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米国2000ホリデイシーズンECレポート
存亡かけるピュアプレイヤー対飛躍をねらうマルチチャネル

米国の消費者向けEC業界にとって、一年で最も重要なホリデイシーズンがはじまった。売上げ予測は前年比70−100%増と明るいが、昨年派手なTVコマーシャルを競ったピュアプレイヤーの多くはすでに脱落し、かろうじて踏みとどまった企業も、今年の結果次第で早々に同じ道を辿る運命にある。一方、これまで脇役に甘んじていたマルチチャネル企業は、この機を捉え飛躍できるのか。ホリデイシーズンECの前半戦の状況を昨年と今年を対比しながら、各種データをまじえてレポートする。(富士通総研 倉持真理 2000年12月20日)

一変した顔ぶれ:激動の玩具EC分野

昨年と今年のホリデイシーズンの違いは、企業の顔ぶれに顕著に表れている。一説によると、ECを含むインターネット・ビジネスで、今年消えていった企業は75社を越えるという。なかでも最も激しく変化したのが玩具のEC分野である。

表1に示すとおり、昨シーズンに存在した玩具ECサイトのうち、ピュアプレイヤー(ネット専業)の3社が廃業した。また、知育玩具専門のスマーターキッズ・コムは、自社製品をカタログとネットで直接販売するアーリーチャイルドフッド・コムとの合併計画を発表し、マルチチャネル(実店舗、カタログ、ネットなど複数チャネルで展開)への転換に生き残りをかけている。

玩具EC分野のリーダーであるeトイズは、株価低迷のなか、あえて事業を拡大し、従来の玩具とベビー用品に加え、11月からはパーティー用品と鉄道模型などのホビー用品の販売もはじめた。単価と粗利率の低い玩具のピュアプレイヤーが運営コストをカバーするには、実店舗の小売店以上の売上げ規模を必要とする。同社にとって、粗利の高い商品への拡大は、このビジネスモデルの穴をふさぎ、利益をあげるのに不可欠な手段なのだ。今シーズンに通常期を上回る損失を出せば、来年早々の破綻はほぼ確実となる。まさに崖っぷちの状態だ。

玩具EC分野の厳しい環境は今年、ピュアプレイヤーとマルチチャネルの意外な提携関係を生み出した。昨年、一昨年と続けて混雑によるサイトのトラブルや配達遅延を引き起し、顧客の期待に応えられなかったトイザらス・コムは、8月にアマゾン・コムとの提携を決断。今年のホリデイシーズンは、サイトに訪れたユーザーを直接アマゾン内の玩具コーナーに飛ばし、注文品をアマゾンの物流センターから発送する体制で、苦手なサイト運営と注文処理業務から解放された。

一方のアマゾンは、昨年シーズン途中で人気玩具を在庫切れにしたばかりか、売れ筋を見誤り、売れ残った在庫を損失計上する羽目に陥った。しかし、トイザらスが仕入れリスクを負う今年、玩具はアマゾンの利益に貢献する商品カテゴリーになるかもしれない。

さらに注目すべきは、大手ディスカウントストア・チェーンの動向だ。各社とも、今年のホリデイシーズンのECにこれまでにない意気込みで臨んでいる。

昨年、12月9日という早い段階でクリスマス前到着の注文受付けを締め切ってしまったウォルマート・コムは、今年の陸送を除く注文期限を19−20日に設定。今年秋には1カ月間サイトをクローズし、使い勝手の大幅向上をねらって97年以降3度めのサイト・リニューアルを行った。今年から参入したKマートの「ブルーライト・コム」も、ホリデイシーズンに照準を合わせ、10月末に玩具を含むフルラインの品ぞろえを完了させたばかり。ターゲット、JCペニーなどの有名チェーンも、それぞれにEC経験を蓄え、ピュアプレイヤーが弱体化した今年こそ、その存在感をアピールしようと力を入れている。

これらディスカウントストア・チェーンのECサイトの強みは、家電、パソコン、家庭用品、衣類、音楽、書籍など幅広い商品を揃えたワンストップ・ショッピング機能と、実店舗を組み合わせたサービスやマーケティング展開にある。玩具に限らず、各分野のピュアプレイヤーの手強いライバルとなりそうだ。

損失を最小限に:地味なマーケティング活動

昨年のホリデイシーズンは、ベンチャー投資資金や株式公開で得た資金をTVやラジオ、雑誌などのマスメディア広告に回し、派手なキャンペーンを行うピュアプレイヤーが台頭した。こうした企業の多くは実際の売上げの倍以上ものマーケティング・コストを費やしたあげく、今年、追加資金調達ができずに姿を消した。

