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ドット・コム時代の終焉 ピーポッド、
CDナウに迫るバーンアウト(資金枯渇)

消費者向けEC企業に逆風が吹いている。理由は売上げ不振ではなく、株価の低迷と資金の枯渇だ。ピーポッドやCDナウのような有名企業が実際に危機に瀕しており、オンライン専業EC企業のゆくえには暗雲が迫ってきた。(富士通総研 倉持真理 2000年4月5日)

ピーポッドの危機

オンライン・グローサー(食品雑貨宅配サービス)の草分けであるピーポッド(http://www.peapod.com) が経営難に追い込まれ、出資者もしくは身売り先を急ぎ探している。同社のCEOが健康上の理由から辞任したことで、2月に決まったベンチャー投資会社4社による合計1.2億ドルの出資計画が流れ、結果的に、3月16日時点でキャッシュが残り300万ドルという状況に陥ったのだ。同社の99年第4四半期の純損失は約910万ドルで、このままでは1カ月以内に運営が破綻する。

ピーポッドはPCのユーザー数自体が限られていた89年、専用ソフトで直接ダイヤルアップし、オンラインで注文する会員制サービスとしてスタート。その先進性とユニークさにより、新規ビジネス、顧客満足、ワン・トゥ・ワン・マーケティングなど、あらゆるテーマのケーススタディに登場し、有名になった。

当初、大手スーパーマーケット・チェーンと提携し、店舗に常駐した同社の配達員が注文品を詰め、宅配するモデルで展開していたが、98年後半からは、自社で仕入れた商品を自前の倉庫から届けるモデルに転換を進めてきた。サービス地域は8ヶ所、会員数約11万人と、同様のサービスを提供する企業のなかでは最大だが、これまで一度も利益を計上したことはない。

CDナウの危機

インターネットを通じた音楽CD販売で有名なCDナウ(http://www.cdnow.com)も、昨年7月に発表したコロンビアハウス(http://www.columbiahouse.com)との合併がキャンセルとなり、窮地に陥っている。

コロンビアハウスは、タイム・ワーナーとソニーが所有する音楽とビデオのダイレクトマーケティング会社だ。合併が実現すれば、CDナウは資金調達と経営基盤強化の機会が得られるはずだった。ところが、3月中旬になって計画は変更され、合併のかわりにタイム・ワーナーとソニーがCDナウに5100万ドルを出資するにとどまることが決定した。

直接の理由としては、コロンビアハウスの財務状態の悪化が挙げられているが、それ以外にもさまざまな要素が関わっている。たとえば、タイム・ワーナーはAOLとの合併および、音楽事業でワーナー・ミュージックとEMIグループの合併を控えており、昨年7月から状況は大きく変化した。また、CDナウの業績はアマゾン・コムとの競争でかなり阻害され、お互い合併の効果がさほど期待できなくなったこともある。

CDナウは今回の合併キャンセルを受け、投資銀行のアレン&カンパニーを通じて、ピーポッドと同様に新たな出資者もしくは身売り先を探しはじめた。同時に、マーケティング・コストを従来の3分の1に減らすなどのコスト削減措置も明らかにしている。同社はタイム・ワーナーとソニーからの5100万ドルでしばらく生き長らえるが、これがなければ、もうすでに資金は底をつきかけていた。

はじまったバーンアウト

米国の経済誌『バロンズ(http://www.barrons.com)』は最近の号で、インターネット関連の株式公開企業207社の財務状況を分析した記事を掲載している*1。各企業の収支が99年第4四半期と同レベルを維持すると仮定し、これまでに株式公開などで調達した資金が、あと何カ月分残っているかを試算したものだ。207社はいずれも赤字のため、手持ち資金は消耗していく。

結果として、年内にバーンアウト(資金の枯渇)が予想される企業は43社で、その筆頭がCDナウとピーポッドだった。オンライン専業の消費者向けEC企業は、43社中13社だ*2

