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スペイン語圏ポータル「テラ」がライコス買収を計画
グローバル・ポータル戦略は実現するか?

欧州と南米のスペイン語圏でポータルを運営するテラ・ネットワークス(本拠地:スペイン、マドリッド)が、ネット視聴率で米国第4位につける準大手ポータルのライコスを買収する計画が5月16日に明らかになった。海外資本による米国ポータルの買収は、これがはじめてのケースだ。両社の統合により発足する新会社「テラ・ライコス」は、北米、南米、欧州、アジアの37カ国に展開するグローバル・ポータル企業となる。この買収計画の概要と狙い、見通しをQ&A形式でまとめてみた。(富士通総研 倉持真理 2000年5月31日)

テラ・ネットワークスの事業内容は?

欧州と南米、北米でスペイン語およびポルトガル語のポータルとISP事業を運営する。ISP加入者数は約200万人。1999年度(12月末締め)の収入は7850万ユーロ、収支は1.7億ユーロの赤字であった。http://www.terra.es/

テラのバックグラウンドは?

スペインの大手通信会社テレフォニカの子会社として98年12月に誕生した。現在も、テレフォニカが株式の67%を所有する。昨年11月の株式を公開し、5月中旬時点での時価総額は170億ユーロと、欧州のインターネット株のなかで2番目に高い評価を受けている。この時価総額はライコスの約3倍にあたる。

テラのライコス買収条件は?

テラはライコスを1株あたり97.55ドル、総額125億ドルで買収する。取引は、ライコス11株につきテラ株1.433~2.150(取引成立時の株価で決定)の株式交換で行われ、最終的に新会社の所有比率は、テラ株主54~63%、ライコス株主37~46%となる。ちなみに、買収発表当日(5月16日)のライコスのNASDAQ終値は72 5/8ドル。

買収の完了時期は?

今年の第3四半期を予定。

買収後の新会社の概要は?

新会社「テラ・ライコス」は、北米、南米、欧州、アジアの計37カ国でサービスを提供するグローバル・ポータル企業となる。テラの現CEO(Juan Villalonga) が新会社の会長、現ライコスCEO(Bob Davis) が新会社のCEOに就任。経営幹部会メンバーは、テラ側10人、ライコス側4人から構成される。新会社の2000年度の収入は推定5億ドル。

買収の付帯条件は?

(1)買収成立前に、テラはテレフォニカを引き受け元に、20億ドル分の増資を行う予定。テレフォニカ以外のテラ株主がこれを購入しない場合は、テレフォニカがすべて引き取る。これにより、テラ・ライコスは30億ドルのキャッシュを保有する”世界で最も資金力のあるインターネット企業”となる。
(2)テラ・ライコスは、テレフォニカとのジョイント・ベンチャーの無線通信サービス事業の49%を所有する。

買収を支援するほかの企業は?

ライコスは現在、欧州での事業をドイツの大手メディア会社、ベルテルスマンと共同運営している。ベルテルスマンは、買収成立後もテラ・ライコスとの戦略提携関係を維持する意向で、新会社に広告および各種サービスの対価として、5年間で10億ドル支払う契約を結ぶことを明らかにした。テラ・ライコスはまた、ベルテルスマンの所有する書籍、雑誌、音楽、映画などのコンテンツを優先的に利用でき、両社はこれらのコンテンツのデジタル配信プラットフォームを共同開発する。

テラのライコス買収の狙いは?

テラの99年度収入は、ISPの接続料が61%、企業向けサービスが28%を占め、広告やECから得る収入はまだ少なく、業績も赤字である。しかし、スペイン語およびポルトガル語圏のインターネット市場は未成熟で、広告やECといった、本来ポータルとしての収入の中心となるべき分野からの急激な収入拡大は短期的には見込めない。一方で、株式市場にインターネット株の収益性に関するシビアな見方が広がっている。

このためテラは、現状維持で株価低迷をまねくか、時価総額が高いうちに思い切った拡大戦略を実行に移すかの選択に迫られた。結果、より大きい市場があり、すばやい成長の見込める英語圏進出の手掛かりとしてライコスを買収し、グローバル・ポータル戦略を打ち出すことにしたと考えられる。

ライコスが買収に同意した背景は?

ライコスは米国内のネット視聴率(ユーザー到達率)でAOL、ヤフー、MSNに次ぐ第4位のポジションにいる。同社はこれまで、若者向けコミュニティに焦点を絞ったり、ECからの収入を増やすなど、かなり賢明に立ち回り、それなりの収益性を確保してきた。しかし、上位3社との格差は大きく、総合ポータルとして3社に太刀打ちできる可能性はほとんどない。

また、インターネットの高速化、TVや携帯電話を含む端末の多様化といった環境変化への対応の面で、大手メディアや通信会社の後ろ楯がないことが、将来の不安材料となっていた。ライコスと競争する準大手ポータルは、AT&T傘下のエキサイト、ディズニー傘下のGO.comなど、いずれも後ろ楯を持っている。

ライコスはすでに昨年2月の時点で、この状況から抜け出すために、メディア会社でECにも強いUSAネットワークス社からの買収提案に応じたが、この計画は株主の反対で実現しなかった*1

ライコスがテラの買収提案を受け入れた理由は、資金力の確保とともに、”米国の準大手ポータル”ではなく”グローバル・ポータル”という肩書を得て、競争のフィールドをまだわずかに勝負の余地があるグローバル市場に移すためと推測される。

テラ・ライコスの今後の見通しは?

テラとライコスの統合は、両社の経営環境における必然性はあるが、最終製品であるポータルとして見た場合、展開地域の拡大以外に、とくに個性や強みを加える要素はあまりない。このため、米国から世界に場を移しても、結局AOL、ヤフー、MSNに厳しい競争を強いられる状況に変わりはない。

テラ・ライコスは、豊富な資金力を他企業の買収による競争力の強化にあてる方針を表明しており、実現の舵取りは、新会社のCEOに就任するライコス現CEO(Bob Davis) の力量にかかっている。しかし、異国企業間の統合プロセスにありがちな文化的ギャップや、経営課題の優先順位に関する意識の相違が、Davisの米国流の経営手腕発揮を阻害する可能性は高く、テラ・ライコスの将来はよくいっても不透明である。

この買収計画は成立するか?

株式市場の状況によるところが大きい。買収条件は、テラ自身の株価が発表時点から上下2割以内の変化におさまることを想定しており、テラの株価が2割以上下がった場合、ライコス1株あたり97.55ドルという条件は撤回される。また、ライコスの株価が下がり、買収価格との差が大きくなりすぎても、取引は成立しない可能性がある。

*1 本紙99年2月24日号(Vol.5, No.95)5頁、99年6月2日号(Vol.5, No.102) 13頁参照


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