今シーズンまで生き残った企業は、昨年の教訓から、少ないマーケティング予算で効率よく売上げをあげ、利益を出すのは無理としても、損失を最小限にとどめることに心をくだいている。さもなければ、この先の存続が危ういからだ。

この傾向は、複数の調査で明らかにされている。ジュピター・リサーチ*1によると、EC企業のうち64%が、ホリデイシーズンのマーケティング予算の大半を低コストで売上げに直接効果のあるオンライン広告に振り向ける予定であるという。一方、雑誌などの印刷広告を予定する企業は21%、TV、ラジオ、CATVの広告を予定する企業は12%にとどまっている。

また、Shop.org*2の調査によると、EC企業の顧客獲得コストは、昨年第4四半期の71ドルから、今年第3四半期には20ドルにまで下がった。この調査でも、ホリデイシーズンのマーケティング予算はオンライン主体という企業が62%で、TVコマーシャルの予算を増やすという企業はわずか4%であった。ただし、ピュアプレイヤーとマルチチャネルの態度は異なり、オフラインのマーケティング予算を増加予定の企業は、ピュアプレイヤーの26%に対し、マルチチャネルでは42%あった。

ECの主役は交代するか?

今年のホリデイシーズンの焦点は、明らかにピュアプレイヤー対マルチチャネルの勝負だ。ピュアプレイヤーにとって、負けはすなわち死を意味する真剣勝負であり、その判定は売上げよりも利益で下される。追う側のマルチチャネルにとっては、いかに消費者の支持を獲得し、期待に応えるサービスを提供できるかがポイントだ。ECの主役の座は、ピュアプレイヤーからマルチチャネルに移るのか。今シーズンの結果が、来年のEC業界を占ううえでも、重要な分かれめとなる。

トピックス1:サイト・トラブルの被害は甚大

ホリデイシーズンのネットショッピングは11月第4週から12月第2週にピークを迎える。EC企業はアクセスの集中に備え、サーバーの処理能力を増強するが、それでも毎年、人気サイトのページ表示や注文受付けに時間がかかったり、サイトに入れなくなるトラブルが発生している。今年も12月第1週までの段階で、いくつかのサイトでそうした状況が報告されている。

家電小売チェーンのECサイトであるベストバイ・コムは、11月第4週の週末にかけて断続的にアクセス不能に陥ったが、原因の一部は、品薄のプレイステーション2が売りに出されるといううわさが広がり、アクセスが殺到したためだという。リニューアルしたばかりのウォルマート・コムも、12月第1週の週末から月曜にかけて数回にわたり、1時間から1時間半の閉鎖状態に陥った。原因はサイトのアップグレード作業だ。
一方、アマゾン・コムは12月第2週までに3回にわたって短い時間、アクセス不能に陥った。原因は混雑ではなく、内部の技術トラブルだという。あるアナリストは、この時期の20分間のサイト閉鎖で同社が取りそこなう注文は、件数で2万件、金額にして50万ドルにのぼるだろうと計算している。ちなみに、同社の10−12月期の売上げ予想は10億ドルだ。このような数字を見ると、サイト・トラブルはEC企業にとって、顧客サービス上の問題にとどまらない重大なものであることがわかる。

トピックス2:ピュアプレイヤーが紙のカタログを発行

ネット専業のEC企業をピュアプレイヤーと呼ぶが、ピュアプレイヤーのなかにも、マルチチャネル志向が芽生えつつあるようだ。といっても、いきなり実店舗を出店しはじめたわけではない。今年、アマゾン・コムなど一部のピュアプレイヤーが、紙のカタログを発行しているのだ。

アマゾンのカタログ「ホリデイ2000ギフトブック」は、24ページもので、約1千万部が単体もしくは注文品に同封して、顧客あてに発送された。同社の商品と、ドラッグストア・コム、アシュフォード・コムなどパートナー企業の商品の一部が掲載されている。カタログ本体に注文フォームはなく、目的はWebサイトにアクセスしてもらうことだ。実は、同社は昨年もカタログを発行したらしいのだが、ほとんど話題にならなかった。

今年はほかにもeトイズ(玩具)、800.コム(家電)、eラグジュアリー・コム、レッドエンベロップ(高級ギフト)、クッキング・コム(台所用品)などが、カタログを発行している。
ピュアプレイヤーがカタログを発行する理由は、いくつか考えられる。eラグジュアリー・コムやレッドエンベロップのような高級品を扱う企業の場合、カタログのほうが商品の魅力を伝えやすい。しかし、それより現実的な理由は、できるだけ投資効果の高いマーケティング手段を選ぶ必要に迫られたピュアプレイヤーが、TVコマーシャルより低コストで、ブランド・イメージ主体の広告より直接効果のありそうなマーケティング手段を求めた結果がカタログだったということかもしれない。

