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米国玩具EC業界の淘汰プロセスに見る:消える企業、生き残る企業

調査会社のフォレスター・リサーチは、米国のネット専業EC企業のほとんどが、資金難と競争激化により来年までに事業を続けられなくなると予想した*1。この予想を裏付けるかのように、5月以降、米国の消費者向けインターネット・ビジネスの世界では、営業停止や吸収合併、リストラ発表が続出している。淘汰のプロセスと生き残る企業の条件を、現時点で最も淘汰の進行した玩具EC業界の例から考察する。(富士通総研 倉持真理 2000年6月28日)

急速に進む玩具EC業界の淘汰

玩具のEC業界は、淘汰が最も急速に進行している分野である。ほかの商品カテゴリーと比べて企業数が多く、競争が激しいことに加えて、各社とも昨年クリスマス・シーズンにかなりのマーケティング・コストをつぎ込み、すでに資金不足に陥っていたためだ。これにより、玩具EC業界の淘汰は、ほかのカテゴリーに先駆け一気に進行した。

まず5月初旬、メディア大手のバイアコムが運営する玩具ECサイト「レッドロケット」が注文受付を停止し、下旬には、ディズニーが60%を所有するトイズマート・コムがこれに続いた。6月に入ると、トイタイム(http://www.toytime.com)も注文受付を停止し、ベビー用品を販売するベビータイムともども、資産売却先を探している旨のメッセージをサイトに掲載した。また、玩具専門店チェーンを親会社とするKBキッズ・コム(http://www.kbkids.com) は、営業は続けているものの従業員をレイオフし、今年半ばに予定していた株式上場計画を撤回している。

一般論からすると、より厳しい状況にいるのは、株価の低下で追加資金調達ができなくなったネット専業のEC企業だ。ベンチャー資金が底をついたトイタイムの破綻は、これにあてはまる。これに対し、大手資本傘下のECサイトは、損失を出しても営業を続けられるだけの援助が得られるはずである。しかし実際には、バイアコムやディズニー傘下のECサイトも、この段階で早々に脱落している。

当初、バイアコムは人気子供向けTVチャンネルのWebサイト「ニコロデオン・コム」に集まるユーザーをレッドロケットに誘導し、玩具の売上げにつなげる計画だった。同様に、ディズニーも自社の展開するWebサイトからユーザーを誘導する目的で、昨年8月にトイズマート・コムに出資したが、結果的にはわずか9カ月間での撤退となった。

理由は容易に想像できる。玩具販売やECが本業ではないバイアコムとディズニーは、競争の激しい業界で赤字事業を続けていくだけのコミットメントを持たない。資金的に苦しいわけではないが、これを機に、利益の見込めないサイド・ビジネスから手を引くことにしたのである。

生き残った企業の顔ぶれ

淘汰の進む玩具EC業界で、生き残るのはどんな企業なのか。この時点で営業を続けている企業の顔ぶれと特徴から、その答えはある程度見えてくる。

まずは、玩具EC業界のカテゴリー・リーダーの座をほぼ掌握しつつあるトイザらス・コム(http://www.toysrus.com)とeトイズ(http://www.etoys.com)の二社が挙げられる。
玩具の大型店チェーン「トイザらス」のネット部門であるトイザらス・コムは、前出レッドロケットの在庫を買い取ったほか、ニコロデオン・コムとの優先リンクや、オリジナル商品開発のライセンスなどもこの機に乗じて獲得している。また、この夏、ニュージャージーとサンフランシスコの2ヶ所に新しい事務所をオープンし、来年までにネット部門の従業員数を現在の300人から2倍に増やす拡大計画を発表した。

一方、eトイズは5月に発表したコスト削減計画を実行に移すかたわら*2、経営が破綻したパーティー用品販売のECサイト「eパーティーズ」から、商標とソフトウェアの一部などを160万ドル相当の株式交換で買い取り、パーティー用品とパーティー企画サービスの分野に事業を拡大する計画を進めている。また、同社は6月中旬、優先転換株の売却により、機関投資家グループから1億ドルの追加資金を調達し、このまま損失を出し続けても、来年秋まで営業できるだけの資金を確保した。

そして、玩具専門店チェーン「KBトイズ」のネット部門という位置付けにあるKBキッズ・コムも、リストラ中とはいえ、生き残っている。さらに、専門家が厳選した教育用玩具というコンセプトで展開するネット専業のスマーターキッズ・コム(http://www.smarterkids.com)は、昨年から顧客獲得コストを圧縮する方向に向かい、赤字経営ながらも、大がかりなリストラなしでしばらく営業していけるだけの資金を持っている。

生き残りの条件

淘汰のプロセスで、資金力の弱いネット専業ベンチャーと、コミットメントを持たない大手資本傘下のECサイトが脱落した。そして、生き残っている4社の特徴を抜き出すと、ごく当然のことも含めて次の五つが挙げられる。

(1)資金力にまだ余裕があること
eトイズ、トイザらス・コム、KBキッズ・コム、スマーターキッズ・コム

(2)玩具EC事業が本業、またはそれに近い位置づけにあること
eトイズ、トイザらス・コム、KBキッズ・コム、スマーターキッズ・コム

(3)カテゴリー・リーダーであること
eトイズ、トイザらス・コム

(4)クリック&モルタル(オンライン/オフライン兼業)*3であること
トイザらス・コム、KBキッズ・コム

(5)ライバル企業にはない個性や価値を持っていること
スマーターキッズ・コム(教育玩具に特化)

後付け分析ではあるが、とりあえずはこの五つの特徴が、玩具EC業界における生き残りの条件だったといえるだろう。

玩具EC業界の淘汰は急速に進んだが、まだこの段階でストップするとは限らない。生き残った4社には、アマゾン・コムやバイ・コム、ウォルマート・コムなど、玩具も販売する総合ECサイトとの競争もまだ残されているからだ。

*1 本紙2000年4月26日号(Vol.6, No.122) 11頁参照

*2 本紙2000年5月31日号(Vol.6, No.124) 11頁参照

*3 一般的な建物を表す英語の表現「brick and mortar(レンガと漆喰)」に、インターネットを表すclick という単語を入れてもじった言い回し。ブリック&クリックともいう。

[コラム]ペット用品EC業界でも淘汰がはじまる

ペット用品のEC業界では、6月中旬、ペッツ・コム(http://www.pets.com) がライバルのペットストア・コムの資産を部分的に引き継ぐことが明らかになった。ペットストア・コム(http://www.petstore.com) のサイトにアクセスすると、すでにメッセージとともにペッツ・コムにユーザーを誘導する画面が表示されている。

ペッツ・コムが引き継ぐ資産は、ドメイン名と商標、顧客データベース、オリジナル・コンテンツ、そしてペットストア・コムが手掛けていた鑑賞魚のEC事業だ。このほか、ペットストア・コムと戦略提携を結んでいたディスカバリー・コムとスーパーマーケット・チェーンのセーフウェイとのマーケティング契約なども引き継ぎ、両社を含むペットストア・コムの出資者から、300万ドルの追加出資も受けることになった。

ペット用品のEC業界では、ネット専業のペッツ・コム、クリック&モルタルのペッツマート・コム(http://www.petsmart.com) 、ペットピア・コム(http://www.petpia.com) などの有力企業以外にも、「ペットなんとか・コム」という似たような名前のECサイトが乱立している。ここ数カ月で玩具EC業界なみに淘汰が進むと予想される。


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