むろんバーンアウトの近い企業は、コスト削減とともに、新たな出資者探しなどで危機を回避しようとする。たとえば、アマゾン・コムはこの試算で余命約10カ月(来年1月まで)と診断されたが、2月に6.9億ユーロの転換社債を発行し、さらに増資計画も立てている。

しかし、アマゾンのようなカリスマ企業は別として、オンライン専業のEC企業にとって、追加の資金調達は非常に難しい。昨年末以来、これら企業の株価が下がり続けているのは、今後も利益が出る見込みはないと投資家が見限ったからである。損失を出しても将来性が買われた昨年前半までと状況は一変し、資金提供を申し出るベンチャー投資会社はいなくなった。

ドット・コム時代の終焉

ピーポッドとCDナウの危機が象徴するものは、ドット・コム時代の終焉である。インターネットの世界では95年以降、数多くのベンチャー企業が誕生し、続くインターネット株ブームに乗って調達した資金をテレビ・コマーシャルにつぎ込み、華々しい一時代を築いた。

しかし、自社で仕入れた商品を売る小売業の形態を単にインターネットに移植しただけのECベンチャーは、最大手のアマゾン・コムでさえ赤字から抜け出せていないのが現状だ*3

CDナウは、この先マーケティング・コストを3分の1にカットするコスト削減を打ち出したが、これを実施した結果、売上げが大きく落ち込み、削減した運営コストもカバーできない状態となれば打つ手はない。それは同社の、そしていずれも似た戦略を取るオンライン専業のEC企業のビジネスモデル自体が、成立しえないものだったことを意味する。

消費者向けEC市場は依然として拡大の途上にあるが、その主役はいつのまにか、市場の基盤作りを担ったECベンチャーから、機を見計らって腰を上げたクリック&モルタル(オンライン進出した一般小売業)に取って代わろうとしている。なかには、コスト削減で収支バランスを正常化し、生き残るドット・コム・ベンチャーもあるだろうが、そうした企業はそのプロセスで話題性を失い、いずれ規模的にもさほどの影響力を持つ存在ではなくなっていく。

ピーポッドとCDナウは存続できるか?

ピーポッドとCDナウに残された最大の資産は、なんといっても既存顧客であり、加えて多少のブランド価値だ。この二社を買収する必然性が高いのは同業のライバルだが、逼迫の程度に差こそあれ、ECベンチャーという基本的立場に変わりのないライバル企業には、今のところそのような余裕はなさそうだ。

もう一つの候補は同じ商品カテゴリーの一般小売業だが、これもオンライン部門を別事業部化して株式公開したり、株式公開を前提にベンチャー投資会社の資金援助を受けるケースが多いことを考えると、なかなか難しいものがある。

しかも、二社が必要としているのは、単に生き長らえるための資金ではなく、ビジネスモデルを成り立たせるための、これまでとは違う戦略なのだ。見通しは暗いが、これまでECの発展に寄与してきた二社に、どこからか救いの手が差し伸べられることを期待したい。

*1 2000年3月20日号記事『Burning Up』

*2 この記事に挙げられた、今後1年以内に資金枯渇の可能性があるオンライン専業の消費者向けEC企業はCDナウ、ピーポッド、ビタミンショップ・コム(ビタミン剤)、エッグヘッド・コム(PC)、マザーネイチャー・コム(エコロジー商品)、FTD.コム(生花)、ショップナウ・コム(総合)、ビヨンド・コム(ソフトウェア)、プラネットRx.コム(薬局)、スマーターキッズ・コム(玩具)、ドラッグストア・コム(薬局)、アシュフォード・コム(高級アクセサリー)、チケッツ・コムの13社。

*3 アマゾン・コムは書籍販売に関しては、99年第4四半期に黒字化したと主張している。

ピーポッドとCDナウの業績推移

ピーポッドとCDナウの業績推移

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