*1 ジュピター・コミュニケーションズとメディア・メトリックスの合併で成立した「ジュピター・メディア・メトリックス」の調査部門。http://www.jup.com

*2 米国EC企業の業界団体。調査はボストン・コンサルティング・グループが実施。http://www.shop.org

表1. 玩具EC分野の顔ぶれ
企業名 今シーズンの状況
【玩具専門サイト】
Eトイズ
etoys.com
株価は過去最低レベルだが、パーティー用品、ホビー用品を加えて事業拡大 ピュアプレイヤー
トイザらス・コム
toyzrus.com
アマゾン・コム内へ出店。単独サイトからは撤退 マルチチャネル
(撤退、廃業)
KBキッズ・コム
kbkids.com
リストラで生き残りを模索中 マルチチャネル
スマーターキッズ・コム
smarterkids.com
アーリーチャイルドフッド・コムとの合併手続き中 ピュアプレイヤー
レッドロケット バイアコムが運営。5月に廃業 ピュアプレイヤー
(撤退、廃業)
トイズマート・コム ディズニーが出資。5月に廃業 ピュアプレイヤー
(撤退、廃業)
トイタイム・コム 6月に廃業 ピュアプレイヤー
(撤退、廃業)
【玩具を扱う主要総合サイト】
アマゾン・コム
amazon.com
トイザラス・コムと提携。仕入れをまかせる ピュアプレイヤー
ウォルマート・コム
walmart.com
3回めのサイト・リニューアルで挑戦 マルチチャネル
ブルーライト・コム
bluelight.com
今年初参入。Kマート傘下 マルチチャネル
ターゲット・コム
target.com
99年参入 マルチチャネル
JCペニー・コム
jcpenny.com
98年参入 マルチチャネル
表2.米ECサイトのビジット数ランキング*
Nielsen//Netratings 測定
(11月5−26日:家庭と職場からのアクセス)
順位 サイト名(商品) 総ビジット数 期間中の伸び
1. Amazon.com(総合) 53,670,460 38.8%
2. Dell.com(コンピュータ) 9,900,846 10.8%
3. CDnow.com(音楽) 9,324,134 27.2%
4. Barnesandnoble.com(書籍) 8,878,199 ▲3.2%
5. EToys.com(玩具) 8,379,630 179.9%
6. HP.com(コンピュータ) 7,371,383 6.3%
7. Buy.com(総合) 6,268,735 29.2%
8. Walmart.com(総合) 6,100,990 779.4%
9. Hallmark.com(ギフト) 6,031,056 82.8%
10. JCpenny.com(総合) 5,989,536 71.6%

* オークション、旅行、証券、チケット、価格比較、モールなどのサイトは対象外。ビジットはユーザーが訪れた回数。

★11月中のトラフィックで見ると、マルチチャネルよりピュアプレイヤーがやや優勢。

表3. EC企業のホリデイシーズン対策
Shop.org/Boston Consulting Group調査
[サービス関連]
サイトのナビゲーションやギフト・センターなどホリデイ関連機能の改善を実施 70%
顧客サービス処理能力を増強 65%
配送処理能力や在庫関連の機能に投資 62%
新商品カテゴリーを追加 52%
サーバー処理能力を増強 45%
[マーケティング活動]
ギフト券を販売 54%
ポータルと新規広告契約または契約を継続 39%
コンテンツ・サイトと新たにパートナーシップ契約 36%
購入者に無料ギフトを提供 29%
注文金額などの条件付きで送料無料 28%
無条件で送料無料 12%
ホリデイシーズン週別EC支出

★消費者は昨年より早い11月第2週からネットショッピングを開始。分散により、今年は昨年のような11月第4週、12月第1週のはねあがりは見られない。

【追記】
このレポート執筆後の12月15日、eトイズは12月末締めの四半期売上げが、事前予測の半分にとどまり、収入の55−65%の営業損失が発生する見込みであることを発表した。これにより、手持ち資金が2001年3月に底を付くことが確実となったため、同社は身売り先を探しはじめた。

eトイズの2000年10−12月期業績見込み
旧予測 新予測 1999年
10-12月期
売上 $2.1億-$2.4億 $1.2億-$1.3億 $1.1億
営業損失比率(対収入) 2-28% 55-65% 59%
eトイズの1日あたり平均ユニークビジター数
(家庭と職場からのアクセス)
Jupitar Media Metrix測定
2000年 1999年 変化
12月第1週 338,000 399,000 ▲15.3
12月第2週 397,000 397,000 0

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