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ヤフーがブロードキャスト・コムを買収。ブロードバンド対応の布石に

ヤフーは4月1日、インターネット放送で有名なブロードキャスト・コムを買収することを発表した。取引は株式交換で行われ、金額にして57億ドル相当の価値となる。ヤフーにとっては、今年1月に発表したジオシティーズ買収に続く、2件めの大型買収だ。ヤフーの狙いは、今後の競争力の決め手となるブロードバンド対応にある。(富士通総研 倉持 真理 1999年4月21日)

ブロードキャスト・コムのプロフィール

ブロードキャスト・コム(http://www.broadcast.com)は95年、オーディオネットの名前で創立。リアルネットワークス社の「リアルオーディオ*1」技術の登場を受けて、ラジオ放送のオンライン化事業を開始した。

当時、インターネットでリアルタイムにオーディオを聞ける仕組みの登場は、ちょっとした歴史の転換点といってよいほど革新的な出来事であった。そのオーディオ・コンテンツを提供する初めての本格的サービスとして、同社はほどなく人気を獲得。その後は、ビデオを含めたストリーミング技術の進化と普及に歩調を合わせ、順調に成長を遂げてきた。今では、400を越えるラジオ/テレビ局の番組をはじめ、大学およびプロスポーツ・リーグの試合放送、フル収録の音楽CDやオーディオブック、コンサートから企業の株主総会、新製品発表会まで、各種コンテンツやイベントをライブまたはオン・デマンドで提供する有名サイトとなっている。

昨年5月にブロードキャスト・コムに社名変更し、7月にはNASDAQで株式公開も果たした。同社の収入源は、ラジオ/テレビ局の番組や企業のイベントをインターネット放送する手数料と自社サイトの広告が主だが、98年度の営業収入2240万ドルに対し、営業支出は3870万ドルと、インターネット企業にはありがちな赤字経営だ。

しかし、いくつか存在する同様のインターネット放送の企業のなかで、同社が規模や知名度などあらゆる面でリーダー的存在であることは間違いない。とくに昨年来、クリントン大統領の大陪審証言ビデオ公開(98年9月)や、スペース・シャトル「ディスカバリー」の打ち上げ生放送(98年10月)、NFLスーパーボウルのハーフタイムに合わせたビクトリアズ・シークレットの下着ファッションショー(99年2月)など、ストリーミングの大型イベントが続いたことで、同社への注目度は、かつてなく高まっている。

拡大路線に転じるヤフー

一方、ヤフーは現在、できるだけ戦略的価値の高い買収を行うことで、早急に足場を固める必要に迫られている。同社はインフォシーク、ライコス、エキサイトという検索サービス出身各社との競争からうまく抜け出したかわりに、これらの企業が獲得しつつあるマスメディアや大手資本のバックを持たない独立企業としてやっていく道を選んだ。しかし、インターネットのトップ企業であるAOLと伍していくには、まだその差はあまりに大きい。

今年1月に発表したジオシティーズの買収*2は、ヤフーにとってはじめての大型買収であり、それまでひたすら単一ブランドでの内部機能強化に向かっていた同社が、マルチブランド展開によるユーザー到達率拡大戦略に方向転換したことを示すものであった。

今回のブロードキャスト・コム買収は、この同路線上にあるとともに、もう一つの重要な戦略的意図を持って行われている。ブロードバンド対応である。

ブロードバンド対応

ケーブルモデムによる高速インターネット接続の本格的普及の兆しが見えはじめたことをきっかけに、ブロードバンド(広帯域)化に備えた動きが活発化しつつある。伝送可能なデータ帯域幅の狭い一般電話回線によるインターネット接続が、CATV会社のケーブルか電話会社のADSLにシフトするのは、進行スピードはともかく、すでに時間の問題と見なされている。この変化にどう対応するかが、今後の競争の重要要素となっているのだ。

この課題に対し、ポータルやコンテンツ系企業の取るアプローチは二つある。一つは、普及の主役であるCATV会社や電話会社といったアクセス・プロバイダーにパートナーシップを求めること。エキサイトがケーブルISP最大手の@ホーム・ネットワークによる買収を受け入れ、AOLがベル・アトランティックやSBCコミュニケーションズとADSLに関する提携関係を結んだのがこれにあたる。

そして、もう一つのアプローチが、ビデオやオーディオ、アニメーションなどを多用したブロードバンドならではのマルチメディア・コンテンツを確保することだ。ヤフーの狙いはここにある。

ブロードキャスト・コムの買収により、ヤフーはブロードバンド用コンテンツと、それを一度に大量のユーザーにストリーミングで提供するインフラをまとめて入手する。魅力的なコンテンツがあれば、アクセス経路に関係なくユーザーを引き寄せられるはずであり、マルチメディア広告の展開も可能となる。いずれはCATVのようなペイ・パー・ビュー方式の娯楽番組提供も実現するかもしれない。

また、赤字経営とはいえ、ブロードキャスト・コムの企業向けインターネット/イントラネット放送サービスの需要は急速に伸びており、ヤフーが最近力を入れている企業向けサービスによる収入拡大の方針とも合致する。

ダウ・ジョーンズがブロードキャスト・コム社長の談話として伝えたところによると、ヤフーはブロードキャスト・コムのコンテンツを金融情報コーナーから順に取り入れていく計画という。これは、当面インターネット放送のコンスタントなユーザー層は、大型イベントの際を除いて、家庭でインターネットを楽しむ人々というより、職場の高速回線をビジネス目的で利用する人々だからだ。ヤフーはブロードキャスト・コムを独立サイトとして運営しながら、ヤフー内部へのコンテンツの取り込みを図っていく方針らしい。

今回の買収で、拡大路線とブロードバンド対応という二つの要件を満たしたヤフーだが、さらなる足場固めのため、ほかの大型買収も計画中といわれる。数十億ドルに相当する巨額の買収を実行できるのは、ひとえに市場価値の高いヤフー株との株式交換で行うためである。

なお、今回の買収を機に、ポータルやコンテンツ系企業のブロードバンド対応の動きも、ますます広がっていくと予想される。

*1 現在の「リアルシステムG2」の前身。当初ビデオは再生できず、オーディオのみだった。リアルネットワークス社は当時、プログレッシブ・ネットワークスという旧社名を使っていた。

*2 本紙99年2月10日号(Vol.5, No.95)5頁参照


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