インターネットに巨大オークション・ネットワークが出現
フェアマーケットのビジネスモデルと米オークション業界の今後
米国でのインターネットのオークション人気は、昨今のECブームと相まって、とどまるところを知らぬ勢いで広がっている。そのインターネット・オークション市場に、ポータルや有名ECサイトを一つのデータベースで接続した巨大な”オークション・ネットワーク”が登場した。最大手のeベイに対抗すべく、フェアマーケット社が生み出したこの新タイプのオークションのビジネスモデルを解説するとともに、eベイをはじめとするオークション各社の競争力を分析する。(富士通総研
倉持 真理 1999年10月6日)
オークション・ネットワークの概要と誕生の背景
9月20日、MSN.com、エキサイト@ホーム、ライコス、チケットマスター・オンライン・シティサーチ(TMCS)、デル・コンピュータなど、大手ポータルや人気ECサイトを含む100以上のWWWサイトが、フェアマーケット社(http://www.fairmarket.com)
の運営する「フェアマーケット・オークション・ネットワーク」への参加を表明した。
このネットワークは、フェアマーケット社のオークション・プラットフォームを採用したWWWサイトを相互接続するものだ。オークションにかけられる品物がどのサイトで登録されたかにかかわらず、共通のデータベースで管理されるため、ユーザーはネットワークに属するどのサイトからでも、オークションに参加できる。つまり、ライコスで登録された品物は、MSN.comでも見ることができるのだ。
ネットワーク方式の最大のメリットは、シナジーによる規模の実現にある。オークションに出品する売り手にとっては、参加するユーザーが多いほど値が上がって高く品物を売れる。一方、ユーザーには、品物の豊富なオークションが好まれる。複数サイトが参加するネットワーク方式では、この二つが同時に実現し、多くの売り手と買い手を集められるはずである。
さらになぜ、規模が重要かといえば、すでにインターネット・オークションの分野で7割のシェアを握るといわれる最大手のeベイ(http://www.ebay.com) や、先行するヤフー、アマゾン・コムに対抗するには、ネットワーク方式のシナジーを利用するしかないからだ。
昨今、オークション専門サイトだけでなく、ポータルやECサイト、コミュニティ・サイト、コンテンツ・サイトなどが軒並みオークションを導入し、その人気にあやかろうとしている。しかし、これらの後発組がはるか先を行くeベイと対等の競争力を持ち、オークションから最大の利益を得るためには、個々のサイトが小規模同志で競争しあうより、ネットワークに参加するほうがどう考えても有利である。
リリースによると、フェアマーケットのネットワーク全体で到達するユニーク・ユーザー数*1、つまり潜在顧客数は4600万人にのぼり、米国インターネット人口の73.3%をカバーする規模になるという。
フェアマーケットのビジネスモデル
オークション・ネットワークの仕組みとフェアマーケット社のビジネスモデルをさらに詳しく見ていきたい。
フェアマーケット社は97年に発足した新しい会社で、自社のWWWサイトにオークションを導入する企業に、ソフトウェア・プラットフォームと運営のアウトソーシング・サービスを提供している。同社のサービスは2年あまりで100を越えるサイトに採用され、これが巨大オークション・ネットワーク構築の基盤となった。
ネットワーク参加サイトは、自社サイトに独自のデザインでカスタマイズした自社ブランドのオークション・ページを設けられるが、個々のサイトで登録された品物は、フェアマーケットのデータベースで一括管理される。同社はプラットフォームとともに、手数料の請求・集金や顧客サービスなどの業務も一括して代行する。
オークションには、企業が保有する在庫を売るBtoC(企業対個人)*2タイプと、個人が手持ちの品物を売るCtoC(個人間)*2タイプの二種類があるが、同社はこれら両方に対応している。
さきほど、オークション・ネットワークの簡単な説明として、ライコスで登録された品物がMSN.comでも見られると述べたが、これはCtoCタイプの場合である。ネットワークには、自社の商品をオークションで販売するデルやコンプUSA、アウトポスト・コムといったBtoCタイプのECサイトも参加している。
この場合、たとえばデルのサイトにあるオークション・ページでは、ユーザーはデル自身の出品した商品しか見られないが、ポータルやコミュニティ・サイト上のオークション・ページでは、コンピュータのカテゴリーを選ぶと、個人の出品した品物と並んでデルの商品も見ることができる。そして、デルの商品がライコスのオークション・ページから参加したユーザーに競り落とされた場合、デルはライコスに対し、収入の1パーセントを紹介料として支払う。サイト間の紹介料の清算は、フェアマーケットを通じて行われる。
フェアマーケットのビジネスは、主に二つの収入で成り立っている。一つは、ネットワーク参加サイトのオークション運営料で、これは規模に応じて月額1万ドルからの固定料金である。そして、もう一つが参加サイトの収入に応じた手数料だ。
後者の手数料は、収入の発生一件ごとに1%を徴収する。BtoCサイトの場合、商品の売上げの1%が手数料となる。CtoCでは参加サイトによって異なるが、一般に売り手から出品料や売買成立手数料を徴収しており、フェアマーケットはそれら一件ごとに1%を課す。つまり、フェアマーケットはオークションの中間業者のような存在といえる。
eベイはフェアマーケットに追いつかれるか?
