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EC企業に淘汰の波。規模とブランド勝負の時代へ

7月中旬、CDナウとコロンビア・ハウス、オンセールとエッグヘッドの二組の合併計画が相次いで発表された。これらの合併は、EC市場が急速に拡大する一方で、既存のオンライン専業企業間の競争に加え、一般小売業や他業種の参入による競争が激化し、有名企業でさえも独立を保つのが難しい状況となったことを示している。EC市場では、規模とブランドで勝負が決まる時代に向けての淘汰が始まった。(富士通総研 倉持 真理 1999年8月4日)

大資本と手を組むCDナウ

音楽CDのオンライン販売で最大手のCDナウ(http://www.cdnow.com)は、7月13日、タイム・ワーナーとソニーが所有する音楽とビデオのダイレクト・マーケティング会社、コロンビア・ハウス(http://www.columbiahouse.com)と合併する計画を明らかにした。合併で誕生する新会社は、タイム・ワーナーとソニーがそれぞれ37%、CDナウの株主が26%を所有する株式公開企業となる。

コロンビア・ハウスが手掛けるのは、音楽CDやビデオ、DVDなどの娯楽ソフトを新聞や雑誌広告、ダイレクトメール、インターネットなどを通じて販売する会員制ビジネスだ。会員になると安く買える仕組みで、たとえば1万6000タイトルを扱う音楽CDの場合、最初の12枚は手数料と配送料のみで購入でき、13枚めを6.95ドルで購入すると、あと2枚も無料で選べる。会員には入会時のガイドブックと好きなジャンルの音楽の最新情報が定期的に送られ、最低5枚のCDを会員価格(手数料、配送料別)で購入すれば、いつ脱会してもよい。

コロンビア・ハウスの現会員数は約1700万人だ。このうちインターネットで入会した会員は200万人おり、今年のオンライン売上げは1億ドルを見込んでいる。

合併後、両社はそれぞれのWWWサイトを新会社の一つに統合し、音楽CDのオンライン販売と会員制ダイレクト・マーケティングの二本立てで事業を行っていく。両社の現CEOがそれぞれの事業の責任者を務め、全体の指揮を執るCEOをこれから探す計画だ。

CDナウ合併の動機と狙い

CDナウは今年3月、それまで最大のライバルであったN2Kとの合併を完了したばかり。この合併のきっかけは、昨年6月にアマゾン・コムが音楽CD販売に乗り出し、書籍で培った顧客ベースを武器に、CDナウのシェアを脅かしはじめたことだった。CDナウ/N2Kを合わせた98年度売上げ9850万ドルに対し、アマゾンは98年後半の半年だけで、4750万ドルもの音楽CDを販売し、肉薄している。

CDナウとN2Kの合併の目的は、顧客ベースを統合して拡大しつつ、マーケティングや人件費など重複するコストを抑えて経営を効率化することにあった。しかし、5月中旬に二つのサイトを統合して以来、はじめての四半期業績予想(6月末締め)では、旧N2K顧客の新サイト誘導に手間取り、前期より売上げが減少する見込みで、合併がすぐに期待どおりの効果をあげるわけではなさそうだ。

アマゾンの脅威に加えて、バイ・コム(http://www.buy.com)の安売り攻勢*1、タワー・レコードやヴァージン・メガストアなど地上小売チェーンや大手レコード会社の参入*2、書籍のバーンズ&ノーブル・オンラインの音楽販売開始など、市場はかなり混み合ってきている。また、最近のMP3ブームを反映したデジタル・ダウンロードへの対応も、集客戦術上欠かせない。こうした状況下でCDナウは、オンライン音楽販売分野のカテゴリー・リーダーの地位を維持するために、独立企業の立場を捨て、大手資本の援助を受け入れる選択をしたものと推測される。

ソニーとタイム・ワーナーが所有するレコード会社は、それぞれ有名アーティストを抱え、合わせて米国のレコード・アルバム市場で35%のシェアを持つ音楽業界の一大勢力だ。この恩恵に加えて、新会社には両社傘下のテレビや雑誌などのメディアによるプロモーションの機会も優先的に与えられる。

そして何より、CDナウの230万人の顧客とコロンビア・ハウスのオンライン会員200万人を統合し、さらに1500万人近いオフライン会員をオンラインに移行することによる顧客ベース拡大と顧客獲得コストの引き下げが、新たな合併の最大のメリットとなる。

合併手続きは今年年末までに完了予定で、来年のオンライン売上げは、一般の音楽CD販売と会員制方式を合わせて5億ドルに達すると見込まれている。

似た者どうし手を組むオンセールとエッグヘッド

一方、オンセール(http://www.onsale.com) とエッグヘッド(http://www.egghead.com)の合併は、コンピュータ機器の販売を主とするオンライン専業のEC企業どうしの組合せだ。

合併後はエッグヘッド株主が47%、オンセール株主が53%を所有する新会社となり、社名は知名度の高い「エッグヘッド・コム」とし、オークションの部分では「オンセール」のブランドを引き続き使用する。CEOには現オンセールCEOが就任する予定で、99年度売上は5億ドルを見込んでいる。

