アマゾン・コム、商品カテゴリーをさらに拡大。共同ブランド・クレジットカードも導入
すさまじい勢いで拡大路線を進むアマゾン・コムが、ホリデイ・シーズン本番を目前に、取り扱い商品の拡大など、ことさら活発な動きを見せている。同社が新たに打ち出した活動とその狙いをレポートする。(富士通総研 倉持 真理 1999年12月1日)
意外なホーム・インプルーブメント参入
同社は11月10日より、ホーム・インプルーブメント、ソフトウェア*1、ビデオゲーム、ギフトの4つの商品カテゴリーを追加した。このうちギフトは昨年と同様、ホリデイ・シーズン期間限定の取扱いとなる。いわゆる”タイトル物”で、オンライン販売に適したソフトウェアとビデオゲームへの拡大は以前から予想されていたが、ホーム・インプルーブメントの取扱いについては、業界アナリストも意外な展開と見ている。
ホーム・インプルーブメントは、家の修繕に使われる材料や工具、器具など、ホームセンターやDIY店が扱う商品カテゴリーで、一般店舗では、個人のほか建築・リフォーム業者などを顧客としている。この分野のオンライン販売は、まだ本格的に取り組むサイトが少なく、有名企業の参入は実質的にアマゾンが一番乗りとなる。
同社はこのカテゴリー新設のため、工具類のカタログ販売を手掛けるツール・クリッブ社を買収し、品ぞろえを確保した。的確な製品紹介やユーザー・レビュー、バイヤーズ・ガイドを備えた既存のサイト・フォーマットに落とし込むことで、店で買うより便利な環境を目指す。配達料は重さにかかわらず1件4.95ドルで、大型商品の返品はその旨を連絡すると、無料で引き取りに行く。
しかし、来年早々には、この分野最大手の小売チェーンであるホームデポ(http://www.homedepot.com)*2がオンライン進出を予定しており、アマゾンの先行優位がさほどの効果を持つかは不明だ。トラフィックの増えるホリデイ・シーズンからの投入で、ユーザーの認知と既存顧客の利用は見込めるが、ホーム・インプルーブメント用品の買い物を目的とした新規顧客を引きつけられるかどうかは疑問とする声もある。
なお、同社としては異例だが、買収したツール・クリッブ社の印刷カタログによる通信販売事業は、今後も継続するという。
共同ブランドのカード発行
同社は同じく11月10日、インターネットだけで会員を募集するクレジットカード会社のネクストカード(http://www.nextcard.com) と提携し、来年初頭から両社共同ブランドの「アマゾン・コム・ネクストカード」を発行することを発表した。この提携により、アマゾンは今後5年で1.5億ドルの手数料収入を見込んでいる。また、同社はネクストカードの9.9%に相当する440万株分の転換社債を約2250万ドルで購入することも明らかにした。
アマゾン・コム・ネクストカードは、ネクストカードの特徴であるオンラインショッピングの保証や、オンラインでの即時入会審査、利用明細照会といった既存サービスに加え、アマゾンでの買い物額に応じて還元するロイヤルティ・プログラムなどの独自サービスを提供する予定だ。
共同ブランドのカード発行は、アマゾンが顧客へのアクセス権を外部企業に販売する事業に本格的に取り組む兆しと捉える向きもある。同社の顧客数は1300万人を越えており、いまや掌握するインターネット・ユーザーの集積は、AOLに次ぐ規模となる。AOLは、加入者に製品やサービスを売り込む権利を外部企業に与え、契約金と収入の一部を受け取るマーケティグ契約を定常的な事業としているが、今回のアマゾンとネクストカードの提携も、基本的に同じタイプの事業といえる。
この件に関するウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、同社CEOのジェフリー・ベゾスは、顧客へのアクセスを求めて近づく企業は多いが、同社はこうした契約に慎重な態度を取っていく意向と答えている。
とはいえ、取扱い商品を増やすたびに赤字幅を増やし、売上げ拡大のかわり利益計上を後伸ばしにしている同社にとっては、オークションやzショップス*3による手数料収入や、今回のような”顧客データ販売事業”が今後の利益確保の切り札となる可能性は高い。
サザビーズ共同サイトのオープン、各種ツール提供なども
前述以外にも、同社は最近さまざまな新しい活動を行っている。たとえば、10月下旬にはホリデイ・シーズンに備えてギフト・レジストリー機能*4を追加。これは、ユーザーが自分のほしい品物のリストをアマゾンのサイト上につくり、家族や友人にeメールで知らせ、プレゼントに購入してもらうための仕組みで、リストの作成やリスト商品の購入が簡単にできるようになっている。取扱い商品数が多く、ロイヤルティの高い顧客を持つ同社ならではのサービスだ。
また、11月中旬には、伝統あるオークション・ハウスとして有名なサザビーズと提携して開発を進めていた両社共同ブランド「サザビーズ・アマゾン・コム(http://www.sothebys.amzon.com) 」のオンライン・オークションを開始した。ここでは、サザビーズの認定したプロのディーラーが扱う鑑定付きの品物が競売にかけられる。
さらに同社は、4月に買収したアレクサ・インターネット社*5の技術をベースに開発した「zバブルス」というプラグイン・ソフトのベータ・テストもひそかに開始。このソフトをダウンロードすると、ユーザーのブラウザーのツールバーに三つのボタンが現れ、このうち一つを押すと、ユーザーがインターネット上のどのサイトにいるときでも、該当ページに掲載された製品について、ほかのユーザーが寄せた意見やコメント、安く買えるショップ情報などを見ることができる。また、該当製品をアマゾンで販売している場合、今いるサイトを離れずにアマゾンから購入する手続きができるという。別のボタンを押せば、ユーザー自身が製品に関する意見や情報を書き込むことも可能だ。
アマゾンのサイト上で各商品につけられたユーザー・レビューは、購入時の参考情報として非常に役立っているが、zバブルスはこれをインターネット全体に広げたかたちとなる。ほかのサイトにいながらアマゾンで購入できるなど、なかなか戦略的な意図を秘めたツールだ。
取扱い商品の拡大や新事業への進出、そして、先進マーケティング・プログラムの開発と、アマゾンの前進の勢いはまだまだ止まりそうにない。
*1 CD-ROMなどパッケージ製品の配達のみで、ダウンロード 販売は行わない。
*2 現在は情報提供とギフトカード販売のみをオンラインで実施。
*3 中小企業や個人がアマゾンのサイトで独自の商品を販売できるプログラム。本紙99年10月20日号(No.5, Vol.111) 11頁参照
*4 ギフト・レジストリーの仕組みについては、本紙99年11月17日号(No.5, Vol.113) 8頁参照。
*5 本紙99年5月19日号(No.5, Vol.101) 16頁参照
| 95年 7月 | 書籍のオンラインショップとしてオープン |
| 98年 6月 | 音楽CD |
| 98年11月 | ビデオ ギフト(ホリデイ・シーズン限定) |
| 99年 4月 | オークション導入 グリーティング・カード(無料)導入 |
| 99年 7月 | 玩具 家電 |
| 99年 9月 | 「zショップス」導入 |
| 99年11月 | ホーム・インプルーブメント ソフトウェア ビデオゲーム ギフト(ホリデイ・シーズン限定) |

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