eベイが圧倒的な力を持つ市場に、フェアマーケットがオークション・ネットワークという新しい方式を持ち込んだことで、今後の競争の構図はどのように塗り代わるのだろうか。
フェアマーケットのネットワークの強みは、最初のほうで述べたとおり、参加サイト全体を合わせたユーザーの規模にある。しかし、到達するユーザー数がいくら多くても、全員がオークションを利用するわけではない。ユーザー数でeベイの3倍以上のヤフーは、1年前にCtoCオークションを導入したが、いまだに出品点数でeベイの3分の1にも及ばない。ヤフーの場合、出品料や売買成立時の手数料など、ユーザーの料金が一切かからないという有利な条件があっても、まだこの程度にとどまっている。
一方、eベイの優位を分析すると、まず第一にその圧倒的なブランド力が挙げられる。米国のインターネット・ユーザーの意識のなかでは、「オークション=eベイ」という図式がすでに出来上がっている。また、このことはeベイがヤフーやアマゾン、フェアマーケット参加サイトと異なり、オークション専業であることによっても補強されている。
第二の強みは集積力である。出品数の多さがユーザーを引きつける最大の魅力であり、ユーザーからのフィードバックの蓄積がeベイの詐欺防止プログラムによる安全性を高めている*3。集積力は時間の経過によってもたらされ、「先発の強み」といってもよい。
これらブランド力と集積力が、現在のeベイの圧倒的な優位を支える二大要素となっている。しかし、集積力はある程度、時間が解決する問題だ。インターネットとインターネット・オークションの市場には、今後も新たなユーザーが増え続けると予想され、後発であってもこの恩恵に預かることは可能である。また、ブランド力も今後の各社のプロモーション次第では、なんとかなる可能性がある。
つまり、eベイの優位性はすぐに崩されることはないが、このまま行くと保っていられなくなるおそれもある。たとえば今年6月、eベイは数回にわたって技術トラブルによるサイトのダウンを繰り返した。最も長かったケースでは、1日近くサイトにアクセスできない状態となり、同社はこれによる影響が、今年第2四半期の収入の1割程度に及ぶかもしれないという声明を発表した。さらにこの時期、多くのeベイ・ユーザーがヤフーやアマゾンに流れる現象も観測された。
eベイがこのまま優位を保つためには、最も基本的な技術インフラの問題解決は無論のこと、サービスの質の面で、競争相手に真似のできない差別化要素を何か一つでも打ち出す必要があると考えられる。
視点を変えると、フェアマーケット参加サイトやヤフー、アマゾンなども、時間をかければeベイと対等にわたりあえる可能性がないわけではない。フェアマーケットのオークション・ネットワークにより、市場のすそ野が大きく広がることは確かである。互いの競争により、各社がよりよいサービス提供に切磋琢磨するようになれば、そこから一番の恩恵を受けるのは、消費者ということになろう。
*1 この場合、同人物が複数サイト、または同一サイトに複数回訪れた場合の重複分を除いて数えたユーザー数。
*2 BtoC:Business to Consumer 、CtoC:Consumer to Consumer
*3 CtoCオークションでは詐欺が発生しやすいため、オークションで取引したユーザーは、取引後に相手を評価する情報のフィードバックを奨励される。個々の売り手や買い手に関する他のユーザーのフィードバックを見ることで、取引する相手が信頼できるかどうかを見分けられる仕組み。CtoCオークションの草分けであるeベイがこの仕組みを確立し、スタンダード化した。
| 名称 | eベイ | フェアマーケット | ヤフー |
|---|---|---|---|
| 開始時期 | 95年 | ネットワーク化 99年9月 |
98年9月 |
| タイプ | CtoC専門 | BtoC、CtoC | CtoC専門 |
| 到達ユーザー数 | 879万人 米インターネット人口の13.9%(99年8月)*2 |
ネットワーク・サイト合計4600万人 米インターネット人口の73.3%*3 |
3339万8千人 米インターネット人口の52.9%(99年8月)*2 |
| 登録者数 | 約560万人(9月現在) | 不明 | ヤフー登録者6500万人 (99年6月) |
| 出品点数 | 約280万点 (9月現在) |
約7万点 (9月20日現在) |
約72万5000点 (99年9月) |
| CtoC出品料 有料オプション*4 売買成立手数料 |
あり あり あり |
(参加サイトによって異なる) | なし なし なし |
| 名称 | アマゾン・コム | MSN.com | ライコス |
| 開始時期 | 99年4月 | 99年9月 | 99年5月 |
| タイプ | BtoC、CtoC | BtoC、CtoC (フェアマーケットのネットワークに参加) |
BtoC、CtoC (フェアマーケットのネットワークに参加) |
| 到達ユーザー数 | 1161万8千人 米インターネット人口の18.4%(99年8月)*2 |
フェアマーケットと同じ | フェアマーケットと同じ |
| 登録者数 | アマゾン顧客/登録者1070万人 (99年6月) |
MSN.com登録者不明 | ライコス登録者1000万人 (99年7月) |
| 出品点数 | 推定10万~20万点 (99年9月) |
フェアマーケットと同じ | フェアマーケットと同じ |
| CtoC出品料 有料オプション*4 売買成立手数料 |
あり あり あり |
なし あり あり |
なし あり なし |
*1 インターネットのオークションとしてはオンセールも有名だが、同社のように、自社が仕入れた商品を販売するBtoC専門オークションは性質が異なるため、除外した。
*2 出典:メディア・メトリクス調査。99年8月度WWWサイト・ランキング
*3 出典:フェアマーケット社ニュースリリース
*4 売り手が品物をオークション・ページに掲載する際、品物を目立つ場所に置くための有料オプション。
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