この合併もまた、競争激化を直接の理由とし、重複機能の統合による運営効率化と、顧客ベース拡大のメリットを狙ったものであることは間違いない。

両社のいるコンピュータのオンライン販売分野は価格競争がとりわけ熾烈で、わずかなマージンどころかビロウ・コスト(コスト割れ)戦略*3なるものまで出現している。大手小売チェーンやデルのようなメーカーの参入*4はいうまでもなく、フリーPCブーム*5などの新しい流れも、売上げの伸びを妨げ、経営を圧迫する要因となっている。

このような状況で、似た者同士の2社がカテゴリー・リーダーを目指して合併するのは、当然の流れに見える。ただし、互いに赤字幅を拡大しつつあるオンライン専業企業同士の組合せが、期待どおりの効果をあげるものかどうかについては、首を傾げるアナリストも多い。

規模とブランドの時代

インターネットは無限のスペースを持ちながらも、地域内にいくつもの同業店舗が共存する現実の世界と異なり、1カテゴリーにつき1社か2社の大手独占に集約されていく厳しい世界だ。そして、インターネット環境特有の進化スピードが、現実世界であれば10年ほどかかって進む市場飽和と淘汰のプロセスをすでに2、3年で引き起こしている。

「インターネットでは、規模とブランドが物をいう」。エッグヘッドとの合併発表のリリースに載せられたオンセールのCEO、ジェリー・カプランのこの言葉は、EC市場の現状を的確に捉えたものだ。

規模とブランドが物をいう時代には、もはや先発の利しか持たないオンライン専業企業がカテゴリー・リーダーの地位にとどまれる可能性は低い。むしろ、オンライン・マーケティングのスキルが同レベルなら、強いブランドと地上チャネルを保有し、価格競争にも耐えられる大手資本のオフライン企業に有利な点は多い。規模とブランド獲得のためのオンライン専業EC企業の淘汰は、この先さらに続くはずだ。

なお、今回の2件の買収が発表された同じ時期に、アマゾン・コムは家電と玩具の取扱いを開始している。赤字の拡大を批判されることの多いアマゾンだが、同社がここ1年で推進してきた拡大戦略は、まさしく規模とブランドで勝負するためだった。

*1 人気商品のみを扱い、CDナウを含む競合店より1割安い値段で販売することを保証している。本紙99年6月23日号(Vol.5, No.103)13頁参照

*2 大手レコード会社のユニバーサル・ミュージック・グループとBMGエンターテイメントが共同で、音楽CD販売サイト「ゲットミュージック(http://www.getmusic.com) 」を6月にオープン。

*3 安い値段で顧客をひきつけるため、仕入れ値より安い値段で販売し、損失分をWWWサイトの広告販売など別の収入で補う戦略。前述バイ・コムがこの戦略で有名。

*4 デルは今年3月、自社製品以外のコンピュータ類を販売するオンラインショップ「ギガバイズ(http://www.gigabuys.com) をオープン。

*5 低価格PCとインターネット接続を組み合わせ、インターネット接続料のみでPCを提供する販売方式。本紙99年7月22日号(Vol.5,No.105) 10頁参照

コロンビア・ハウスとCDナウの経営指標
コロンビア・ハウス CDナウ
98年度収入(千ドル) 1,425,000 98,500
98年度利益(千ドル) 99,000 ▲105,400
顧客数(オフライン) 1460万人*1 0
顧客数(オンライン) 190万人*1 1230万人*2
インターネット視聴率*3 3.8% 6.0%
ユニーク・ビジター数*3 31310万人 440万人
平均サイト滞在時間*3 19.0分 17.3分

*1 99年5月時点
*2 99年6月時点
*3 メディア・メトリクス調査

オンセールとエッグヘッドのプロフィール
オンセール エッグヘッド
事業概要 コンピュータ機器、家電、スポーツ用品、旅行のオンライン・オークション販売(業者仕入れ)および、「オンセール・アットコスト」方式によるコンピュータ機器の販売を手掛ける。アットコストは公開した仕入れ値に、別途配達料と手数料を足した金額で販売する方式で、契約卸業者が在庫を保有し、オンセールは手数料を収入とする。99年第2四半期(6月末締め)の売上げ構成では、アットコスト方式が3割を占める。 コンピュータ機器、ソフトウェアのオンライン販売。旗艦サイトのほか、在庫処分品の販売サイト(http://www.surplusdirect.com)とオークション・サイト(http://www.surplusauction.com)を展開。もとはソフトウェア専門の小売チェーンを展開していたが、97年のオンライン進出後に店舗の閉鎖を決定、従業員を半分にリストラして98年1月よりオンライン専業のEC企業に転換した。
業績 98年度収入(12月締め) 2億780万ドル
98年度損失(12月締め) ▲1470万ドル
99年度収入(4月締め) 1億4870万ドル
99年度損失(4月締め) ▲3440万ドル

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