは、製品ではなく顧客を中心に考えることだ。顧客ニーズをしっかり把握して、顧客が求める価値を提供する。この実現にインターネットが役立つ。
インターネットは低コストで情報発信が可能なメディアであり、会社や商品の紹介など顧客に直接語り掛けやすいツールだ。また、顧客の声を聞きやすいという双方向メディアのメリットもある。この特徴を生かすと顧客ニーズが効率良く把握できる。
ソニーのECサイト「ソニースタイル」は、約1ヶ月限定でパソコンの「バイオ」に関する質問を電子メールで受け付けた。送られてきた数千ものメールに返信したところ、回答を受け取った人のうち40%がパソコンを購入し、月間売上高を更新したという。消費者の声を聞き、ニーズにあった商品を選んで推薦したことが販売に結びついたといえる。
また、メーカーが考えた商品を押し付けるのではなく、消費者が製品の仕様を決めるビルト・トゥ・オーダー(BTO)もパソコンや自動車で始まった。衣服のオーダーメード等、たった一人の注文に対応する商品は以前からあったが、パソコンや自動車といった大量生産のオーダーメードはコストの問題から事実上実現できなかった。しかし、インターネットを使うことで、より多くの人のニーズに合わせて低コストで大規模に展開する「マスカスタマイゼーション」が可能になっている。
既存ビジネスとの組合せが新たな効果と価値を生む
最初は物珍しさもあり、インターネットマーケティングを始めれば話題になった時期もあったが、今は違う。単にWebページを開設したり、インターネットマーケティングを実施したからといって、それ自身に独自性や競争力はない。
顧客を中心に考えながら自社ビジネスの強みを見極め、そこにインターネットマーケティングを組合わせていかないと成功は望めないだろう。
この文章は、雑誌「PC-Webzine」2002年5月掲載記事に、一部加筆したものです。
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